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企業ストーリー|MIL株式会社「理想のカルチャーを追求しながら、革新的なプロダクトを推進」

こんにちは。エージェントセブン編集部です。
この特集企画では、編集部おすすめの成長企業を紹介します。
今回は「MIL(ミル)株式会社」
https://company.mil.movie/

インタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を開発・運営し、大手企業のマーケティングを支援しています。その将来性が評価され、VCなどから総額1.67億円の資金を調達(2023年1月時点)。2018年の設立から着実な成長を続け、2023年2月期の売上高は約3億円を見込んでいます。

同社の成長要因は革新的なプロダクトだけではありません。オープンでフラットな組織、社員同士が称賛しあうカルチャー、それらを支える環境にカギがあります。今回は代表取締役CEOの光岡敦さんにロングインタビューを実施。創業の想いから、人材採用と組織づくり、顧客企業とのエピソードまで、たっぷり語ってもらいました。


【創業秘話】未来を照らした一冊の本

MILの原点は約10年前にさかのぼります。当時の光岡さんは、あるIT系ベンチャーの役員。非営業部門を統括しながら、新規事業の開発に携わっていました。そこで様々な新規事業を起案すればするほど、ジレンマに陥ります。

光岡さん「経営リソースの配分を決めるのは社長です。新たなプロダクトを開発するためにエンジニア組織をつくるといっても、必ずしも実現するわけではありません。営業組織が強い会社では、エンジニア組織が機能しづらいんです。」

代表取締役CEO 光岡敦氏

そんな違和感を覚えていたころ、株式会社サイバーエージェントの創業経営者である藤田晋さんの著書『起業家』に出合います。つづられた波瀾万丈のストーリーに背中を押されました。

光岡さん「心に響いたのは『経営トップの決断がカルチャーを変える』というメッセージです。もともとサイバーエージェントはネット広告代理店なので、創業期は営業会社のカルチャーでした。そこからメディア事業を立ち上げ、エンジニアを採用し、組織文化を変えた。それができたのは、経営トップの藤田さんが舵を切ったから。その針路が私の未来を照らしてくれました」

起業家として、事業アイデアをカタチにする。経営者として、自分が想い描くカルチャーをつくる――。ゼロから理想の組織をつくるため、光岡さんは独立を決意します。

光岡さん「営業職にとって、前職の会社はすばらしい環境でしたよ。好成績のメンバーは称賛され、手厚いインセンティブが支給されていましたから。その一方、非営業職のがんばりを褒めたり、報酬を与えたりする仕組みは不十分でした。私は非営業部門を統括していたので、全部門のメンバーがフラットに評価される組織をつくりたかったんです」

【採用方針】すべての応募者に社長が想いを直接伝える

そして2013年、MILの前身となる株式会社ユープラスを設立します。組織づくりの第一歩は人材採用。創業の想いに共鳴する仲間を集めるため、リファ ラル採用に力を入れました。

光岡さん「会社の方向性や組織文化をつくるのは社長の仕事だと考えています。私と同じような考え方のメンバーを集めれば、これから社員が増え組織が大きくなっていくときに、よりカルチャーが浸透しやすいのでは? そう考えて、思い当たる知りあいに声をかけました」

光岡さんの人柄やビジョンにひかれて、リファラル採用はどんどん進みます。兄弟の友人、新卒で入った会社の同僚、前職の部下、開発パートナーだったエンジニアなど、さまざまな縁が実を結んでいきました。創業期は大半のメンバーを社長自らが口説いて集めたそうです。2023年1月現在、社員数は46名。うち19名がリファラル採用で、インターン生のひとりを除きそこからの離職者はひとりもいません。

企業規模の拡大につれてリファラル採用の割合は減り、通常の選考プロセスによる人材採用が増えていきます。その際、光岡さんは最初のカジュアル面談に同席し、ミッション・ビジョン・バリュー、将来の展望などを応募者に直接伝えています。

光岡さん「 当社は小さなスタートアップですが、情熱やフットワークなら大企業に負けません。採用においてスタートアップだからこそできることは何か?その1つとして、私が採用の最前線に出て、直接想いを伝えることだと思いました。実際に出てみると、「代表から直接話を聞けて理解が深まった」「会社の色がよくわかった」など、ありがたいことにポジティブな声しかありませんでした。」

【組織文化】部署の垣根を越えて、感謝のメッセージを送りあう

MILが大切にしているのは社員とカルチャーです。さまざまな社内制度やイベントを通じて、組織文化の醸成に力を入れています。そのひとつがMILギフト制度(ピアボーナス)。少額のインセンティブをともなう社内コミュニケーションツールを活用し、社員同士で感謝の気持ちを伝えあう制度です。数値的成果を評価する制度ではないので、対象が営業部門に偏りません。部署の垣根を越えて、たたえあうカルチャーが生まれています。

感謝のメッセージを投稿する際の基準は、3つのバリューにそっているかどうか。同社は「MILNESS」(MILらしさ)と呼んでいます。

  1.  Be the right thing !(正しいコトに向かう)

  2.  Face & Move forward !(前を向き素早く動く)

  3.  Liberty for your fun !(責任ある自由を楽しむ)

上記のいずれかに該当するメンバーの行動を称賛し、39(サンキュー)や88(パチパチ)といったポイントを贈ります。貯まったポイントはAmazonギフト券として利用可能。プライベートの買物だけでなく、オフィスに観葉植物を提供したメンバーもいるそうです。

光岡さん「2021年にミッション・ビジョン・バリューを策定したのですが、それだけでは浸透しません。かといって、全社員で毎日唱和するのも時代に合わない。だから、ポイントを付与できるコミュニケーションツールを活用して、バリューに合致した行動を称賛しています」

【社員総会】第1部はオンライン、第2部は屋形船!

このMILギフトは表彰制度にも関連しています。すべての投稿メッセージに社長が目を通し、半期ごとの社員総会で3つの「MILNESS」を最も体現した社員3名を表彰。それらを細分化した13項目の行動指針についても、それぞれを体現した社員を表彰しています。

光岡さん「総会では、一つひとつの行動指針にあてはまる投稿を私が読み上げています。すると、抽象的な行動指針が具体的に伝わる。表彰された人はもちろん、感謝の理由を言葉にした人にもスポットを当てています」

コロナ禍の社員総会は原則リモート形式です。ただ、実際に集まってこそ、親睦は深まるもの。2022年度上半期の総会は第1部をオンライン、第2部をオフライン(任意参加)で行いました。

その会場は、隅田川を下る屋形船! 参加者からは「他部署の人と顔を合わせて話せたので、身近に感じた」「業務外の会話もしやすく、その人の価値観を知れた」といった声が寄せられました。その他にも参加者のアンケートを集計し、今後の改善に活かしています。

社員総会 屋台船での集合写真

【経営者像】同僚のようにフラットな‟飲みにケーション”

社長と社員の距離感もMILの特徴です。光岡さんは定期的にメンバーとお酒を酌み交わし、会社の未来などについて熱く語りあっています。ときには、くだらない話で盛り上がり明け方を迎える日も。社員からは「社長」ではなく「光岡さん」と親しまれています。

光岡さん「役職は役割にすぎず、上下関係じゃありません。だから、フラットで距離の近い社長を目指しています。メンバーから『Slack』で誘われて、飲みに行くケースも結構ありますね」

上下関係をなくしても、組織マネジメントは必要です。仮に社員がルールに違反したときは、誰かが注意しなければいけません。

光岡さん「組織としての弱点は叱れる人が少ないことです。だから場合によっては、私が直接メンバーと話しをすることもあります。 MILが掲げているカルチャーと行動に違和感があれば、その問題点を指摘して改善をうながしています」

【勤務形態】離れて集まるバーチャルオフィス

MILは出社を週3日以内に制限し、リモートワークを推奨しています。たとえばモニターなど、リモート環境を整える費用として会社から補助がでます。フレックスタイム制なので、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。

とはいえ、リモートワークにはデメリットもあります。同僚の仕事姿が見えずに孤独を感じたり、ささいなことを上司に尋ねにくかったりするからです。そんなデメリットを補うために「Gather」というバーチャルオフィスを導入しました。

バーチャルオフィス 「ミルランド」

これはレトロゲームのような2次元のオフィス内で、各人のアバターがコミュニケーションできるサービス。どこで誰が働いているのか一目瞭然なので、ちょっとした会話や連携がしやすくなります。バーチャルの会議室に移動して話しあったり、残業している社員に声をかけたりすることも可能です。

光岡さん「アバターを動かし、「ちょっといいですか?」など、気軽な質問がすぐにできますし、ふたりだけの音声共有で相談もできます。現実のオフィスに集まる感覚に近いので、帰属意識もわきやすいでしょう」

オンライン飲み会用の部屋も活用

【顧客貢献】インタラクティブ動画でコンバージョン率が5倍に

同社に興味を抱く方は、業績や顧客からの評判が気になるかもしれません。設立以来、売上高は伸び続けています。しかし、2021年ごろにあえてターゲット企業をエンタープライズに見直しました。

光岡さん「私たちに顧客視点が足りなかったからです。エンタープライズ企業のマーケティング担当者の方にとって、インタラクティブ動画を使いこなすのは大変。プロダクトとしての『MIL』が革新的な一方、動画制作・導入・運用などを一気通貫で支援できていませんでした。その過ちに気づいて、顧客企業の成功まで支援するSaaSモデルへ転換しました」

高価格・高付加価値型サービスへの転換に対して、当初は半信半疑のメンバーもいました。しかし、ほどなくして顧客数と売上が急増。カスタマーサクセスチームによる動画のPDCAサイクルが結実し、2023年2月期は前期比150%超の成長を見込んでいます。

では、どのようにサービスが役立っているのでしょうか? たとえば、全国展開する英会話スクールの場合。インタラクティブ動画の導入後、授業の無料体験の申込率が約5倍にアップしました。さらに、複数の選択肢から見たい動画をタップするユーザーのデータが蓄積され、「先生」への関心が高いと判明。Webサイトやチラシなど、動画以外のマーケティング施策まで改善されたそうです。

また、MILの組織文化が評価されて、契約に結びついたケースもあります。それは老舗食品メーカーとの商談時。同社の役員から理念体系を尋ねられ、光岡さんが丁寧に答えていました。そして「Face & Move forward !」というバリューの説明を終えたとき、先方の同席者から納得の声が聞こえたのです。

光岡さん「うれしかったですよ。『確かに御社のみなさんはスピードが速い。そのカルチャーが浸透しているんですね』と評価していただいたからです。企画提案の段階から、メンバーが迅速に対応してくれたのでしょう。その場で役員の方に認められ、サービス導入が決まりました」

【これから】あたらしいふつうをつくる

光岡さんが起業を決意してから約10年。創業期は想いや人望で仲間を集め、近年は仕組みや組織力で成長を加速させています。理念を浸透させるためにコミュニケーションツールや表彰制度を活用したり、社内イベントやワークスタイルを進化させるために、アンケートやディスカッションをしたり。コロナ禍で実現していませんが、今後は社員旅行と運動会を計画しているそうです!

光岡さん「いろいろ工夫はしていますが、結局は人がいちばん。会社設立前に思い描いていたカルチャーに近づいているのは、メンバーに恵まれたおかげですね」

サービスモデルを研ぎ澄ましたスタートアップにとって、これからが本格的な成長期です。MILのミッションは「あたらしいふつうをつくる」。次の未来をつくるのは、あなたかもしれません。

<編集後記>

スタートアップとして「世の中にない新しいモノを生み出していきたい」。その想いからスタートしたMILのインタラクティブ動画。お客様に継続して利用し続けてもらえるサービスを実現しているのは、お客様への対応だけではなく、組織づくりが要因となっています。

光岡さんは社員採用のためのカジュアル面談だけでなく、アルバイトの方ともご自身がお話しされる機会をつくっています。MILに興味がある方はぜひ一度お会いしてほしい、エージェントセブンおすすめの企業です。

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