白に一で百になる。

ここは、古都にある一軒のBAR。
武士が歩いていた時代に作られた人工の川にかかる小さな橋を渡り、細い路地に面した目立たない建物の階段を上がったところ、名刺大の表札の横にある頭を下げないと入れないような小さな扉を開けると、そこにカウンターだけの隠れ家的なBARがひっそりと明かりを灯しているのである。


いらっしゃいませ!

寒い日が続きますね?
今も、雪がチラついてるんですか?
積もらないと良いのですが・・・


では、何をお作りいたしましょう?
え?
ピーチツリーフィズですか?
お客さまにしては、珍しいものを召し上がられますね?
かしこまりました。
少々、お待ちください。


え?
また、面白い話ですか?
お客さまも懲りない方ですね(笑)
いつもいつも、こんなお話で面白いのですか?
いつも、いうように私は、ストーリーテラーじゃないんですから、
そんなネタなんでありませんよ。

どうぞ、お待たせしました。
ピーチツリーフィズです。


そういえば、少し前に、同じものを頼まれたお客様がおられました。
そうそう、前に、97やら、98や99の神様の話をしたことあったでしょう?
あの女性のお客様です。
その日も、このカクテルをお召しになりながら、ボーとされていました。
ちょうど、他にお客様もおられなかったので、私から、
「今日は、何の空想をされてるのですか?」
と不躾ながらも声をお掛けしたしたのです。
そしたら、

「あ、マスター・・・モモって、フルーツだと桃と書くけど、数字じゃ百って書くよね?」
とおっしゃられました。
そして、こんな風なお話をされたのです。

99に1を足すと100になるけど、漢字だと、白に一を書き足すと百になる。
白は、九十九でもあり、これは、菊理姫が白山姫であり、ククリ姫であるのと同じだと・・・
ククリ姫は、99姫であり、これに一を足すと百になる。
百は、百姫か、桃姫か、それともモモソヒメか・・・
モモソヒメなら、ヒミコであり、日の巫女であり、太陽の女神に通じる。

桃は、中国や日本でも邪気を祓う力があるとされるけど、これは、太陽の力かもしれない。
西王母の管理する仙桃は、不老不死をもたらし、どこかネクタリンはネクタルを思い出し、同じような意味合いを感じさせる。
不老不死こそ、100歳を超える永遠であると。

百は、完全を意味し、白に一を足すことで百になる。
足りない一は、剣であり、串(櫛)である。
99のククラレタものは、1により串に刺されて固定され完全となる。
串は、軸でもあるんだと・・・


それで、私は、串って何なんですか?と問うたのです。
そしたら、
白の上に、一を足すと、百になるけど、
白の中に、一を足すと、自になる。
多分、自分ということだと思う。
自分の中に、一本、柱というか軸を持つこと。
これが、自己完結なんだと思う。
だから、伊勢神宮やらでも、心の御柱って柱を立てるんだって。

「ねえ、マスター。
軸のブレル男ってダメよね?」


そんなことをおっしゃっていました。(笑)

あ、お客様、やっぱりお帰りされますか(笑)
これ、持っていってください。
雪で足元悪いですから。

さっきのお話の女性が、今年は雪が多いから、これが必要になるかもしれないからって置いていかれたのです。
どうぞ、この杖を使ってください。

杖を使って三本足なら安定しますよ。
だから、ヤタガラスは、太陽であり、三本足なんだと言ってましたから。

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