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光の邑の住民たち 3

妻からの電話を最後に連絡は途切れました。

なんとか電源を保っている事務所も、最小限の消費電力を保つためエアコンや照明を止めました。PCも一台だけ連絡用に立ち上げているだけです。

社員は、あいかわらず所長と僕と山下君だけでした。営業のアポイントをキャンセルする連絡もできず、一度は、営業車で顧客へ向おうかと思ったものの、非常時につき待機せよと所長の命令で皆が事務所に残っていました。時間だけが過ぎ去り、お腹の虫が騒いできました。いつも昼食はコンビニで買っている山下君も、一度、コンビニまで足を運んだものの、停電によりレジが使えないようで、買い物ができないようでした。ただ、飲料の自動販売機が災害時の対応で、蓄電器により作動しており提供されているのは救いでした。お腹を空かせた山下君に、所長は単身赴任のためいつも自分で作る昼食のサンドイッチを少し分けてあげ、お昼を過ごしました。僕は、外食が常ですが、この日は念のために家からカップ麺を持ち込んでいました。お湯を沸かすだけの電力は維持していたので、それで飢えをしのげました。

携帯もタイミングがよければ繋がる瞬間がありましたが、なんらかの電波障害もおきているようでした。また昼過ぎに事務所に本社よりのFAXが届きました。多分、よほどタイミングが良かったのでしょう。それらの情報から判断すると、歴史的にも類を見ないとんでもないことが発生しているようです。直ちに自宅避難と待機せよという判断になりました。

「私は、もう少し事務所に残る、二人は自宅に戻り待機するように。これより連絡は確保できないかもしれないけど、何が起こっているのか分からない状態では、とにかく身の安全を第一に考えて行動してくれ。」そう言って所長は、私たちの帰宅を促しました。

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