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八幡は融合の宮(イザヤ、イザヤ続編)

ここは、古都にある一軒のBAR。
武士が歩いていた時代に作られた人工の川にかかる小さな橋を渡り、細い路地に面した目立たない建物の階段を上がったところ、名刺大の表札の横にある頭を下げないと入れないような小さな扉を開けると、そこにカウンターだけの隠れ家的なBARがひっそりと明かりを灯しているのである。


畑の思考が、時折別世界へ行ってしまうのは、
ミワの話が難しいだけではなかったのかもしれない。
それは、どこか畑にとって魅惑に似たうっとりとする気分でもあった。

空になったミワのグラスは下げられ、マスターは新しいグラスを用意していた。
ミワのオーダーは、"ワード・エイト"というカクテルだった。
これは、アメリカ合衆国の東海岸の都市ボストン市を8つの区に分けたときに作られたカクテルと言われておりワード・エイトとはボストンの8つの区のことである。


ちょうどミワの話は、八幡神の話に移行していた。
古代八幡神を信仰した民は、八を尊び、あらゆるところに八を用いた。
八という数字は、四方×天地の二極で、また四方と中央を含む五行と過去・現在・未来を表わす。
それは、アマテラスとスサノオの誓約で生まれた五男三女神の表れでもあると、
ミワは、新しいグラスが用意されるまで、そんなことを畑に話した。

ちょうど話の区切りでタイミングを見計らったマスターの手により、ワード・エイトが置かれた。
ミワは、そのグラスに一口つけると、目を輝かせながら話続けた。


「八幡神社というのは、日本で一番多い神社でその総本宮は、九州の宇佐八幡宮です。
祭神は、八幡大神(応神天皇)・比売大神・神功皇后です。

それで、さっきの続きだけど、応神天皇がイザサワケ、神の子なら、その母は、聖母マリアでしょ?
応神天皇のお母さん神功皇后は、聖母マリアさまになるわけ。
八幡神の三神のうち、神の子イエス、聖母マリアがそろったら、残る比売大神は、父だと思うの。
一般的には、この比売大神は、宗像三女神だと言うわ。姫神だからね。
でも、私は、比売大神は、姫神ではなく、秘神だと思うの。」

いつしか、ミワの口調は敬語でなく、タメ口となっていた。

「父というのは、いわゆるアドナイ、ヤーウェよ。
これでキリスト教の父・子・精霊(母)が揃うわけ。
そして、この三神は、また日本の神にも対応しているの、
それは、父は、アメノミナカヌシ/クニトコタチ。
子は、アマテラス/スサノオ。
母は、イザナミよ。

父は、中心という意味よ。
天の中心である、アメノミナカヌシと地の中心クニトコタチは、同義よ。
子に、アマテラスとスサノオが一緒になっているのは、不思議だと思うけど、
神様というのは、いろいろな面を持っているの、
特にスサノオは様々な面を持っているわ。
八幡神の軍神としての面は、スサノオの姿ね。

また、イエスが死して岩穴に葬られ3日後に蘇る話は、アマテラスの岩戸開きに対応しているの。
イエスは、激しい面を持ってるから、アマテラスとスサノオの両面を持っているわね。

神様というのは、同じ名前であっても、時々によっていろいろな顔を見せるわ。
それは、どこか私たちの魂にも似ている。
魂って、一つの塊で不変だと思っているけど、
一つの肉体に二つの魂が宿ったり、途中で入れ替わったり、
また、死後は、その罪状に合ったそれぞれの地獄の世界にバラバラになって行き浄化されると神秘家は言うわ。
その地獄の世界は、ダンテの書いている9つの地獄の層だとか・・・
まあ、真実は知らないけど、重要なのは信仰する人がその神をどう祀るかによって、神の性格が決められると言う事よ。

面白いのは、天台宗の両子寺というお寺があって、そこには、八幡神のお子君といわれる男女双子の神、両子(ふたご)大権現を祀っているの。

イエスが双子だという話もあったけど、あれは男同士ね。
で、双子の神というと、思い出されるのは、ギリシャの神アポロとアルテミス。
これは、男女であり太陽神と月神なのよ。
どう?
男女で、太陽と月。
日本で言うとアマテラスとスサノオでしょ?

両子大権現は、八幡神の子ではなくて、双子の性質を神格化した神なのよ。」

ミワは、一息つくとグラスに一口つけた。

「まあ、私の妄想だから事実は知らないわよ。」
と二コリと畑の方に笑顔を向けると、残りのグラスを飲み干した。

「さて、私はこれで帰るとするか。
マスター、オアイソ!
畑さん、つまらないお話を最後まで聞いてくれてありがとう。」
そう言うと席を立った。


後に残った畑は、いつからか、上の空って感じの表情となっている。
マスターは、その畑に向かって
「ところで畑さん、お酒頼まなくて良いのですか?
何召し上がります?」
と尋ねた。

畑は、
「マスター・・・
なんか、僕・・・もう酔っちゃったみたいです。」
と頼りない返事をした。

マスターは、静かに畑の前にお冷のグラスを置いた。

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