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将来への恐怖の本質は、自己否定である

27歳独身。彼女なし。そこそこの大学を出て、つぶしの効かない仕事をしている自分が、紳士から教わったのは、まったく聞いたこともない新しい成功法則だった――。5年前に刊行され「今こそ読むべき!」と話題の書籍を特別に無料で公開。事業家・思想家の山口揚平さんが、新しい時代の新しい成功ルールを紹介します。


紳士の最後の授業は、世の中でもっとも大事なこと「貢献意識(コントリビューション)」と「自己否定」から生まれる恐怖に立ち向かう勇気の話だった。
僕は紳士に、大学のキャンパスに来るように言われた最初に彼に出会ってからもう半年がたつ。
“外回り”とホワイトボードにしれっと書いて、僕は会社を抜け出し、ある大学へと向かった。そこは、この国の最高峰とされている大学。もちろんキャンパスに足を踏 み入れるのは初めてだった。

平日の昼、学生達は思い思いにキャンパスで過ごしている。社会人になってみると、改めて大学内の自由な時間をうらやましく思う。今僕はスーツを着ている。明ら かに大学生には見えない。しかし、周りの学生達はさほど気にもとめていないようだ。
その時、僕は紳士に声をかけられた。

「ようこそ、我が母校へ」
「こんにちは」
「さて、お茶でも飲みながら話そうかな」と紳士は、学食へと僕を案内した。

手慣れた感じで、厨房にコーヒーを注文する。白い割烹着を着たおばちゃんが、コーヒーとチーズケーキを出してくれる。そのアンバランスな風景が実に学食といった感じだ。
テーブルにつき、コーヒーを一口飲む。

「あの、先ほど母校とおっしゃっていましたが?」
「あぁ、そうだね。随分歳をとってから、大学院を出たんだ。若い頃は仕事に忙しくてね」 「そうなんですか」
「さて、今日はなんでこの場所を選んだのか」
「あなたの母校自慢……ではないですよね」
僕は周りを見渡す。
「学生を見よと?」
「そうだ、今日は君を含む、若い人に対してのメッセージを残そうと思ってね。それ には、ここがぴったりだろう」

ハーバードでも、社会人としても求められる「貢献意識」

「社会人と学生の違いはたった1つしかない。それは何かな?」
「学生は自由で、社会人は不自由、ですか?」
「そうかな? 不自由なはずの君が、この時間にここでチーズケーキを食べることができるのは、随分自由だと思うけどね」
「あぁ、そうか」
「しかし、君は会社に戻らなければならないし、今急な電話がかかってくれば、即対応しなければならない」
「そうです」
「学生は、自分のことだけ考えていればいい。社会人は他人のことを考える必要がある。つまり貢献意識があるかどうかだ」
「貢献意識……」
「コントリビューション・マインドという。他人に対して価値を出す、貢献するのが、社会人だ。しかし、それを理解している学生は少ない。だから、就職や仕事には スキルが必要だと思ってしまっている」
「でも実際そうなんじゃないですか?」
「知識やスキルが就職に必要なんてことはまったくない」
「まったく?」
「ない。必要なのは貢献意識だ。ここにいる学生達は、お客様マインドで生きてい る。学生は教えてもらう気分で授業に出ているんだ。君もそうじゃなかったかい?」
「はい、確かに」
「でも社会人は違う。もし社会人が授業に出たら、どうその授業に自分が貢献できるかを考える。生産的な発言や提案をする。今の君がそうだ。君は今ただ単に私の話を聞いているだけじゃない」
「そうですね!」

「たとえば、ハーバードビジネススクールは、2000万円近くの生活費、学費を出して通う学校だ。だが、それだけの金額を出したからといって、手取り足取り教えてくれるのではない。出席した授業でいかにリーダーシップを発揮するかが求められている。つまり学生は授業への貢献が求められている。その意識がないなら来るな、というスタンスだ。だから授業が、学校全体が盛り上がり切磋琢磨する。結果、生徒にはさらに質の高いレベルの教育がなされる。会社もそうだ。君達は主体的に仕事にかかわらなければならない。そうでないなら会社など行かなければいい。『受動』から 『主体』へ、『自意識』から『他意識』へ。その変換が大切だ
「なるほど」
「君達は、消費者から生産者にならなければならない。その第一歩が貢献意識だ。知識はそれについてくる。人は主体的にさえなれば、半年でなんでも身につけることができるものだ。君のようにね」

マーケティングを学びたいなら、「女性向け恋愛マンガ」を見ろ!

「ここにいる学生達の多くは、今後、就職活動をするだろう。私が思う、就活や人事面接で絶対言ってはならないNGワードがある」

「何ですか?」
「『自分は○○を将来やりたいです』ということだ」
「え !? 」
「彼らが何をやりたいかなんて会社は興味がない。社会人になってからはもちろん、面接やインターンで話すべきは、今、この瞬間、自分が何で貢献できるかだ。そしてそのエビデンス、つまり実績やスキルなどの証拠だ。 その次に将来、どう貢献できるかを話す。それで終わり。ゴミ拾いでもコピー取りでもなんでもいい。自分が貢献できることを言え。社会人にとって君らの夢など最初はどうでもいい。そんなことは表参道のカフェで、自分の彼女を相手に存分に語っていればいい。社会とは他人に貢献することのみを基軸として成り立っている空間なのだ。ま ずこの概念を骨の髄まで染み込ませて欲しいと私は思うな」
「きっとそんなことを聞いたら、学生達は困惑しますよ」

「そういえば、君には彼女がいないね」
「えぇ……まぁ……、前にもお話しした通りですが……」
「どうしたらモテるか、といった本や記事を読んだこともあるだろう」
「まあ、別に、彼女がいてもいなくても、みんな一度くらいは見ますよ!」
「あればかり見ててもダメだ」
「そうなんですか !? 」
「そんなものより、女性向けの恋愛映画や官能マンガを見ろ」
「女性向け !? 」
「男性向けの映画やマンガは、ビジュアルや派手なアクションが中心だが、女性はプロセスがすべてだ。月9ドラマのような恋愛展開がだらだらと続き、やっとこさ結ばれる。だったら、女性に対してどう付き合えばよいのか。これがマーケティングだ」

「マーケティングですか !? 」
「つまり、自分ではなく、貢献すべき相手の目線に立って考える、分析する、行動するとはそういうことだ」
「なるほど……」
「自分本位の行為では相手は満足しない。彼女ができたら、そこを肝に銘じて付き合うことだ」
「はい……」
「自信のない返事だな。モテることでもなんでも、勉強、健康、ビジネス、その他、 世の中のあらゆるものは技術だ。君達にできないものは何もない」
「まぁ、ブサメンでもモテる人はモテてますよね……」
「スキルなど所詮その程度だ。技術の賞味期限は短い。モテるための努力は男である限り、永遠に続く。歯を磨き、清潔感を出し、姿勢を正して、ジェントルになるこ と。稼ぎ、心の器を広げるしかない。あらゆることが、外形的・内面的なたゆまぬ努力の結果でしかない。そして、繰り返すがすべては技術であり、継続的な努力によって獲得することができるということだ」

将来への恐怖の本質は、自己否定である

「まだ浮かない顔をしているが、君達の人生のテーマはたった1つしかないだろう」
「そういくつもできるものですか?」
「それは、こじらせた自己評価をマイナスからゼロまで持ってくる過程そのものだ。 君達は少なからず自分が嫌いだと思う。自己肯定感が足りていないと感じることがあるかい?」
「自信を持てということですか?」
「あそこで暗く肩を落とした学生がいるね」
「いますね」
「彼女にふられたか、単位を落としたか、はたまた就職試験で1つもひっかからなかったか……。いずれにせよ、彼は今自分を悲観している。だが、なぜ君達は将来ばかり気にするのかな?」
「それは、恐いからです」
「レールから外れることがかい?」
「はい」
「お金がないことかい?」
「はい」
それらの恐怖は自己否定だ。君達がやるべきは、その恐怖と向き合う勇気を持つことだ
「勇気……」

「君達はこれから10年かけて自分を取り戻す旅に出る。1つは外の世界に向けてコントリビユーション(貢献)を続けて成果を出し、認められ、時にお金を得ること。そうやって自信を獲得してゆく過程だ。もう1つは、自分の内側の世界に向けての旅だ。君達が嫌いな人間、どうしても許せないタイプの人を1人2人考えて欲しい」
「嫌いな人間ですか……」
「親、兄弟、先輩、先生、クラスメート、誰でもいい」
「何人かは思い浮かびました……」
それは君自身の1つの姿であると考えるんだ
「自分ですか……」
「この世には他人など存在しない。他人とは自分の心に生まれた感情の破片にすぎない。他者嫌悪の本質は自己嫌悪だよ。認められない他人は誰にでもいるが、その存在を認めること。それは自分を認めることであり、それこそが内なる旅だ。この外と内の2つの旅をすることで、君達は初めて自分を取り戻すことになる。君達が社会に出ることの本質はそういうことにある。そこからが本当の人生の始まりだ。外と内の摩擦、恐怖と向き合い、受け入れる過程が本当の自己を取り戻すために必要なプロセスなのだ。お金やスキルはその付随、よくいって副産物にすぎないんだよ」

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