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昨今の差別問題で思い出したこと

アメリカで黒人の方たちが声を上げているのを見て、なんとなく思い出したことがある。

その時、私は新宿のとあるホテルで夜間のフロントの仕事をしていた。
土地柄もあってか、終電を逃した人たちがよくやってきて、部屋が空いてないか聞いていくのだけど、あいにく満室でお断りすることも多かった。

その日も満室で、何組かお断りをした後の早朝のことだった。
おそらくアジア系か東南アジア系の3名1組のお客様がいらっしゃった。
日本語で泊まりたい旨を伝えてこられたので、「申し訳ございませんが、満室です。部屋がないです。」と、"満室"だけだと伝わらないかもしれないと思って、やさしい日本語を付け加えて言えば、少し怒ったような残念そうな感じで出て行かれた。
そのあともホテルの外に留まっているようだったので、宿も決めてないようだし、日本語も話せたし日本在住の方かもしれないけど、もしかしたら行くアテが無くて困っているのかもしれない、外国の地でさぞ不安だろう、予報ではこれから雨だし、と思って、私は空いている近くのホテルをインターネットで探し、ホテルと地図を印刷して持って外に出た。

先ほどいらっしゃった3名は、ホテルの前で肩を寄せ合うように道路に座っていた。
そこで、私が近づくと急に怒り出して言った。

「私たちが外国人だから泊めないんでしょう!?邪魔だから追い払いに来たんでしょう!?」

私はビックリして、ホテルは満室で泊まれないことを改めて伝えて、ホテルを探してきたと言って、持ってきたホテルと地図を印刷した紙を差し出した。
そしたら、「放っておいて!!」とその紙を払い退けられてしまった。
悲しくて腹が立って「じゃあ!いつまででも居ればいいじゃないですか!今日は雨ですよ!」と捨て台詞を吐いて、私はフロントに戻ってしまった。

印刷した紙を捨てながら、何とも言えない感情に襲われていた。
私の言い方が悪かったんだろうか。
そんなに差別的な態度に見えただろうか。
日本語だったから日本語で返したけど、もっと外国語が出来れば誤解されずに済んだだろうか。
どうして善意が伝わらなかったんだろう。
他のホテルで外国人だからと断られたのだろうか。
それとも、ホテルでなくても外国人だからと断られることがあるのだろうか。

ぐるぐると考えている内に雨が降ってきて、また断られるかもしれないけど、せめて傘を、と思って傘を持って出たら、もうその方たちは居なくなっていた。

私の勤めていたホテルは外国人観光客の方が多く、また新宿二丁目が近かったのもあって、LGBTの方も多かった。
誰一人、差別的な感情を抱いたことはないし、差別的な対応をしたことはないと思ってる。
でも、この時のことが胸に引っかかっている。

今起こっている問題に比べれば、ほんの些細なことかもしれないけど、こんな意識の違いが生まれないような世の中になれば良いと思う。

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