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公共的なヒーロー

写真は『トロピカル~ジュ!プリキュア』の変身アイテム。今度は子供たちに口紅を売ろうとしているらしいぞ!



新しいプリキュアの敵のコンセプトにシビれている。


現プリキュアが「病気」を敵として、「キュアオペレーション」と称し地球を「お手当て」している(この表現、ウチらにはちょっと気恥ずかしく思われる)。奇遇にも2020年という病気が大きな問題となる年に放送開始されて意義深い。


ヒーローには公共性がある。敵が悪の組織であるからだ。戦いの意義が私的なものを超えるから、「正義の味方」たるのだ。

その意味では、現代社会では警察や自衛隊が正義のヒーローということになる。組織が正義を果たすので、ウルトラマンの科特隊やスタートレックの連邦の艦隊に近い。これらは、元をたどるとサンダーバードか。


物語というものは大きく二分することができる。講談系と落語系である。ストーリー漫画系とギャグ漫画系と言ってもいい。

「すごい人」を讃える話と、「ダメな人」を微笑ましく笑う話である。


ただし最後の最後まで二枚目がふざけまくった『銀魂』みたいなのがあるのでややこしい。あれはここではギャグ漫画ではなく、ストーリーのほうに分類してほしい)。


すごい人をすごい人たらしめるのは、なんらかの障壁である。それを乗り越えるのがカッコいいのである。この障壁が「倒すべき悪」というもっともわかりやすい定番中の定番になったとき、物語はヒーローものとなり、その主人公は「ヒーロー」ということになる。

あえて理由あって一般に男性に使われるとされる『ヒーロー』という言葉だけをあげている。「ヒロイン」という言葉の存在に意識が及んでいないわけではない。


たとえば日曜の朝、テレビ朝日ではプリキュアと仮面ライダーと戦隊ものが放送されるわけだが、ある種、敵の種類がヒーローの役割・意義を決めているところもある。

ヒーローが尊敬されるには、悪は社会悪であり、強くて残忍であったほうがよい。この「倒すべき悪」が、手を変え品を変え、となる。

地球を支配しようとする悪の軍団、というのはもっともシンプルだ。地球制服が目的で、その手段は武力だ。それを倒す意義は平和維持だ。そりゃ公共的だ。

だが毎回単なる支配欲で暴れる悪を用意するのは芸がない。そこで悪に題材が与えられる。これは人にとってなにかを邪魔する存在になればよい。実際に存在する邪魔するなにかを擬人化した化身になってもらえばよい。

先にあげたように『ヒーリングっど プリキュア』の敵は地球を病気にする病原体の化身であった。『Go!プリンセスプリキュア』なら、人が夢を叶えようとするのを阻むものの化身であり、この構造は、『仮面ライダー電王』とまったく同じであった。そう、テーマは使い回されることもある。




で……





次はまさかのやつが来た。






『トロピカル~ジュ!プリキュア』の敵は!








「あとまわしのまじょ」






・・・






最強じゃないかーーー!!






「後回し」我々のやる気を阻む悪である。ほんとめっちゃくちゃ振り回されている。切実である。



でも・・・






小物だ。





でも・・・





やっぱ最強だ。




そうだとも。我々は日々「後回し」と闘っている。ヒーローは我々であり、苦しめられる民もまた我々である。

血を流させるほどには悪ではないが、ひそかに忍び寄り、気がつくと多大なる時間の損失をもたらすではないか。



「やる気」、必要だわー。もう意識の高さだけで闘えるわ。「あとまわしのまじょ」。でも何度でも負ける自身があるわー。やっと中学生に闘わせてもいいものが出てきたって感じ。『ヒーリングっど プリキュア』のひなたなんか、一発でやられちゃいそうだ。





「あとまわしのまじょ」、倒してほしいなあ。めっちゃ役にたちそうだなあ。




でも待てよ?なんかこれまでの敵と違うな。『生理ちゃん』の『生理』みたいなもんじゃないか?妖怪ウォッチにも出てきそうだ。どちらも落語系の物語だぞ?

そうだ。「後回し」って、すごく私的なものだ。私の「後回し」はあなたの後回しではない。私の「後回し」をあなたが倒すということもありえない。

無理にやろうとすると「とっととやらんかー、オラー!」ということになって、それは正義の味方というよりはお母さんである。耳の痛いことをいうお母さんである。

そうでなければ、YouTubeで「えーそもそも後回しをしやすいタイプっていうのが解ってて、2020年にスタンフォード大学で行われた実験によると・・・」とか教えてくれるお兄さんである。いや、やっぱりそれは代わりに倒してくれる訳じゃない。結局自分で倒すことには変わりないじゃないか。


じゃあ、『トロピカル~ジュ!プリキュア』が戦うのは「自分の後回し」とか?それじゃあ公共性がないぞ?



ということでいろいろと気になってしまう『トロピカル~ジュ!プリキュア』である。


そして個人的には、「あとまわしのまじょ」という響きがめっちゃ気になって興奮するのであった。

まじょのほうを落語として描いてくんないかなあ。。






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