一人っ子はいいよ
娘が独り言を言う。ブロック遊びを一人何役にもなってしている。
ダディは気にしないフリをしているが、しっかりと耳を傾けている。
ごめんごめん。ちょっと忙しくて。そっちはどう?お父さんは今日から当直だってさ。そうなんだ。とりあえず何か買っていくけど。わかった。でもその前にね、4足す4はいくつだったっけ?8でしょ。
家族であるという設定のようだ。娘の言葉から普段の生活が見え、恥ずかしくなることもある。それでも、何とも言えない味があっていい。
一人遊びでは新しいものがインプットされないが、今までに吸収した素材が存分にあるならば、それらを熟成させる時間になる。娘の言語の能力は高いが、これは他人から学び鍛えているだけでなく、自分だけでいるときにも磨いているように思われる。
一人のほうが良い考察ができる。一人のほうが、良いものが作れる。創造性を要することには、一人の時間が大事である。知的な作業の多くは、一人で集中することが必要とされる。常に誰かといる子は、それが難しいかもしれない。
人との関わりの重要性が叫ばれている。コミュニケーション能力を育てよ、と。だが人の関わる場など、今の世には溢れているのではないか。人間関係が苦手な人が、人にまみれるだけで得意になれるものでもあるまい。
むしろ、自分だけの時間のほうが貴重である。すぐきょうだいに何でもじゃまされる子がいたが、そのような環境で自分と向き合うのはゲームと宿題くらいしかないのではないか。
逆に一人っ子は、きょうだいから得ることができるものを、自分で確保するのではないか。親を好きな分だけきょうだい代わりにする。読書をして古今東西異世界までもの友を作る。いっそ想像力で、遊び相手を作り出してしまう。
今日も娘はおもちゃの受話器を持ち、架空の姉と長電話をしていた。頼もしい。
♯素敵な一人っ子エピソード