【長編小説】 初夏の追想 14
――彼らとの交流が始まって、数週間が過ぎていた。そして、六月の声を聞くとすぐに梅雨が訪れ、連日さあさあと小さな音をたてて雨が降り続いた。
山中の別荘ではこの時期、一日のほとんどを霧に包まれた中で過ごさなければならなかった。夜明けとともに発生した霧は、日中になっても山の木々のあいだに滞り、無音のうちにしっとりと枝葉を濡らしていた。そして、細かい雨が、いつ止むともなく、一日じゅう静かな音を立てて降り続くのだった。遠方の山々は、雨のカーテンの向こうに白く煙り、麓の街は、まるで海