マガジンのカバー画像

【長編小説】 初夏の追想

29
30年の時を経てその〝別荘地〟に戻ってきた〝私〟は、その地でともに過ごした美しい少年との思い出を、ほろ苦い改悛にも似た思いで追想する。 少年の滞在する別荘で出会った人々との思い…
運営しているクリエイター

#ゴーギャン

【長編小説】 初夏の追想 8

 それから一週間ほどあとのことだった。私は午前中、居間で読書をして過ごしていた。祖父は、…

【長編小説】 初夏の追想 9

 ――裕人、という名前は……ゆたかで、満ち足りている。ゆるやか、のびやか、寛大で、広い心…

【長編小説】 初夏の追想 11

 「お母さん、楠さんは、美術史にすごく詳しいんだよ」  そのとき守弥が言った。そして、数…

【長編小説】 初夏の追想 17

 ――蝉の幼虫が、地中における七年間の精進の末ついに地上に出ることを許され、成虫となって…

【長編小説】 初夏の追想 26

 月が変わり、東京の美術館で守弥の個展が始まった。  パリを拠点に活躍する新進気鋭の画家…