【長編小説】 抑留者 8
朝食を終え、台所に食器を下げてから、三ツ谷と連れ立って表に出た。やはりタクシーで送り出すのは止め、バス停までの五分ほどの距離を、歩いて送っていくことにした。
玄関を出るときに、三ツ谷は大声で台所であと片づけをしている時絵に声をかけた。どうもお邪魔しました。朝食の鮭と味噌汁、とっても美味しかったです! 時絵は慌てて飛び出てきて、拭き切れていない泡のついた手を胸の前で振って、いいえいいえ、またいつでも遊びに来て下さいと言った。
どこまでも如才ない奴だ、と、尚文は苦笑いをした