猫の話


男の家にいる猫が苦手だ


飲み屋で知り合った男の家には猫がいた。


綺麗に片付いた広い部屋の奥には、猫のゲージとキャットタワーが置いてあった。

私に一瞥をくれたあと、飼い主に寄り添う猫は

「わぁかわいい〜!私猫すごく好きなんです!」

なんて到底言えそうもない顔をしてこちらを見ていた。

猫を大事に撫でる男の手つきには正直ドキッとしたし、猫を可愛がる男のことも可愛いと思った。


でも私はどうしたって、男の家にいる猫は苦手なのだ。


「かわいい」なんて言ってみても
餌をあげる時真顔になってしまうし、
ドクドクと心臓の音がする身体を撫でるのは怖い。

視線を感じて目が合うたびに
「どうせお前も通り過ぎていくだけの、名前も覚える必要のない女だろう」
と思われている気がしてならない。


ただでさえ居心地の悪い他人の家で
さらに居心地を悪くさせてくる。


男が会話の中で私に対しての質問が少ないことも

見ているYouTubeの趣味が全く合わないことも

笑ってほしいポイントで笑ってくれないことも

予定調和のような腕枕も

朝いそいそと支度をし帰るタイミングを伺っていることも


全て、猫には見透かされている気がする。


この目を見ていると
男のことも、自分のことも、
本当は全然好きじゃないことを思い知らされる。



「猫を可愛がる私」が出来ない私は
男にも可愛がってもらうことは出来ないんだろう。



何が言いたいかというと、
結論 猫は人間より高尚な生き物だということです。


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