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ふぉれすとどわあふ宇宙編② 三羽さんの企画

与えられたテーマより②最後の人類 を選びました。

突如飛来した飛行体はその巨体を銀色に光らせて、赤道上空に留まった。
人々は空を見上げては、「あのUFOは何を・・・」と口々に言葉を交わした。
スクランブル発進した各国の戦闘機はそれに近づくと、みるみる薄くなり、ついに見えなくなってしまった。
地上からの地対空ミサイルも同様で、それには傷ひとつつけることができなかった。

翌日の街は悲惨を極めた。人々は突然、折り重なるように倒れ、幸福な顔をしたまま細かい粒子となって崩れ落ち、風に吹かれて消え失せていった。
細菌兵器なのか、化学兵器なのか。しかしもはやそれを調べる猶予さえなかった。街でも田舎でも、海辺でも山里でも同じ現象が次々と起こり、三日後にはついに人の気配は皆無となった。

都市機能を何ひとつ傷つけることなく、UFOの侵略は成功を収めた。しかし、飛来から一週間がたった日、UFOは何をするでもなく飛び去った。


人類はついに地上から潰えたかに思われたが、北方の極地に僅かに動く人影があった。
「ズドラーストビチェ」
男は何度も繰り返す。
「ダメだな。どこもかしこも何も応答がねぇ」
「たぶんみんな死んだんだ」
「なぜ」
「侵略だよ。ワケのわからんヤツの」
「ワケがわからんのはこっちの方だ。どうしてこんなに短期間に。どうして俺たちだけ助かったんだ?」
「たぶん私たちが知らない武器だな。電磁波の応用だろう。ここだけその陰になったんだ」
「そうかい。じゃ残ったのは、そちらさんと俺たちだけか」
「いゃ、南極にもいるかもしれない」
「今は南極には誰もいないはずだ。地球上に残ってるのは俺たちだけだ。スバシーバ」
「あんた、そんなカーロス・リベロみたいな外国語やめろよ」
「誰だい、そいつは」
「矢吹ジョーと戦った男だよ。挨拶だけ英語で、難しいことは日本語でしゃべる変わったヤツだったよ」
知らんがなっ
「お互いに干渉しない取り決めをしよう。ここで君たちと戦いになれば、たぶん人類は絶滅だ」
「ああ、わかった。こっちもそのつもりだ」


白夜の薄い太陽が山際をゆっくり転がり、その姿を隠すと、やけにきれいなオーロラが、遠くの空にたなびくのが見えた。
日本の気象観測基地、そのメインゲートに隣の国の兵士の姿、トカレフを右手に構えている影が見えた。
「おい、何の用だ」
隊長がドアを開くと、すぐに撃たれた。消音装置はあったものの、隊長の呻き声は消せなかった。
雪崩れ込んできた兵士たちは唯一の女性隊員を捕まえた。
彼女が椅子を立った時、ある装置のカウントダウンが始まったのを、侵入してきた兵士たちは知らなかった。
 
神が与えたもうた最後の望みの細い糸を人類は手放してしまった、かに思われた。

次作テーマ
①ミユちゃんのお姉ちゃんは強かった
②北極圏を抜けろ

Mr.ランジェリーさん
さて、どこに「知らんがなっ」があるでしょうか?


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