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2022年映画感想

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#若葉竜也

映画『窓辺にて』感想 よそよそしさと距離感は、優しさの表れ

 人間の愚かさ・滑稽さ・哀しさをひっくるめて、美しさとして表現している傑作。映画『窓辺にて』感想です。  『愛がなんだ』『街の上で』などで知られる今泉力哉監督の最新作。恋愛映画でありつつ、恋愛に上手に向き合うことの出来ない人々を滑稽に描くのが特徴ですが、今作もそのスタンダードな今泉作品を、より深化させた作品という印象でした。  今泉監督の作品は、毎回キャスティングが絶妙だと思うんですけど、今作の主人公である茂巳を演じる稲垣吾郎さんも、ドハマりしている演技ですね。主体性が

映画『神は見返りを求める』感想 すぐ近くに存在する不快さを描く快作

 思いの外、重たい胸糞恋愛コメディでした。映画『神は見返りを求める』感想です。  2021年の『BLUE/ブルー』『空白』も記憶に新しい𠮷田恵輔監督による、オリジナル脚本作品。特に昨年の『空白』は、超ド級の重たさを持つ人間ドラマの傑作だったんですけど、今作はそれと比較すると、ちょっと軽そうなブラック恋愛ものかなという感覚で観てきました。  その結果、今作も違う方向での重たさを持った人間ドラマであり、ある意味では『空白』以上に観ていてしんどくなる作品だったので、やはり一筋縄