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2022年映画感想

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#尾美としのり

映画『宮松と山下』感想 切なく湿った感情を魅せる、乾いた演出

 過去のしがらみをどうするかというテーマが、意図せず結果として見事にシンクロ。映画『宮松と山下』感想です。  ドラマの演出を手掛ける関友太郎さん、NHKの人気番組『ピタゴラスイッチ』の企画・監修を務める佐藤雅彦さん、メディアデザインの活動をしている平瀬謙太朗さんの3名から成る監督集団「5月」による初長編映画作品。  主演は、映画にドラマに歌舞伎役者と、活躍の場を広げていた香川照之さんなんですが、作品公開も告知し始めた時期に、過去の酒の席での振る舞いを報じられて、世間的な評価

映画『マイ・ブロークン・マリコ』感想 遺された人だけに与えられた哀しみと権利

 原作を読んだ時の衝撃を、そのまま再現出来た大成功作。 映画『マイ・ブロークン・マリコ』感想です。  漫画家・平庫ワカの初連載作品『マイ・ブロークン・マリコ』を原作にして、『ふがいない僕は空を見た』『浜の朝日の嘘つきどもと』などで知られるタナダユキ監督が実写化した作品。原作漫画は個人的には2020年に読んだ漫画作品でダントツ1位だったので、かなり期待していた映画化作品です。  結果として期待に応えてくれる素晴らしい実写化作品でした。物語は知っているはずなのに、冒頭から終盤ま