マガジンのカバー画像

2022年映画感想

51
運営しているクリエイター

2022年6月の記事一覧

アニメ映画『犬王』感想 時代に遺らなかった魂の声

 予想以上に尖ったアニメ作品でした。映画『犬王』感想です。  古川日出男の小説『平家物語 犬王の巻』を原作として、『デビルマンCRY BABY』『ピンポン』『映像研には手を出すな!』などで知られる湯浅政明監督により劇場アニメ化された作品。  キャラクターデザインは漫画家松本大洋さん、脚本は『アンナチュラル』『MIU404』『罪の声』で知られる野木亜紀子さん、音楽は『あまちゃん』『いだてん』などを担当した大友良英さんという、クリエイター・アベンジャーズといった面々になっ

映画『ハケンアニメ!』感想 世界を創り出す熱い想い

 「刺され」という台詞がありましたが、刺さり過ぎて失血死しそうでした。映画『ハケンアニメ!』感想です。  辻村深月の同名小説を原作として、『水曜日が消えた』で知られる吉野耕平監督が実写化した作品。今をときめくキャスト陣に、観た人の感想もかなり熱のこもったものが多かったので観に行こうと決めていた映画ですが、上映館や上映数は思ったより少ない印象です。『シン・ウルトラマン』『トップガン』などの大作に押されてしまっているのでしょうか。観た感想は率直に申し上げて、もっと話題になるべき

映画『シン・ウルトラマン』感想 新しいと見せかけたノスタルジー特撮作品

 設定・世界観にオタク心をくすぐられる人向けの作品。映画『シン・ウルトラマン』感想です。  世代を超えて、日本で知らない人はまずいないであろう特撮作品『ウルトラマン』を、『エヴァンゲリオン』『シン・ゴジラ』の製作会社「カラー」がメインとなって、現代を舞台に創り上げた作品。『シン・ゴジラ』では庵野秀明さんと樋口真嗣さんの共同監督でしたが、今作では庵野秀明さんが企画・脚本、樋口真嗣さんが総監督となっております。  『シン・ゴジラ』は、ゴジラが現代日本に現れたらどれほどの混

映画『流浪の月』感想 世界から拒絶された二人の行方

 演技という表現の極北作品。映画『流浪の月』感想です。  2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうの同名小説を原作にして、『フラガール』『悪人』『怒り』などで知られる李相日が脚本と監督を務めた作品。李相日監督作品は、『フラガール』を観たくらいで、『悪人』『怒り』の評判は聞いていたものの、原作の吉田修一作品にあまり興味が持てず、スルー気味でした。  ただ今作は、ここ数年傑作に出演し続ける松坂桃李さんと、その美貌だけでなく、間違いなく現代トップクラスの表現力を誇る広瀬すずさん