ふと与えられた祝祭のようだった/12月の日記
1208
パートナーがうちに来るので午後休をとってバターチキンカレーを作る。料理をするときわたしはお喋りになる。こんなバター使うん。とか、いや、うちのフライパンじゃ底が浅すぎるやろ!とかブツブツいいながら作る。大きな事故なくフライパンに表面張力くらいタプタプのバターチキンカレーが出来上がった。
パートナーがあずさに乗ってやってくる。閉店間際のケーキ屋に駆け込んでケーキをわたしがねだって3つ買う(2つしか食べなかった)。「叡智を結集しました」とバターチキンカレーを振る舞うと、「これはすごいわ、うま〜〜」と言ってくれた。
金曜ロードショーのズートピアを二人で観る。名作も名作でした。
1209
本を置いてくれている道志村のもくめ書店に一年ぶりに行く。お客さんに店主の酒井さんが「たるいさんですよ〜」と紹介してくれて、そしたらお客さんが「あの!?たるいさんですか!え〜〜、嬉しい〜いつも持ち歩いてるんですたるいさんの本」と言ってくれてこっちが意味わからないくらい嬉しい。
「たるいさんのファン結構いるんですよ」と酒井さんが教えてくれる。なんの受賞歴もないわたしの本を置いてくれていること、しっかりとおすすめしてくれていること、それってなんだか途轍もないことで、この人がいる限りわたしが言葉を書くのに理由はいらないな、と思った。
明日の日記祭もなんだかいける気がした。道志村で吸い込んだ空気の爽やかさが東京に着いた後もふんだんに思い出せた。
1210
日記祭だった。正直自分が「作家」として世界に扱われた初めての日だと感じた。それは本当に今までの人生にふと与えられた祝祭のようだった。何人もの人が「たるいさんの本これ持ってて、」と話しかけてくれた。百年で買ってくれた人、月日で手に取ってくれた人、知らない間に本屋さんを通して紡がれていた縁の数々があまりにも嬉しかった。
終わった後に「誰か構ってくれないかなあ」とゆ〜っくり片付けしてたら出店者の方が「本買いたかったけど買えなくって」と声をかけてくれて、スーツケースを広げて売買していたら、その闇取引の現場を別の出店者の方に見つかり、少し飲みながらみんなで話すことになった。その時間がなんだかとってもよかった。ぽわぽわしたまま新幹線に乗り、帰るや否やすごい高いテンションでラジオを録った。
やってきてよかった。明日からも言葉を書いていく。
1211
会社に朝早く出ないといけなくて、でもすぐ無理になってしまって、朝一の用事だけ終わらせてから家に帰って倒れるように寝た。夜もそもそと起き上がって家にあるペットボトル6個くらいを捨てた。自分の本の在庫をゆるゆる整理する。なんか一つ、おっきくものが終わったって感じ。今から、って感じ。
1212
なんとか会社に行った。帰ってきてから、日記祭で得た自信の余波みたいなものに身を任せ、置いてほしい本屋さんに手紙と見本を送ったりした。どっと疲れてすぐに寝た。
1213
文フリ京都に行くための新幹線を取った。多分一旦最後の文フリになる気がする。もうなんか、日記祭ですごく満足してしまったところがあるというか、無理してアウェイな感じのところに出す必要もないかな、と思っている。京都、鴨川の前で川側がみえるホテルをとった。めいいっぱいたそがれるんだわたしは。
1214
新しい本の入稿がひとまず終わる。共著だとすごくいいものに思えるのなんなんだろう。一人で作っているといつまでも不安で、共著だとずっと「こんなにいい本ないぜ」と思う。今回のはマジですごいです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?