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今年最後の雪だまを持って追いかけっこしているらしい

アリス・マンローの「ピアノ・レッスン」という短編集を読んでいて、昨日読み終わったのだけれど、大好きだった物語や文章、小さな文節が沢山あって、本は付箋だらけになってしまった。

例えば、「今年最後の雪だまを持って追いかけっこしているらしい」という言葉、わたしの胸を射抜いてしまって大変である。
窓の外で騒ぐ子供たちの声が遠ざかるように微かに聞こえて、なんとなく春の訪れを思う瞬間、周りとの温度差をひしひしと感じながらも、恥ずかしいくらい夢想的になってしまう。
昨日は会社の前につくバスに長々と揺られて、限りない遠回りになっている駅に着いて、2時間くらいかけて帰宅する。道中には好きな劇伴を聴く。つくづく思うのだけれど、何かをすることと同じくらい、しないことって大事で、だからこの劇伴のもつ敢えて「音を書かない」という抑制、シンプルさに心地よく惹かれるのだ。
アニメの風景がなんとなく浮かぶ。二人だけになった街で花火を浮かべるシーンが窓の外の景色となんとなく混ざって綺麗だと思っていたら、大げさに揺れるバスに体がガクンと傾いて、何をメランコリー気取っているのと世間からツッコまれたきがした。

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