渡り廊下/4月の日記
1月から3月までは毎日三行、みたいな日記をつけていたのだけれど、4月は仕事が山のように、というか山あり谷あり天竺へと言うべきか(言うべきか?)、チョモランマの大雪崩のごとく押し寄せてきていたのを、ギターを弾いたり本を読んだり、田中みな実のラジオを聴いたりしてなんとかいなすのに精いっぱいだった(オーマイガー!ユアソーキューーー!)。そんな忙しない日々の中でも特に印象に残った幾日かのことを書いておく。
0404
コンビニで半年ぶりくらいの同期と会う。インナーカラーをいれたセミロングで会うなり「え、髪めちゃかわいいやん」というと「いやあんたも髪かわいいわ」と返される。
カフェラテ片手に数十分はなす。今年の夏には確実に地方にとぶらしくて、なんとなく会うのは最後になるような気がした。ふたりで渡り廊下をあるく。
「仕事ー、だっるいけれどもねぇ、やるかぁ」
「大丈夫よウチらかわいいから」
「なにそれ最強かよ」
「注意されても絶対この髪型にしようって思ってたもん」
「かわいさで組織に逆らっていこう」
「出会ってすぐ髪型ほめあうの世界一よかった。」
「わかる、ほんまな」
「じゃあね、ウチらはかわいい」
「(笑)うん、また。」
0406
ただでさえ寝不足なのに打ち合わせで終わらないダメ出しを受ける。終わった後、ともに作業しているベテランの方とため息をつきあっていると打ち合わせにいた上司の1人が慰めるようにコンビニのエクレアを持って入ってきて「いや、期待してるんだよ」的なことを言いながら我々二人にそれを配る。結果ちょっとわたしがキレかけてしまって更にうんざりする。ただでさえ寝不足なのだ。
二人になったあと、しばらくはお互い無言で作業していたとき、ふと、ベテランが
「さて、じゃあ安っぽいお菓子でも食べますかね」と言う。
「わ」と思わず声が出る。
「なんてこと言うんですか」
「いや、ごめんごめん」
ふたりで笑う。
静かな空間に声がよく響く。
どうしようもないほどの鬱々しさが、しょうもなさすぎる悪口でいったん保留される。
「どうでしたか、安っぽいお菓子」
「え、俺そんな失礼なこと言った?」
「気のせいかな。」
「そんなこと言わないよ、俺」
またふたりでしばらく笑う。
いいよ、とりあえず早く帰んなと言われ、帰宅している。
さすがベテラン。
0415
2時過ぎに仕事が終わってタクシー帰りに。警察が道路に列をなしていて、運転手のおじいちゃんが「薬でも見つかったんですかねえ」という。東京の渋谷シティの夜のことを、ぼくはなにも知らない。
0423
数週間ぶりの休日。東小金井駅〜武蔵小金井駅の間を、カメラを撮ったり考えごとをしながらゆっくりと歩く。「社民党です、社民党です」という声が微かに聞こえてきて、駅が近づいてきたのだとわかる。わたしは空き地に広がるたんぽぽの綿毛を撮ろうとカメラを構える。後ろを老人が「ありゃ絶対脱税だよ」と怒り声で通り過ぎて、わけもなく武蔵野市にいる気持ちになった。半袖でも少し暑いくらいの春。
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