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片親疎外は児童虐待

はじめに

片親疎外(Parental Alienation)とは、子どもが一方の親からの悪口などの洗脳により、もう一方の親を拒絶したり嫌う精神状態やその状況を指します。拒絶される十分な理由がないにも関わらず子どもが一方の親を拒絶している状態です。片親疎外は、精神的な虐待の一つですが、子どに与える悪影響は、身体的、性的虐待と同等の酷い部類に入る児童虐待です。本Note記事は、精神医学会のマニュアルや科学論文を用いて片親疎外が児童虐待であることを示します。


本Note記事の目的

1)親権や監護権裁判

片親疎外で頻発するのは親子断絶です。子どもを洗脳し疎外を行う親を疎外親、疎外を受け子供と断絶する親を標的親と言います。片親疎外の言葉の通り、多くの疎外親が共通に示す特徴的な行動は、子どもと標的親を会わせないこと、健康的な親子関係の構築を妨害することです。疎外親は子どもを洗脳し、子どもが標的親に会いたくないと言えば、今度はそれを理由に会わせないの自作自演のドラマを打ってきます。標的親がこれに対抗する正攻法は一つしかありません。裁判所の介入により、疎外親の疎外行動をやめさせ、標的親と子どのが一緒に過ごす時間を確保することです。どうしても疎外行動をやめない疎外親には一時的に子どもへ接近禁止命令、連絡禁止命令が必要になります。このような目的のために裁判所に「片親疎外は酷い部類に入る児童虐待である」ことを示す必要があります。

2)疎外親と標的親双方へ共同養育のすすめ

疎外親の多くは片親疎外が子に与える悪影響を理解していないと思います。どれほどの悪影響があるのかを理解して貰い、子どもを愛しているのなら、可能な限り、共同養育へ舵を切って下さい。また、片親疎外と戦う標的親には、この記事は残酷な現実を示すことになります。この虐待に苦しむ子供達を救うのは基本手には標的親です。片親疎外が子どもに与える悪影響を理解して、絶対に救い出すとの決意を新にお願いします。

3)社会的認知向上

この虐待から少しでも多くの子供達を救い出すためには、社会的認知の向上が大事です。一人でも多くの方に、親子断絶や片親疎外は酷い部類に入る児童虐待である事実を知って頂きたいです。

児童虐待の定義

「片親疎外は児童虐待である」の直接的な表記や定義は、精神医学会や児童虐待対策機構のマニュアルや指針にはありません。しかし、これらの団体による児童虐待の定義の中に片親疎外が含まれます。

米国精神医学会(American Psychiatric Association)の『精神障害の診断と統計マニュアル』(DSM-5:Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition (DSM-5), 2013)による児童への心理的虐待の定義は以下です。
児童心理的虐待とは、児童の親または養育者による偶発的でない言葉または態度による虐待であり、その結果、児童に重大な心理的危害を及ぼすか、または及ぼす可能性のあるものである。また、米国児童虐待専門委員会(APSAC: American Professional Society on the Abuse of Children)、米国保健社会福祉省疾病管理予防センター(CDC: center for disease control and prevention)も、実質的に同じ定義を用いています。

米国児童虐待専門委員会による以下の二つの児童虐待の定義はさらに片親疎外が児童虐待であることを良く示しています。
1) 子どもとの関係を制限したり、妨害したすること
例: 子どもともう一方の親とのコミュニケーションを制限し、それはその親が子どもを愛していないからであると子ども伝える。
2) 子どもにどちらかの親を選ばせること

つまり、「児童虐待とはこういうものや状況を定義します」の中に片親疎外が含まれます。したがって、片親疎外は児童虐待であるとの結論です。

科学的調査結果

多くの疫学的、精神医学的調査と研究により、精神的および身体的問題の危険因子として、心理的および感情的虐待は、身体的虐待や性的虐待と同等に子どもに悪影響を与えることがしっかりと確立されています。分子生物学を用いた調査も始まり、片親疎外による悪影響が、生体内の分子のレベルで明らかになりつつあります。調査の対象として心的虐待全般の枠を使ったものと片親疎外に特化したものも両方があります。片親疎外は明らかな心的虐待ですし、この心的虐待には片親疎外も含まれますので、心的虐待が子どもに与える影響は、片親疎外が子どもに与える影響と同等に考えて良いです。

依存症と健康問題

子が受けた心的虐待と以下の症状や依存症には正の相関(平たく言えばそうななり安くなる)が示されています。
1)精神的疾患
パニック、鬱、不安、幻覚、不眠
2)健康問題
脳機能不全、肥満、複合身体症状症(痛み、脱力、息切れなどの複合症)
3)依存症
たばこ、アルコール、薬物
4)性依存
若年性交、不特定多数(30人以上)との性交、性的欲求不満
出典: European Archives of Psychiatry and Clinical Neuroscience, 2006, 256(3):174-86.

同様のことがオッズ比でも示されています。心的虐待を受けた子どもは、以下の問題に陥りやすいです。

1) 精神的疾患
自殺未遂: 12.2倍、不特定多数との性交(50人以上): 3.2倍、運動不足(引籠り): 1.3倍、鬱: 4.3倍

2)依存症
喫煙: 2.2倍、アルコール: 5.9倍、薬物: 4.7-10.3倍

3)健康問題
肥満: 1.6倍、虚血性心不全: 2.2倍、発がん: 1.9倍、脳梗塞: 2.4倍、慢性気管支炎および肺気腫: 3.9倍、糖尿病: 1.6倍、骨折: 1.6倍、肝炎および黄疸: 2.4倍

存命の人への聞き取り調査のためデータは取れませんが、成長期の心的外傷は早世のリスクを高めるだろうと予測しています。
出典: American Journal of Preventive Medicine, 1998;14(4):245-58.

詳細な精神疾患との関係

この論文は、より精神疾患に絞った研究結果です。成長期の心的虐待が多くお精神疾患のリスクを上げることが示されています。いくつか紹介します。苛烈な片親疎外をするの自己愛性、境界性人格障害者です。これらの発症率上昇は、片親疎外の加害者側の世代連鎖をよく示しています。
気分変調症: 3.2倍、躁病: 4.3倍、パニック障害: 2.9倍、社会不安障害: 2.5倍、PTSD: 1.7倍、妄想性人格障害: 3.2倍、統合失調型人格障害: 4.7倍、反社会的人格障害: 3.9倍、境界性人格障害: 4.8倍、自己愛性人格障害: 3.1倍、回避性性人格障害: 2.7倍、依存型人格障害: 3.9倍、強迫性障害: 2.3倍
出典: Child Abuse & Neglect, 2016:59:1-12.

片親疎外に特化した調査-世代間連鎖-

片親疎外を経験した子ども達に特化した追跡調査です。上述の精神的虐待全般の追跡調査に比べると調査対象の人数は少なくなりますが、それでも、全く同様に精神的疾患や依存症のリスクが高まることが示されています。特筆すべきは、この調査対象者のほとんどが、調査時には標的親との関係を取り戻しています。つまり、片親疎外により破壊された親との関係を改善し再構築したとしても、成長期に受けた片親疎外による悪影響を消し去ることは出来ないことを示します。もう一つ特筆すべきは片親疎外の被害者側の世代連鎖です。この調査では、片親疎外の中で育った子どもの半数(50%)が、疎外の標的親となり親子断絶を経験しています。そして、それにどう対処して良いのか分からないと述べているそうです。当然、そうなるでしょう。健全な親との関係を断たれて、自分に残されたのは虐待親です。彼らは、健全な親子関係がどのようなものかを知らない上に、精神疾患や健康面での問題を抱えています。
出典: Children, 2022, 9(4): 475
片親疎外の被害者側の世代連鎖を含む同様の結果はこちらの論文にも示されています。こちらでは片親疎外の中で育った子の70%以上が標的親となり親子断絶を経験しています。
出典: American Journal of Family therapy, 2006, 33: 289-302.

成長後の精神衛生上の悪影響

片親疎外を経験した子供の成長後の精神衛生の問題を調査した論文です。残念ながら、成長し大人になった後でもその影響は残り、その特徴を以下のようまとめています。
鬱、不安障害、精神疾患のリスク上昇、低自己肯定感、低自己重要感、アルコール依存、薬物依存、親子問題、愛着障害、低生活水準、高離婚率、欠乏感、遺棄への恐怖、罪悪感。
世代間連鎖も報告しています。
出典: Current Psychology, 2023, 342: 12055-12069.

脳の形成異常

片親疎外を経験した子供達には視床非対称という脳の形成異常が見られます。父母双方の疎外で見られますが、父親を失ったケースの方でより顕著です。ストレス、とりわけ、不安を抱えると視床部に異常が現れることが知られており、片親疎外が大きな不安を子供達に与えていることが示唆されます。また、視床は、視覚、聴覚、体性感覚などの感覚入力を大脳新皮質へ中継する役割を担っています。この異常は、幻視、幻聴、妄想、認知機能障害(統合失調症)に繋がる可能性があります。
出典: Neuropharmacology, 2020, 1:180:108301.

老化

父親を失った子どものテロメアの長さが短くなること示されています。テロメア短縮は老化の指標です。つまり、父親を失った子どもは、細胞レベルの老化が加速します。早世や心不全や認知症などの老化関連疾患の発症の若年化が考えられます。精神的外傷の悪影響は精神医学的に示されることが多い中で、分子生物学的にこの悪影響が示された意義は大きいと思います。な父親を失った理由については、詳しくは言及されていませんが、死別や断絶が含まれていると思います。
出典: Pediatrics, 2017;140(2):e20163245.

科学なんて必要ですか?

このような記事を書いておいて、矛盾するようですが、科学なんて必要ありますか?僕自身は医生物学の研究者ですし、ここでも科学的なデータを示しています。しかし、科学的データなんて無くとも、子どもから一方の親を奪えば、子どもは深く傷つくし、悪影響があるくらいは誰にでも分かるはずです。まして、子どもを洗脳し、もう一方の親への攻撃のための駒として使うえば、多大な悪影響が出ます。本来、一番の信頼関係を結び、安心できるはずの親を強制的に敵と見なし、攻撃することを強いられるのです。そんな子どもが、その標的親以外なら、正常な信頼関係や人間関係を築くことが出来るのかと言えば、そうでないことは誰にでも分かります。疎外を受けた子が他者との信頼関係を築けず、離婚率が高いことことを報告している論文もあります。しかし、科学なんて必要なく、自分の子どもの頃を思い出せば良いだけです。もし、これが、自分の子どもの頃に起きたら?と想像力を働かせれば良いだけです。科学的データは、あなたの心と常識が間違っていないことをほんの少しサポートしているにすぎません。

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まとめ

片親疎外は酷い部類に入る児童虐待です。精神面、健康面に多大な悪影響を及ぼします。とりわけ、片親疎外が、躁鬱、不安、罪悪感などの精神的問題のリスクを上げることは、独立した多くの論文で示されおり、間違いない事実でしょう。人生の質は低下し老化が加速します。実際に寿命を調べた研究は無いかもしれませんが、心臓病やがんなどの致死性の疾患の羅漢率が上昇するので短命となる可能性が高いです。片親疎外は、子どもを生涯に渡って苦しめ、じわじわと命まで奪う児童虐待です。
裁判官、弁護士、調査官、児相、警察など、親権監護権問題、片親疎外や実子誘拐に関わる人は、特にこの事実を知って下さい。軽く扱わない下さい。子どもにとっては一生の問題であり、世代連鎖を考えれば、国益にも関わります。直接的には片親疎外に関わらな一般の方もこの事実を知り問題意識を持って下さい。親の立場の方は、可能な限り共同養育へ舵を切って下さい。この虐待に苦しむすべての子供達を救い出しましょう。


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