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愛おしさを感じ、一日の始まりを味わう日曜の朝

"いらっしゃい。好きなところにどうぞ。"
地下鉄京都市役所駅前の小さな喫茶店。
入り口には用紙に書かれた手書きのメニュー。少しシワっとなっていて年季を感じさせるところが愛らしい。

迎えてくださったのは、長身のダンディなおじいさん。
店内は涼しいけど、寒すぎない。私には丁度いい温度。

AMラジオなのか、何かのローカル番組っぽいのが静かな音で流れている。
店内も常連っぽい細身な60代くらいの男性と、常連とも通りすがりとも言えないメガネを掛けた40代程の女性。
静かな店内をかき消すように、夏だよ!!と主張するかのように、窓の方から聞こえるセミの声が聴こえてくる。そしてどこからしか流れてくる、優しい風。
昔、おばあちゃんの家の縁側で涼んでいたことを思い出す。

メニューも手書き。コースターもおそらくお手製。押し花をラミネートしたもの。
シンプルにハニートーストとアイスコーヒーのセットを注文する。

ゆっくりと、でも的確に人数分の注文をこなしていく店主さん。
職員用と思われる部屋の入り口には、達筆な字で社長室と書かれた付箋が貼ってある。店主さんではなく、社長さんと呼ばなけば。心の中だけだけど。
なんて思いながら、扉の文字と社長さんに何か愛らしいものを感じていた。

シンプルなアイスコーヒーとトーストは特段美味しいとかそういうのではなかったんだけれど、初めてなのに懐かしさを感じさせる、親しみを感じさせる空間が愛おしくて。なんでもっと早く来なかったのかって、後悔してしまったと同時に、来週もまたここに居そうだなって想像してしまった。

利便性とかオシャレとか安いとか定量的に分かるものだけではなく、優しさとか懐かしさとか愛おしさとか。計れない何かを持つ空間に人は惹きつけられるのかなぁ、人間らしさを感じるのかなぁ。オシャレとかカッコよさじゃない、ゆるりとした時間を求めてたのかなぁ。
なんて思いながら、休日の始まりをゆっくりと味わう8月の朝。

エイト喫茶 @京都市役所前付近 寺町通二条下ル


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