見出し画像

8局の交錯

木村一基九段の竜王戦挑戦者決定三番勝負進出に寄せて。

竜王戦が進行中

本日行われた竜王戦決勝トーナメント準決勝で、木村一基九段が永瀬拓矢叡王に勝利し、挑戦者決定三番勝負への進出を決めた。その相手は、豊島将之名人だ。

将棋を見ない方には木村一基九段って誰?となることでしょう。将棋界でよく知られているのは、言わずとしれた羽生善治九段、そして藤井聡太七段。

残念ながら、この文章には羽生さんも藤井さんも出てこない。
それでも、棋士の戦績、足跡をたどると得も言われぬ感情に襲われることがある。

木村一基九段

木村一基九段は、軽妙な語り口で、将棋の解説でファンになる人が多い。また、千駄ヶ谷の受け師の異名を持ち、相手の攻め駒を責めて勝つこともしばしば。
46歳の現在、順位戦はA級、竜王戦は1組というトップ棋士のひとりだ。
20代、30代が強さのピークであることが多いなか、第一線で戦い続けている。

でも、将棋界に現在8つあるタイトルには、これまでに7回挑戦して、6回奪取できず、まだ手が届いていない。
(さらっと7回と書いたけれど、1回挑戦するだけでも、タイトル別のトーナメントで強豪を倒していかねばならず、とても大変なことだ。)
残りの1回は、王位戦で豊島将之王位と七番勝負を戦っている最中だ。

そう、今日決まった竜王戦挑戦者決定三番勝負の相手と同じなのだ。

豊島将之名人(王位)

豊島将之名人(王位)は、この1年に初タイトル、2つ目、3つ目と立て続けにとった、昨年度の最優秀棋士(将棋大賞)。今最強の棋士のひとりといって過言ではないだろう。

でも、その豊島名人も初タイトルまでに6回挑戦して敗れている。この記録に、木村九段と重ねて見てしまう。先に手が届いた豊島名人と、まだ届いていない木村九段。

対局の行方

王位戦(七番勝負)は、豊島王位が2勝、木村九段が0勝という状況で3局目を迎えようとしている。竜王戦 挑戦者決定三番勝負はこれからだ。

個人的な気持ちをこぼせば、木村九段がタイトルを獲る日をとても楽しみにしている。その一方で、豊島名人もずっと好きな棋士で、昨年度の初タイトルは嬉しくて仕方なかった。
でもどちらにとっても良い結果はありえない。王位は1人だけだし、竜王戦挑戦者も1人だけだ。

お互いにやりづらさもあるだろう。同じ人と続けて指すと、否応なく前の対局、その前の対局の記憶があって、どういう戦術をとるか悩ましいだろう。
これから最長8局。どんな戦いになってゆくのか、楽しみで仕方ない。

サポートありがとうございます。 面白いイベントに足を伸ばしたり、本を買ったり、ライブに行ったり、楽しいことに使います。面白かったことはまたnoteに書きます!