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80年近くも硫黄島に遺骨を置き去りにしたままの"日本の戦後"を考える[読書memo]

「熱風」2023年7月号、青木理さんの連載「日本人と戦後70年」の第80回ゲストはジャーナリストの栗原俊雄さん。

毎日新聞記者として活動する彼の近著『硫黄島に眠る戦没者 見捨てられた兵士たちの戦後史』(岩波書店)の紹介を兼ねて話は進められていくのだが、その内容は80年を経ても戦後ば終わっだものではないことを知らせる衝撃的なものだった。

栗原さんが最初に硫黄島を取材できたのは2006年のことで、毎日新聞の取材許可が下りてのことだったが、防衛省が難色を示して頓挫しそうになる。

東京都なのに自由に行き来できないという場所が存在するということは、例えば尖閣諸島の上陸が簡単ではないというニュースを覚えていればそれほど不思議ではないのかもしれないが(北方領土もそうだった)、そうしたバイアスをハリウッド映画のロケ地として使われていたエピソードを絡めて自分事にして変えられていく展開に、すっかりこの南方の島の秘めた歴史をもっと知りたい欲にかられてしまった。

それにしても、硫黄島はその名のとおり「硫黄ガスの吹き出る島」ということで、そのような過酷な環境での戦争の傷跡をもとに、よりリアルな匂いを感じさせる戦争体験の継承をすることが、私たちのような"戦争を知らない子供たち"には必要なんじゃないかと思った次第。

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