今日の茶飯事 二杯目   ハムは何処までが生なのか

私が初めてハムを食べたのが、小学校一年生の時だ。というより、記憶として残っている最古のハムの記録がその時だった、というだけなのだが。

多くの人はハムをそれ単体で食うことはないのではないだろうか。フレッシュハムを。

トーストの上にチーズのお供としてのっけたりとか、サラダの中に忍び込ませたりだとか。
それこそボンレスハムのような厚みのあってそこそこの大きさでなければ、メインのおかずとしては荷が重い。

だが。私はこのやる気のなさそうなペラッペラのフレッシュハムをなんの手も加えずに、素のまま生のままで食っていたのである。

というのもこのハム、自分の家の冷蔵庫から出したものではなくて、すぐ隣にある祖父の家の冷蔵庫から拝借していたのだ。

家は違えど食事は同じ家に集まってみんなで食べることになっていたため、ご飯時になると祖父を呼びに行くのだが、この時にハムをもらっていた。

ご飯前なのもあって親にバレないよう、祖父と私の秘密のハムの交易が行われていたのだ。これは祖父が調子を崩し、入院生活が始まるまでずっと続いていた。

中学生にもなるとちょっとした高級な食べ物を知り始める。キャビアだとかフォアグラだとか。
その中にある「生ハム」の文字。

私はこの時、生ハムというものは調理なされていない、加工されていない素のままのハムを「生ハム」と総称しているのだと確信した。

実際ほぼあっている。あっているのだが、あっていないのだ。それに気づくのはその六年後となる。

偶々両親の知り合いが家に遊びにきた時、お土産として生ハムを買ってきたのである。
ーー(私の名前)君は生ハム食べたことある?
ーーあります!昔結構食べてました。

自信満々で答えたところ大分驚かれた。
そして両親も驚いていた。

ここで冒頭に戻る。祖父との秘密の交易を話すととても笑われたのをよく覚えている。

フレッシュハムは生ハムではないらしい。

フレッシュなのに?何処からが生で何処からがフレッシュなんだ?線引きを教えてくれ。

祖父の家でハムを食べなくなってから十年以上経った今でも、あの頃のハムの記憶はフレッシュなままだ。

それなら生よかフレッシュな方がお得な気がする。そういうことにしておこう。そうすればあの恥ずかしい記憶も報われることだろう。







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