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ワンマンライブまでの記録2「やっぱりやりたくないです」

「やっぱりやりたくないです」


1月にワンマンライブが決まり、「じゃあ、7月まで毎月、ライブをしよう!」
ということになった。
戸惑いの気持ちもあったが、格さんのそんな優しい気遣いに嬉しさを感じ、
(頑張る…!!)という気持ちの方が大きかったと思う。

そんな思いを抱きながら、翌月2月も、leaf roomに足を運んでいた。
その時も、共演した方々に「どうしてワンマンってやるんですか?」
と聞いていたと思う。この往生際の悪さである。その日も無事にライブを終えたのだが、今思うと、この時から、自分の気持ちはぐらぐらと揺れていたのかもしれない。

異変


翌月、三月もライブが決まり、一ヶ月を過ごしていく中で、
僕は、漠然とした体調のおかしさを感じていた。
ライブの日が近づくにつれて、気持ちがどんどんと落ち込んでいく。
僕は、元々普段から特別元気なわけでもないのけど、格別に暗いわけではない
(と信じている)のだが、とにかくなんだかおかしいのが
わかる。でも何がおかしいのかわからない。

それでもライブは決まっているから、行かなくてはいけない。
声が出ないわけでも、指が曲がってギターが弾けないわけでも、
入院しなきゃいけないくらい喉が腫れているわけでもない。
僕は、正体不明のざわめきを抱きながら、leaf roomへと向かった。

その日のライブは、偶然なのかどうかわからないが、僕も含め、出演者全員が「これからleaf roomでワンマンに挑む人たち」だった。僕と他の人の違いは、「ちゃんと自分の意思でそうすると決めたかどうか」だけ。

一番目に歌い終わり、他の人のライブを見届ける、程なくして、ライブが終わる。自分もワンマンがあるので、それを伝えなければいけない、(話をして、ちらしを渡さなくちゃ…)と頭ではわかっているのだけど、体が動かない。それどころか視界がぐらぐらと揺れて、何もかも吐き出しそうなほど気持ちが悪くなっていく。

たまらず、窓の外を開け、外に出る。三月の暑くも寒くもない
中途半端な空気を、体の中に入れて、また出す。
一人で何度もそれを繰り返し、やっとのことで室内に戻ると、会場には、出演者と数名のお客さん、格さんしかいなかった。
ちらしを配れたかは覚えていない。
いつもは気にならない踏切の音が、やたらと耳にこびりつく夜だった。

翌日、僕は自分の気持ち振り返っていた。ベッドに横になり右に揺れ、左に揺れながら。椅子に腰掛け、三角の形で、自分を抱えながら。ソファの上で、部屋の隅で、机の下の暗いところで…。とにかく考えていると、目を背けていた、あるひとつの想いが、心をかすめていった

(ワンマンライブやりたくないかも)


苦しい気持ちの正体はこれだ。僕はすぐに認めることができていた。
ただ、この時点で、次にleaf roomでライブをするまでに時間があったので、
(この気持ちをどうにかすることだって出来るかもしれない…。)
と考えた僕は、ワンマンに限らず、出来る限り、人のライブを見にいった。

どうして人は、ライブをするのだろう、「やりたいからワンマンをやる」とは何なのだろうか…。答えを探すかのように、ライブへ赴き、意見を聞いてみるということもしたのだが、心を照らす明確な光を見つけることはできなかった。

今僕は、毎日ほぼ欠かさず配信をしている。そこでも「やりたくない!」という気持ちを叫んだ。その結果、この気持ちの根本には、「怖さ」だったり「不安」だったり、「わからない」という想いだったり…「とにかく何かのピースがはまらない感覚」があること、その状態では歩けないという気持ちを自分が抱いているのではないか…という仮説を立てることができた。(一緒に考えてくれた皆様ありがとうございます!)優しい言葉をたくさんかけてもらえたこともあり、その時期には、深海から浮上して、息継ぎができていたと思う。


leaf roomでのライブの日が、刻一刻と、迫る中、
思いつく限りの色々な方法で、僕は自分の気持ちを探し続けた。


その日も僕は人のライブを見にいっていた。
数日後、leaf roomでライブがある。
帰り道、頭の中には、答えが出ていた。


「やっぱりやりたくない」


僕は、沢山の言い訳を頭の中で、考えて、
沢山の未来を頭の中に浮かべながら、
眠りにつくのが早い地元の町の路地を、
とぼとぼと歩いていた。

(仕方ないよね。この気持ちはきっと、どうしようもないし。
僕は元々どうしようもないやつだから。
でも、こんなに沢山考えて、こんなに沢山悩んで、
どうにかしようとちゃんと向き合ったんだから、
きっと許してくれるよね。
情けないとか、幻滅されちゃうかもしれないけど、
きっと許してくれる。
…でも、許してくれなかったらどうしよう。どうやって謝ろうかな。
もう、ライブ呼んでくれないかな。そんなことより、悲しかったり、
嫌な気持ちになったりしちゃわないかな。嫌な気持ちにさせちゃうのは嫌だな。
あーぁ嫌だな。嫌だ。嫌だ、嫌だ。沢山嫌だ。)

ぐるぐる考えながら家を目指していると、前方から自転車が走ってきた。



次回




「全部許してあげる編」


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