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熱海旅立ち紀行

ここは熱海。


もっというと「熱海駅前平和通り名店街」
駅を出てすぐ目の前にある、巨大な「観光客ホイホイ」だ。

先日、以前も記事に登場した、
親友「いたさん」と熱海に行ってきた。
ちなみに熱海にした理由は特にないし、
出かけた理由も特にない。友達ってそんなもんだ。

朝9時熱海に到着→城ヶ崎海岸→大室山→伊豆高原→熱海→小田原
という道順で1日を過ごした。結果的に。
僕が何にも考えないでなんとなく「熱海」と提案したら、
全部いたさんが考えてきてくれた。仕事のできる男である。

「城ヶ崎海岸に行きたいんだよね」
「どうして?」
「そこって南海トラフで一番危ないらしいんだよ」
「うん」
「見ておきたいじゃん?」
「?…うん??」

見に行きたい理由がよくわからなかったのだが、
ぶっちゃけ僕は気の合う人といればどこでも天国タイプ
人種なので、言われるがままついていった。

城ヶ崎海岸は熱海からさらに電車で40分ほど行った先にある。
時間だけ見ると遠いが結局ずっと喋ってるのであっという間だった。
そんなもんだ、友達って。

「ログい」


城ヶ崎海岸駅に着く。
城ヶ崎海岸の駅は、ログハウスのような可愛らしい雰囲気の駅だった。
いたさんは言う。

「…ログいな」
「ログいってなんかかっこ悪いなぁ」

目的地の城ヶ崎海岸はここからそれなりに歩くらしい。
周りには、コンビニも、スーパーもない。この始まりの地
城ヶ崎で全ての準備を整え、歩き出さなければいけない。

「自動販売機は普通なんだね。お手洗いも階段も全部ログいのに。」
「使うなよ、俺のログい」
8月の太陽の光がこれでもかというほど、僕たちに降り注いでいた。

ログい。ログすぎる。

綺麗ヶ崎(キレがさき)


城ヶ崎は駅を出るとすぐ住宅街で、
なぜかイタリア料理屋がポツンと一軒ある。
不思議な街並みだった。

そこを過ぎていくと、徐々に緑が増えていき、
夏の虫たちのざわめきが一歩足を踏み出すごとに大きくなっていく。

「夏の足音がする」
「それは、ログいよりいいね」
「いや、夏の調べがすると言うべきかもしれない」
「足音の方が良かった。調べはなんか距離感を感じる。
足音より想像の余地がないし、言ってる側が少し上の立場に立ってるみたい
で、夏との親和性が高くない気がする。褒められたからって、
調子乗らないでほしい。」
「言い過ぎてて笑う」

noteを書くためにこの日のことを思い出してるんだけど、
なんか、せっかく熱海に行ったのに、喋ってることいつもと同じだなぁって思った。僕たちはどこでも良いのかもしれない。僕たちでいることができれば。

不毛で無意味で充実した会話を続けながら、城ヶ崎海岸の入り口まで辿り着く。
目的の場所は、「門脇つり橋」なので、ここからもう少し歩かなくてならない。
生い茂る緑の合間から降り注ぐ木漏れ日をなぞるように、僕らは止まらず進んで行く。

「俺、最近考えたことがあるんだけどさ」
「うん」
「綺麗な景色の写真って「別に綺麗な景色」ってだけだなって。人とか、自分が写ってなかったら、なんか「あぁ、うん」ってなるなって思った。」
「今は、際限なく沢山撮れちゃうからこそ、人に褒められることを目的に写真を撮るのかもねぇ。
皆、色んな人にいいねって言ってもらいたいんだよ。魅力を感じる写真が少ないってのもある
んじゃない?」
「それもあるかもなぁ…。何してんの?」
「景色が綺麗に撮れない。いいねが貰えそうな。」
「あぁ、うん…。」

「葉っぱじゃなくてどうせ撮るなら、
木漏れ日撮れば?」
といたさんが笑って、
僕は「確かに」と返した。今度は二人で笑った。

意味を持った木漏れ日。

しばらく進むと、
最初の海が見える場所に辿り着き、
そのあまりの青さに僕たち二人のテンションは著しく跳ね上がっていた。

「凄い!綺麗!!綺麗すぎる!綺麗ヶ崎(キレがさき)じゃん!!!」
「百万人言ってるだろうな、それ。」
「じゃあ、美しヶ崎…。キレヶ崎でもあり、美しヶ崎。
とにかく澄んでるし、やばいくらいめっちゃ半端ない」
「永司の感想は全然澄んでないなぁ」

騒がしい僕らの周りを「なんだなんだ」と言うように一羽の蝶々が旋回していた。
「君の綺麗ヶ崎が一番澄んでいた」と蝶々が言ってる。と僕は蝶々の気持ちを代弁した。いたさんは「確かに蝶々も言ってる。「ここで僕も飛びヶ崎」って」と返してきた。そんなうざい蝶々は沈めと思った。

美しヶ崎、綺麗ヶ崎

「空島に来た!!」


つり橋と城ヶ崎海岸は人が沢山いて、
騒がしかった。
どうやら、車で一気に頂上に登るルートがあったらしい。
自分達の移動力のなさを恨みつつ。

揺れる吊り橋にはしゃいで見たり、崖ぎりぎりに立ってみたり、
(いたさんはしなかった)凸凹した岩場を飛び移りながら、
海岸に近づいたりしていた。

「あの松の木凄くね」
「かっこいい」
「樹齢とかすごそう」
「この木があれば、ここら一帯は守られるような気もするね」
「確かに」
「あと、いたさん」
「ん?」
「年上なんだから、松〝さん”な?」
「松っさん」
「朝ドラみたいに言うな」

松っさん。

満足するまで海岸を歩き次の場所に向かおうと、駐車場に向かう途中
「門脇埼灯台」という灯台を見つけた。
ここまでの道のりで、疲れているいたさんの顔が少し歪んだが、
僕が、「そうしたい」と思ったら忠告なんて聞かないのを
知っているので、一緒に灯台に登ってくれた。

ぐるぐると階段を登り一番上に着いたのだが、労力の割には…と言うような景色だった。頂上を二人で何周かぐるぐるしていると、二人の子供を連れた家族連れが登ってきた。

先に辿り着いた、(おそらく)お姉ちゃんは景色を見るなり、「ねぇ、後で写真撮らせて!」と自分の両親に言った。少し遅れてきた弟が、
階段を登り切る瞬間「空島に来た!!」と叫んだ。
忘れていた。
僕たちは、空島に来ていたんだ。

階段を降りる時も、
僕ら二人はその兄弟の話をしていた。

「写真撮らせてってなんかいいね。
そんなこと僕らは最後にいつ言ったんだろうね。」
「俺は、あの少年の「空島に来た」にも胸を打たれた」
「素敵だったよね…。いたさん、頂上着いた時なんて言ってたか覚えてる?」
「俺、なんて言ってた?」
「『85段って結構あるんだなぁ』って言ってたよ。夢取り戻して。早急に。」
「現実に戻しちゃう言葉ってあるよなぁー」

空島から見た大室山

灯台から出て駐車場に向かい、まだ生き残っていた電話ボックスに
感動したりしながら、僕たちはタクシーを待つ。
8月の明度は朝よりも何倍も濃くなっていた。

…この後、大室山にいったり、ボロボロの旅館に入ってみたり…
といろいろな場所に行ったのだが、長くなりすぎるので、割愛します。
夏を忘れたくない時は、出かけましょうね。親友と。


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