【学会誌】2ステップ陽極酸化

こんにちは。
『表面技術』2023年4月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になったポイントをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「アルミニウム合金への2ステップ陽極酸化処理による高機能化技術」で著者は広島大学の日野さんです。

内容

アルミニウムの陽極酸化が用いられる業界や目的、昨今のマルチマテリアル化の流れ、また、陽極酸化のメカニズムを説明した上で、2ステップ陽極酸化処理技術について解説されています。

2ステップ陽極酸化処理は、接着剤との密着性が良好なリン酸陽極酸化処理(ステップ1)後に、耐食性に優れる硫酸陽極酸化処理(ステップ2)を行うことで、密着性と耐食性を両立する技術です。

ポイント

  • リン酸陽極酸化処理後に硫酸陽極酸化処理を行うと、最表層はリン酸陽極酸化膜となり、基材に近い2層目に硫酸陽極酸化膜が形成される

    • リン酸陽極酸化処理:ポーラス構造を形成し、接着剤のアンカー効果が向上

    • 硫酸陽極酸化処理:耐食性が高い(硫酸イオンが導入されたためと推測される)

  • リン酸陽極酸化処理→硫酸陽極酸化処理の順で酸化膜を形成することで、それぞれ単独の処理よりも密着性・耐食性が向上する。ただし、処理が逆になると密着が低下し、耐食性も硫酸陽極酸化膜単独と同等まで低下する。

著者によると、多段階めっきプロセスから2ステップ陽極酸化処理のアイデアを得たとのことです。

異なる機能を持つ層を組み合わせることで高機能化するという考えが陽極酸化にも応用できることが示されたと思います。

記事を読む前は、ポーラスの表面を更に荒らして表面積を稼ぐのかと予想しましたが、2段階にすると酸化膜/基材の界面に2層目が形成されるのですね。イメージとは違いましたが、メカニズムを考えると納得しました。

密着性はポーラス構造で機械的効果が強くて、耐食性は(ハッキリはしませんが)硫酸イオンが効いているというのは、シンプルで分かりやすいメソッドですね。

処理条件で、程度の差を調整できるのであれば、かなり自由度が高くなると感じました。

今日は以上です。

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