【学会誌】陽極酸化ポーラスアルミナの技術動向

こんにちは。
『表面技術』2023年4月号を読んでいます。
読んだ記事について、気になったポイントをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「Alの陽極酸化による微細構造の形成と機能化に関する最新動向」で著者は東京都立大の柳下さんです。

内容

陽極酸化を用いて作られるポーラスアルミナに関して、近年の動向を踏まえて応用例等を紹介しています。

近年の動向

(この記事を読んだ限り)陽極酸化ポーラスアルミナの技術トレンドは以下の2点のようです。

  1. 効率的なポーラスアルミナ箔の形成方法の開発

  2. ポーラスアルミナを鋳型とするナノ構造材料の効率的な作製方法の開発

論文数でみた研究動向としては、2000年頃から2014年にかけて急速に論文数が増加しているものの、アルミナに関する論文は2007年頃から横ばいで、Tiの陽極酸化の論文が伸びていいるようです。

アルミナの方が構造制御はやりやすいようですが、酸化チタンの半導体特性や光触媒特性等、機能面で注目されるTiの研究の方が盛んになっているようです。

ポーラスアルミナの応用先として、記事の中ではメンブレンフィルターとナノ材料の鋳型があげられています。

1.効率的なポーラスアルミナ箔の形成方法の開発

陽極酸化ポーラスアルミナは10μm以上の厚みがあれば、単独の箔としてハンドリングできるようです。

それを作ろうとすると基材を溶かすか、基材から剥離する必要がありますが、材料歩留まりの観点から剥離方法の研究がされているようです。

方向性としては、電解液組成最適化や多段プロセス適用によって、基材との界面付近の溶解性をあげたり、基材側の剥離面を整える手法が(おそらく著者関連で)検討されているそうです。また、プロセスの処理時間を短縮する方法も検討されています。

2.ポーラスアルミナを鋳型とするナノ構造材料の効率的な作製方法の開発

ナノ構造の鋳型としてポーラスアルミナを使う話は、比較的よく聞く話だと思いますが、実験室レベルだと、ポーラスの中にナノ材料を形成した後にポーラスアルミナ自体を溶解する方法が簡単です。

ただ、大量生産を考えると効率が悪いので、この記事ではナノインプリントの考え方を使った手法が紹介されています。

わざわざナノインプリントの型にポーラスアルミナを使うメリットとしては、ロールtoロールにおけるパターンのつなぎ目がなくなる点が挙げられています。

ロールtoロール方式のナノインプリントは効率が良いのですが、型を円環状に丸めるため、つなぎ目が出来てしまいます。(円環に直接描画すればいい気がしますが、コストや精度がでないようです)

著者の開発しているプロセスでは、ポーラスアルミナは曲面への形成でも均一にできるようなので、つなぎ目のないナノインプリント型を作ることが出来るらしく、ナノ構造材料を生産する上で効率アップにつながるとのことです。

直感的には周期的なポーラス構造しかできない気がしますが、いろいろなパターンに対応できると応用先が増えそうです。

今日は以上です。

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