【学会誌】濃厚塩水溶液溶媒を使った硬質3価クロムめっき

こんにちは。
既に月が変わってしまいましたが『表面技術』2023年2月号を読んでいます。
この号では2022年度受賞記念特集ということで、学会で受賞された方の研究概要が紹介されています。
読んだ記事について内容とポイントだと思ったことをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「濃厚塩化カルシウム水溶液からの硬質3価クロムめっき」で、著者は奥野製薬の吉兼さんです。

内容

三価のクロムめっきと聞くと既に実用化されている技術だと思ってしまいますが、この記事によると”硬質”クロムめっきは実用化には至っていないようです。

課題は皮膜硬度と耐摩耗性の改善です。

この記事では、塩化カルシウムなどの金属塩の濃度が濃い水溶液を用いた三価クロムめっきの開発概要を説明されています。

アプリケーションとしては、印刷ロールの表面コーティングが記載されています。
印刷ロールはインク切りのためにドクターブレードと擦られるため、セラミックやニッケル-リンめっき等の硬質材料が使わられているようです。

濃厚水溶液の利点

  • 水素発生が少ない→電流効率が高い

  • 高い錯体形成能→炭素共析の抑制

濃厚水溶液を使った三価クロムめっきの特徴

  • 電流効率が六価クロムめっきの4倍(60~70%)

  • 100μm以上の厚膜かが可能

  • カルボン酸浴(通常濃度の水溶液)に比べ炭素共析濃度が1桁小さい。(六価クロムは更に2桁小さいらしい…)

  • 成膜時の結晶構造はδ-クロム相。

    • 300℃で加熱することでα-クロム相に変化。

  • 皮膜硬度と耐摩耗性は六価クロムめっき同様

    • 熱処理による変動が小さい(六価クロムは悪化する)

硬質めっきは扱うことが少ないんですが、この分野は昔からずっと進展があるように思います。

個人的には印刷ロールのめっきの話題を身近で複数聞いていて、この辺りは印刷ロール業界の転地なのか、めっき業界の転地なのか、イノベーションの気配を感じています。

今日は以上です。

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