プロセストモグラフィ:プラントの視える化

『化学工業2022年12月号』で特集されていた「プロセス・トモグラフィ」についてです。
"プロセス・トモグラフィ法によるプラント視える化技術"というタイトルがつけられていて、外からは見ることが難しいチャンバーや配管の中を可視化するという取り組みです。

このタイトルだけ見ると、かなり大きなニーズがあると感じました。CVDやスパッタ等の真空プロセス、セラミック焼成等の高温プロセス、めっき等のウェットプロセス等、いろいろなことに使えそうです。これらプロセスを量産化する際に一番気になるのか、容器内の熱や濃度のムラでそれを如何に制御するかが品質に影響してくるのですが、基本的にはトライ&エラーで出来栄えを見ながら条件を調整していかないといけない。それが、プロセス中に中の状態を知ることができれば、不良原因を知ることができるし、処理中に条件を調整することができる。つまり、試行回数を大きく減らせる可能性が高いと思います。

この雑誌で特集されているのは、配管や容器も周囲(内壁?)に電極を配置して、電気抵抗や誘電抵抗の変化を測定、この変化から内部の混相流状態や濃度バラツキ等を非破壊で可視化する技術です。
記事の著者には千葉大の武居先生が入っていて、下記URLの技術のようです。

測定原理を読むと小型チャンバーか配管でないと適用は難しいかとと思いましたが、上記リンクでは大型プラントにも適用されているとのことで、工夫すれば色々なことに応用できそう。

<化学工業2022年12月号記載の応用例>
 ・薬品製造工程
  →管内の薬剤やコーティング剤の濃度分布の可視化
 ・石油産業
  →高オクタン価ガソリン生成のためのFCC濃度分布の可視化
 ・製鉄工程
  →鉄鉱石の熱処理の際の微粉炭吹込み時の内部状態可視化
   (炭素で暗いために光学的な測定が難しいらしい)
 ・気液二相流内の気泡の流れの視える化
  →化学反応時に気泡が発生すると伝熱性が変化して反応の均一性に影響

プロセス視える化はモノづくりをしていれば必ず必要になる取り組みなので、今後の取り組みも見ていきたいと思います。

記事を読む限りでは、センサー構造とベースとなるデータの取得、測定値を内部状態に変換するアルゴリズムが重要なので、製品を買ってきてすぐに出来る技術ではないと思われます。
設備毎にセンサーとアルゴリズムの設計から始めていかないといけないので、モノになるか分からない新プロセス開発の段階ではなかなか使いにくい印象です。
どちらかといえば、既存の設備を使って条件振り+αくらいの開発ではトライ回数をかなり少なくできるし、生産開始後の不良解析の精度を上げることに使えると思います。

ちなみに、ググったらKANOMAXのHPにITS社のプロセストモグラフィ製品が掲載されていました。千葉大の技術と同様に電気抵抗をモニタリングする方式のようなので、この業界ではメジャーなのかもしれないですね。

ITS 産業プロセス・トモグラフィー Industrial Process Tomography
https://www.kanomax.co.jp/product/detail1084/


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