【学会誌】Pd触媒を用いない無電解貴金属めっきの実装性

こんにちは。
もうすぐ3月も終わりますが『表面技術』2023年2月号を読んでいます。
この号では2022年度受賞記念特集ということで、学会で受賞された方の研究概要が紹介されています。
読んだ記事について内容とポイントだと思ったことをメモしておきたいと思います。

今回読んだ記事のタイトルは「微細配線向け新規無電解貴金属めっきプロセスの開発と実装特性に関する研究」で著者は小島化学薬品㈱の加藤さんです。

無電解貴金属めっきの課題

プリント配線板の実装部に施される無電解貴金属めっきの新プロセスに関する内容です。

微細配線が進むと配線同士の距離が近くなります。
実装部の貴金属めっき(最近ではNi/Pd/Auが使われるようです)では無電解めっきが使われることが多いようですが、無電解めっきは配線間の絶縁部分にも析出する可能性があり、微細配線に不利な部分があります。
これは無電解めっきの成長核となるPdが絶縁部分にも付着することに由来します。

Cu配線の表面ではPd-Cuの置換反応で選択的な析出が起こりますが、これに起因してCu表面に欠陥が発生し、後工程のNiめっきとの界面にボイドが出来てしまいます。これによって実装強度が低下する懸念があるそうです。

これらの課題に対して、Pd付与工程をなくすことで解決したのが本記事の新プロセスになります。

ポイント

  • Pd触媒付与工程なしで、超薄膜のNiめっきを均一に成膜する技術を開発した

  • 厚さ0.01μmの超薄膜Niめっきでもワイヤーボンディング後に界面ボイドは見られず、十分な実装強度を得られた

  • 従来プロセスと比較して、はんだボールシェア強度は5%高い値を示した

特許・論文

この記事の本文には具体的なプロセスは記載されていなかったので、特許や文献を調べたところ、おそらく同一であろう内容のものが見つかりました。

特許:JP2029-007068

論文:微細Cu回路基板向け無電解超薄膜Ni/Pd/Auめっきプロセスの各種皮膜特性に関する検討

読み込めていないですが、特許の中で書かれている”無電解ニッケルストライクめっき”が、記事の新プロセスになるようです。

ストライクめっきと言われると電解めっきをイメージするんですが、無電解もあるようです(造語かもしれませんが)。
たしかに、濃度は薄く設定されているので、そういう意味でストライクなのかもしれません。

重要なのは還元剤でしょうか…?

【0034】
還元剤:
無電解ニッケルストライクめっき液は、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体の群より選択される1種以上の還元剤を含む。無電解ニッケルストライクめっき液は、還元剤としてこれらの物質を用いることにより、パラジウム触媒が付与されていない銅材の表面へのニッケル析出を実現することができる。人体への安全性の観点から、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボランがより好ましい。

特許:JP2029-007068

これは気になる技術なので、業務時間を使ってしっかり読み込みたいと思います…

今日は以上です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?