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グラフェンを用いた透明アンテナ

表面技術2022年8月に掲載されているグラフェンを使った透明アンテナの記事を読んだので感じたことをメモしておきます。

2022年6~8月の小特集「次世代高速通信と表面処理」に掲載されています。
表題は『CVDグラフェンを用いた透明アンテナ』で、青山大学の研究チームが著者になります。

6、7月は5G通信のための低損失基板をどのように作るか、という話が多く、主に表皮効果による伝送損失を抑える工法やそのための材料が主な話でした。

8月号は電磁波シールドやアンテナのように電波を遮断したり受信したりする性能に関連する技術の特集になっています。

特集の最初には基本的な波動工学の話もあって、この手の技術の初心者にも配慮している感じです。
数式や幾何学的なグラフが多くて、読む気になれないので…、私は理解できていないですが…。(いつかちゃんと読みたい)

グラフェン自体は、私が大学にいた頃にCNTなどと一緒に凄く流行ったイメージで、昔から透明電極の話は出ていたのですが、どうなんでしょうか。なかなか実用化できないイメージです。

CVDグラフェンの利点

グラフェン以外の透明電極の課題としては以下のような点があります。
基本的には、可視光透過性と導電性がトレードオフになるという点です。

ITO
 ・低抵抗化のためには膜厚を厚くする必要がある
  →厚くなると透過率が下がる
 ・イリジウムが貴金属なので供給元が限られている
  (ここ21年に建値が急激に上昇しています)

微細金属メッシュ
 ・低抵抗化のためには配線を太くする必要がある
  →太くなると透過率が下がる

では、グラフェンはどうかというと、グラフェンも厚くなると透過率が下がるのは同じです。
ただ、1層の厚みが原子サイズなのと、1層あたりの導電性が良いので、そんなに厚くしなくてもよいというのが、上記二つに対して有利な点です。

記事内でデータでは、3層にしてキャリアドープすることで、低抵抗と透過率90%をを実現しています。

キャリアドープはイオン液体を塗布しているということです。
詳しいやり方は分かりませんが、これは一般的なんでしょうか?
私のイメージはCVDの雰囲気を調整してC以外の元素をドープするイメージでした。

アンテナの性能としては及第点?

記事の中では、グラフェンで作った透明アンテナと、500nmのAuで作ったアンテナ(不透明)で反射特性、放射パターン、放射抵抗や損失抵抗を評価しています。
この分野の評価方法はいまいち理解していませんが、アンテナとしての評価をしているようです。
(具体的なデータは上記リンクから原文を確認してください。)

結論としては、不透明なAuアンテナと同等の放射パターン、電波放射性能50%を得られたということです。
まだ実用化には足りないが、(同じ研究チームの過去研究)単層グラフェンアンテナに比べれば、だいぶ現実味が増してきたという感じです。

課題としては、キャリアドープによってキャリア密度は上がるけど、キャリア移動度が下がってしまう(イオン液体のカウンターイオンからのクーロン散乱が原因らしいです)ので、そこを何とかしないといけないということです。

量産を考えると、3層グラフェンの作り方もかなり課題がありそうで、グラフェンアンテナの実用化はまだまだ遠そうです。

sp2カーボン(←私が勝手に呼んでます)系のナノ材料は色々な可能性は研究されているのですが、なかなか大々的な事業にはつながらないイメージですね。

何年か前に大林組がCNTで軌道エレベーターを作る話はどうなったんだろう…、と思いながら、興味がある分野なので今後は定期的に情報収集していきたいと思いました。

以上です。

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