ゲームを「面白くする」技術、「つまらなさを減らす」技術

ゲーム制作技術には、大別して二つあると思っています。
「面白くする」技術と、「つまらなさを減らす」技術です。

前者は主にレベルデザインです。
グラフィック、音楽、シナリオなどもそうでしょう。
後者はUIの利便性・操作性やデバッグなどがそうです。

・「面白い」ゲームとは?
もはや哲学です。あらゆる切り口から語り尽くされています。
あまり深入りはしないようにしましょう。

帰納法的に考えます。
まずゲームは、「とりあえず動けば楽しい」
ボタンを押すと音が出る。
カーソルの上を押すと、プレイヤーキャラが上に動く。
操作して反応が得られる、ゲームはまずこれが楽しい。

これは「面白さ」を足す要素です。
しかし、その面白さでプレイヤーを惹きつけられるのは長くて数分くらいでしょう。

・面白さの根幹「レベルデザイン」
たとえば、ツクールのデフォ機能だけで特に凝ったシステムも導入せずにRPGをつくるとします。
その場合でも、レベルデザインさえしっかりしていれば十分に遊べる、面白いゲームになり得ます

「レベルデザイン」とは、ちょっとわかりにくい概念ですが、「マップデザイン」であったり、「キャラクターの成長」であったり、「ゲームバランス」であったり、ゲームコンテンツの具体的な実装とでもいいましょうか。

RPGでいえば、

「雑魚戦は基本1ターンで終わる。長くて3ターン」
「レベルが3上がると今まで苦戦していた敵が一撃で倒せるようになる」
「すべての行き止まりに宝箱を設置する」
「ダンジョン探索は15分を目安に風景を変化させる」
「ゲームの進行に伴い報酬として新しい要素が追加される」

とか、そういうアレです。
要は、このへんに十分気を配って設計してつくりこめば、目新しさのない平凡なRPGでもそこそこ面白いものにはなります(そのゲームをプレイしたくなるかはまた別の話ですが)。

しかし、たとえば「RPGツクールMV」で、なんのプラグインも導入せずに作る場合には大きな問題が生じます。
それは、戦闘があまりに遅すぎることです。

・「つまらなさ」を減らす
あるいは「マイナス」を取り除くとでもいいましょうか。
いかにレベルデザインがしっかりしていても、MVデフォの戦闘の遅さは致命的です。操作性もよくありません。
このあたりはプラグインを導入して解決することをオススメします。
また、戦闘の高速化は「つまらなさ」を取り除く作業であると同時に、「面白さ」を足す作業でもあるかもしれません。
遅いものよりは速いものの方が皆さん好きですよね?

閑話休題。
「本当は面白いのに、これのせいで台無しになってしまっている」
ゲームの完成度を高めるには、ただ面白くつくるだけでなく、そういったマイナス要素を取り除く必要もあります。

デバッグは特にわかりやすいですね。
バグを修正したからといってそのゲームが面白くなるわけではありません。
ですが、当然ながらバグを放置したままでいいわけがありません。
進行不能な致命的なバグがあればいくらゲームが面白くてもプレイヤーはクリアできません。
エラー落ちなどのバグが頻発すればやる気が失せてプレイを投げ出すこともあるでしょう。

ゆえに、デバッグは決して疎かにしてはならない作業です。

・操作深度を浅く「見せる」
以前に書いたUI設計に関しても、これによってゲームが面白くなるわけではありません。
ただ、疎かにした場合ゲームがつまらなくなるおそれがあります。
めんどくささが度重なって、不快感が面白さを上回ってしまうかもしれません。

その記事に書いておけばよかったのですが、操作深度を浅く「見せる」という技術についても紹介しましょう。

たとえば、こういうテレポート先の選択画面があったとします。
このゲームでは行きはよくても帰りに消費アイテムが必要になります。
つまり、誤って移動してしまうとちょっとめんどくさいわけです。

よって、次の確認メッセージを挟みます。

二つのパターンを用意しました。
どちらも操作深度としては同じです。
ですが、印象は違って見えるはずです。
前者の場合、キャンセルを押せばもう一度移動先の選択画面に戻るような気がします。
後者の場合、キャンセルを押すとマップ画面に戻りそうです。
なんとなく前者の方が操作深度が浅く「見える」のではないかと思います。

誤操作防止の確認メッセージもそうですが、このあたりに気を配ったからといってゲームそのものは別に面白くなるわけではありません。
ただ、「ゲームの面白さをプレイヤーに伝えるための障害が取り除かれる」という意味があるのではないかと思います。

・まとめ
で、この分類の意味は?
「それぞれの作業、それぞれの要素にどのような効果・意味があるかを意識する」ということです。
「これやっても別にゲームが面白くなるわけでもないよな……」という作業でも、「つまらなさ」を減らすことには役立っているかもしれません。

グラフィックや音楽、効果音も「面白さ」に直結します。
「キャラB」という単なる記号が仲間になるよりは、「可愛い女の子」が仲間になる方が楽しいに決まっています。

「つまらなさ」を減らす作業も大事です。
さらにいえば、「つまらなさ」を足さないということも。
「ウェイト演出の多用」などがまさにそれです。

デバッグ作業は代表的ですが、他人にプレイしてもらったフィードバッグなどは、「つまらなさ」を減らすという点では非常に有用です。
逆にいうと、他人の意見によって「面白さ」を足すのはあまり向いていません。
なぜなら、ゲームの面白さは企画段階でだいたい決まっているからです。

ざんこくですが、元の素材がよくないといくら磨いても(「つまらなさ」を取り除いても)ゲームは面白くはならないという話でもあります。

ゲーム制作は「面白く」つくるだけでなく、「つまらなさ」「不便さ」「めんどくささ」を排除する必要もある。
当たり前のことを言うようですが、今回いいたかったのはそういうことです。

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