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『殺戮学園の卒業式』反省会

殺戮学園の卒業式

完結しましたので例によってクソ長あとがきです。
需要は……なくはないと思うけど、まあ書きたいから書くくらいの精神で。
当然ながらネタバレ上等ですので、気になる方は本編を読了のち以下を読み進めてください。

・プロトタイプ

本作はもともと10年くらい前になんか漫画で描こうとしていた代物です。
当時はタイトルも『素敵な殺し合いをしよう』(略してステコロ)とかよくわかんない感じです。
要はタイトルもあやふやだったくらいで埋もれていました。
少し長いですが当時のネームがあるので全部貼ってしまいましょう。

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以上が第一話です。
大まかな構成は大体同じですね。
違いとしては細かな数値設定や、別に「卒業式」ではないこと、そして「図書館」が存在しないといったあたりでしょうか。

そうです、「図書館」はプロトタイプの段階では存在せず、新たに生えた勢力です。
プロトタイプの段階で別に完結までのプロットが組めていたわけではないので新たな勢力が生えるくらいはどうってことはありません。

ネームは二話まであります。

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ここまではほとんど同じ構成です。
違いとしては二ノ宮綾子の口調が違っていたり、鬼丸ありすが変な帽子被ってくるくらいです。
3P目、急に出てくる佐藤愛子なに?

ネーム自体はここまでですが、当時もざっくりとプロットやら設定やらはある程度考えていたみたいです。

過去

例えばこんな感じ。
2話までは大体同じですが、3話目からはほとんど完全に別物です。
というかこのプロットなに?? 切り裂き兄弟?? 粉塵爆発??
ですが初手で四天王最強の的場塞が動き出す、というおおまかな流れ自体は踏襲しているようです。

と、過去の遺産を掘り起こして切り貼りして本作は始まりました。
「なんか長い文章書きたいなあ」くらいの軽い気持ちで……。


・やりたかったこと

そのまんまですが、学園異能バトルロワイヤルですね。
どこに学園要素あるの??

ポイントの移動によるゲーム的な面白さもやりたかったですが、これは……どうかな~……。

異能バトルはもちろんなんですが、「銃」「数」「情報」の強さも描きたいと思いました。
「数」に関しては強さ描写の指標としてわかりやすいのもあってわりと覆されがちですが……。「森の九人」とかすごい雑魚扱いだし……。格闘漫画でデカいやつが噛ませになりがちなくらいこれは仕方ない……。

あとは最強キャラ同士の対決とか、決着の読みづらい対決とか。
ただ、やっぱこれ難しいんすよ。
「このキャラにはまだ役割があるから負けんやろ……」とか「ここでこいつ死ぬのはもったいないやろ……」とか、そういうメタ読みをそうそう覆せない。
下手に覆すことに躍起になってもそれで面白くなるかというとそういうわけではなく……。
なんやかんや期待通りの、読者が見たいものを見せた方がいい感じになるわけでして……。
このあたりの感情コントロール技術はまだまだ今後の課題といえるでしょう。

全体のルールとして課していたのは、「一度なんらかの衝突が起こったならなんらかの決着をつける」というもの。
適当な小競り合いで双方痛み分け、みたいなぬるい決着を見せられると「なにを見せられてたの……?」っていう虚無感があるので。
(ん? 2章の最初の方で羽犬塚が顔見せだけして逃げ帰ってない?)
(あいつはそういうやつだから……)

まあ、「ルールを課している」というのは要するにいかに脱法するかということです。
一章での二ノ宮VS的場とかはまさに脱法決着ですからね。
三章の二ノ宮VS煉獄もほぼほぼ脱法。
終章の二ノ宮VSヴァディムもそう。脱法ばっかしてんなこの女。

このへんは「決着」「死」がほぼほぼイコールで繋がれてしまうタイプの作品だと「戦い」を通してのキャラ立てが難しい、という問題でして。
新キャラを立てたければ主人公と戦わせるのがよい。
主人公は勝つ。相手は負ける。あれ、立てようとした新キャラ死ぬじゃん。という問題。

そういう意味だと弾弓はじめなんかもやや脱法ですね。
ボールを打ってきたやつは一応倒したけど、本当の敵はボールを送ってた方だった! という形でお茶を濁してます。

さて、やり損ねた要素、持て余した要素としては「食糧問題」
この手のバトロワものにはつきものなんですが……序盤でそれをやらないととってつけたような印象が出そうだなあ、というか扱うタイミングがないなあ、となあなあで済まされました。

あとは「裏切り」「内通者」要素も入れたかったかも。
羽犬塚が裏切り匂わせはしてたりしますが。

それからあれですね。
連載しながら書くというのがだいぶ性に合ってないことがわかりましたので、一気にぜんぶ書いてから公開する形にしました。
こうすることで最後まで書いたあとで序盤にそれっぽい伏線をねじ込むという所業も可能なわけです。


・一章:序盤から速度を出したかった


バトロワ系にありがちな、序盤の「なんでこんなことに……」「こんな殺し合い間違ってる!」パートは時間の無駄だと思ったので全カットできる設定に。
読者は残酷なのでさっさと殺し合いが観たいのです。観たいよね?
そんなわけで、登場人物全員殺し合いゲームが起こることは周知の上、殺し殺されも覚悟の上という形で始めました。

そんな感じで序盤から展開速度を上げるのを意識していたわけですが……改めて読むとそんなに速度あるかなあ。
2話で最初に人が死ぬ、3話で狂美襲撃、6話で四天王最強の的場が出てくる。9話で二ノ宮VS的場。うーん。
なんにせよ的場を序盤から出したのはよかったと思います。軸が定まるので。構成用語でいえば「第一ターニング・ポイント」とかそういうやつではないでしょうか。

一章でまずやらなければならなかったのは的場塞を中心に「異能の強さ」「情報の強さ」「数の強さ」を描くこと。
最終的には突然二ノ宮綾子が出てきて決着! ではありますが、「数」で囲んでボコボコにしてるあたりではそのあたりが描写できてたんではないかと思います。
的場の方も状況を打開できたのは弾弓はじめという「数」を確保していたところがありますからね。

ちなみにプロットはこんなん。
改めてみると雑すぎる。
え、というかほとんどなにも書いてないじゃんこれ。

さて、このプロットを見ると本編より話数が少ないことがわかると思います。
一通り四章まで書き終わったあとでねじ込まれた話があるからです。
「18.食糧事情」「23.的場塞④」がそれに該当します。

前者は片桐のキャラ立て補強(あとで死ぬので)と最終話への布石(後付け)です。
後者は主人公の活躍があまりになさすぎたためです。
桜佐武郎くんもね、なんやかんや強いんやで……? 負けるけど。

さて、一章においてミスった点としては……
時間としてギリギリ二ノ宮狂美の乱入があり得る、可能性を排除できてなかったってあたりですかね。
生徒会側としては「いつも通りなら一週間くらいは無力化できてるだろ」とは思ってたわけですが、読者はそんなことわからないので……。

卒業式しんじつは引っ張ってもしょうがないので一章ラストにサクッと開示しておきました。
デスゲームをやる理由といえば、娯楽目的だったり実験だったり政策だったりいろいろありますね。
それでなにか目新しくて合理的で面白いのないかなあとか考えて捻り出したのが「軍縮」なんですが、そんな大それたものかというと……うーむ……そこまで大したものでもないな……という感じなので出し惜しまずに明かしました。
大したものでなさ過ぎてしんじつを聞かされた生徒会の面々も「ふーん」みたいな態度で済ませてます。

そういえば本編中では説明の機会がありませんでしたが、有沢ミルが鬼丸の陰口みたいなの言ってたのは佐武郎に聞かせてたとかではなく素です。
そのうえ言ってる内容も自分の中にないでもない二ノ宮への叛意を鬼丸に投影してるやつです。エヴァか?
で、鬼丸ありすがその状況に乗じて利用したというのが真相です。


・二章:アホども大暴れ

ちなみにプロットはこんなん。
一章よりは書き込まれてます。

二章は……気の迷いとしか……。
二章に関してはいったん書き終わったあとで大幅な改稿があり、改稿前はそれこそダメダメだったそうな。
つまり、「剣持ジェイは元生徒会長」という設定は改稿後に生えてきたものです。
その軸がないと大島ざきりってマジで虚無災害やんけ!
もともと剣持ジェイが大物キャラだったみたいな設定がなかったせいもあって、それっぽいエピソードをねじ込む隙があまりなくて苦労してます。

大島ざきりとはなんだったのか。
ぶっちゃけると実験です。単なる「強さ」以外の指標で敵キャラにバリエーションを出せないかと思って「愚か」な敵を出してみました。
1000人もいる以上は全員が全員強キャラであるはずがない、みたいなリアリティ志向とかそんなんです。
これにより「備える」ことの重要性とか、異能バトルリテラシーのなんたるかを描こうかと。

また、一章では四天王の一人である的場塞を中心に話を動かしましたが、二章では四天王を変則的に動かしてみようかな、と。
羽犬塚しかり、魅々山しかり。
実のところ、片桐雫を殺すかどうかはわりと悩みました。
ここで殺すのはもったいないというか、別に死ぬ予定はなかったというか……(予定はなかったのでキャラ立てエピソードを一章にあとから生やした)(もったいないと思ったので三章で回想出演させた)

ただ、せっかくの四天王だし、やっぱ味方側での死者欲しいよなあとか、なんかそういうのでこうなりました。
また、ちょいちょい回想シーン入れてたのは鬼丸の方が死ぬんじゃないかというミスリードを意図していたりはします。

瀬良兵衛……こいつはその、なんていうか……。
たとえば、「魔王城に入るためには各地にある塔を攻略し結界を解かなければならない」とか目標が示されるとするじゃないですか。
そういう長期的な目標を示されると「だ、だる……」という感情に支配されることあるじゃないですか。
ゲームでなく、漫画であったとしても「魔王を倒すには四天王を一人ずつ倒して……」「たった一人でもこんだけ長くかかってたのに全員倒すまではどんだけかかるんだ……?」とか考えるとだるい気持ちになることあるじゃないですか。
ありますよね?

読者としてはもう気持ちが魔王戦に向かってるのにやらなきゃいけないタスクが詰まってると足止めされてるような感覚展開が遅いような感覚があるんじゃないか、と思っていて……。
そういうわけで、四天王の一人をサクッと倒しちゃってもいいんじゃないかって……。

ただこれ、作品全体の信頼を失いかねないだいぶ危ういやつだったと反省してます。
サクッと倒すにしても「一歩間違えば負けていた……」くらいの緊張感は欲しかったかもしれない……。
しかし、結果としては瞬殺なのに読者にそう思わせるような決着ってそれこそめちゃくちゃ難しいですわよね。

実は初期稿だとざきりの決着もダイジェスト殺だったんですよ。似たような考えで、「二ノ宮会長が出てきた時点で決着はもう見えてるやろ」「ちゃんと書くだけ(読者にとっては読むだけ)時間の無駄じゃね?」と。
でも下読み友人から「あっさりしすぎ」と指摘されちゃんと書きました。
展開自体は読めててもしっかり描写すれば読み応えのあるものになると信じて……。
ざきりの悪あがきがもう少し長引く案も考えたんですが、これもね……処理するのに時間がかかりすぎてもね……。
二章と三章の間に追加章でもあればできなくもなかったんですが……。

また、クマとかトラとか出てきたのは、出てきた瞬間強いことをアピールできて、かつ瞬殺でもガッカリ感のないやられ役として大型動物がちょうどよかったというだけです。
できればホントは「銃がちゃんと強い」みたいに「野生動物がちゃんと強い」みたいなのもやりたかったんですけど、本作はそういう話ではないというか、異能者が野生動物より弱くていいのか……?
動物の異能者はちょいちょい発生してる設定ですが、卒業されても困るので「生け捕りに失敗した」という体で処分されるのが普通です。
とらおに関してはなんらかの事情で生け捕りできてしまったのでしょう。
ロシアによる工作の疑いがあります。

Q.なんで学園に羆が?
A.北海道だから……

Q.北海道だとしても離島に羆はおらんやろ
A.虫みたいに……貨物に紛れ込んで……

Q.ホントはとらおみたいに転入生だったんじゃない?
A.そうかもしれません


・三章:現代兵器VS最強異能者

三章はだいぶやりたかったことの詰まった章です。
現代兵器VS最強異能者はプロトタイプの段階にもあるくらいですから。
要するに『寄生獣』9巻です。『寄生獣』9巻大好き!

なんとプロトタイプだとこの時点で星空煉獄は負けてるんですね。
「星空煉獄は生まれてはじめて死んだ」なんてかっこいい(?)文言で。
と、元はそういう予定だったこともあってだいぶ勝敗の読みづらい戦いになっていたのではないかと思います。
ここまでさんざん「銃の強さ」を描いてるのも効いてくることでしょう。

ここで煉獄死んでんならそのあとどうなるの? 市瀬は生き残るの? などと疑問がわきますが、なんとその後のストーリーはプロットがスカスカでよくわかりません
つまりそれくらい現代兵器VS最強異能者がやりたかったというわけでしょう。
その後のことをなにも考えてないくらい……。

じゃあなんで正式版では煉獄が勝ってるかというと、学園の運営って軍によるものじゃないですか。軍に異能者の戦術的価値が見出されてるわけじゃないですか。
現代兵器で武装したくらいでふつうに負ける異能者に価値なくね??
とか思って星空煉獄が勝つ方向になりました。

星空煉獄といえば、一章二章でちょいちょい名前を出しつつ姿を見せず、三章で満を持して

 ――星空煉獄(三年) メテオ 1024Pt――

ってのもやりたかったやつですね。戦闘力とかポイントとか、こういうのを導入する以上「私の戦闘力は53万です」の亜種がやりたくなってしまうのは仕方のないこと。
さすがに引っ張りすぎて(あ、星空煉獄のポイント四桁以上あるな)とは読者も察しがついてしまったかもしれません。

初登場はもう少し派手にしたかったんだけど、ここでいきなり100人くらい殺しちゃうのもやりすぎかな~とか理性が働いてしまった……。
そういのもあって「さんざん引っ張ったわりにはそれほどでもなくね?」という印象になってしまったのは難しいところ。
ちなみに星空煉獄の異能がシンプルな〈念動〉になったのは、『羅小黒戦記』を観たからです。
まあプロトタイプでも煉獄の異能は大体似たようなもんです。

魅々山迷杜は……なんかちょっとあまりに「こうなるべくしてこうなった」すぎるかなあ、というのが反省点。
掘り下げが弱すぎたというか、お話の中で浮いてたというか。
そんなわけで、二章と三章と間にもう一章(つまり今の三章が四章になる)が必要だったんじゃないかな~、という気がしています。
キャラ立てが弱い、エピソードの不足してるキャラが結構いるので、そういうのを補強する章です。

それに、読者も思ったかもしれません。
「学園ものならふつうは出すだろ!」っていう成分が本作には不足していることを。
つまりは「番長」です。不良でもいいですが。
この学園における不良ってなに?

あとは相撲部とか。相撲なので絶対強い。
名前だけはちょいちょい出してた「部活動連合」を掘り下げてもいいし。
羽犬塚が戦うとふつうに強かったり、魅々山迷杜のエピソードを生やしたり、有沢ミルもやるときはやったり。
瀬良兵衛だって復権したりしてね。

そういうのを全部合わせて一章ぶん……になるのだろうか。
問題としてはその話で「止まっている」感が出てしまわないかということ。
ぶっちゃけなくても成立する話ですからね。それをいうと大島ざきりも……。
あ、もしこの追加章があるならざきりの復権にも繋がるかもしれないです。ならないかも。

あ、プロット

・終章:勝利条件から探らねばならない戦い

プロットはこちら。

開幕回想シーン!
章はじめはなんか回想シーン入れやすいポイントです。体感。
読者としては続きが気になってしまうかもしれませんが……佐武郎がここに至るまでの回想は入れておかないとオチまで話が繋がらない……!
あんまり丁寧にしすぎてもダレそうだけど、かといってダイジェストで省くのも難しい……。
そんなこんなで具体的なエピソードを一つ、「学園に来るまでにも実戦経験があった」ことを示すためにテロリストと戦わせたりしました。

また、佐武郎は〈聴心〉対策の訓練をしていたということはかつての仲間に〈聴心〉の異能者がいたんだろうなとか、〈呪縛〉にやたら詳しかったことからなんか関わったことがあるんだろうなとか、そういうこれまでの描写を拾ってパズルを組み立てました。
もちろん、はじめから考えてそういう描写を入れてたわけじゃありません
後付けです。

ぶっちゃけていうと、佐武郎の正体とか異能とか全然考えてませんでした「主人公にふさわしい異能ってなに?」ってのが思いつかなかったためです。
え、じゃあプロトタイプの段階だとどうなってたの?!
〈英雄〉とかなんかそんなん。「なにがあっても運よく死なない異能」
わりと主人公にふさわしい気がしますね。
じゃあリッシュなに? こいつはプロトタイプからいたの?
いました。
じゃあ正体は?
さあ……。
とりあえず、傍目にはなんの異能を持ってるかわからない、わりと終盤で異能の正体が明かされるというプロット自体はプロトタイプ譲りです。

で、佐武郎の異能は〈始原〉ということに。
これいつごろ決まったんだったか……三章書いてるときくらいかしら……。
伏線と呼べるような伏線は、佐武郎がどんな状況でも異能を使おうとしないこと。
つまり「実戦にはなんの役にも立たない異能」だという伏線です。
あるいは、「異能者のふりをしてる人間」とかそれこそ主人公にふさわしい設定案もありましたが、異能者とただの人間の身体能力はめちゃくちゃかけ離れているという設定なので異能者のふりをするのはほぼほぼ不可能です。

あ、佐武郎の正体は不明といっても外見が若いだけのおっさんという設定そのものは最初から決まってました。
どういう理屈で若くなってるかが決まってなかっただけで……。
当初はめちゃくちゃ童顔なだけとかだったか……。

回想編はロシアが舞台ですが、ロシアっぽさの描写とか全然わからん……参考までにロシアが舞台になった映画や小説とかロシア関連の書籍をちょいちょいつまみ食いしましたが、まあにわか知識……。姓が男女で異なることすら知らん始末。
なんでロシア? ってのも別に大した意味はありません。
日本に近い外国ならどこでもよかった。それをいえば日本である意味も別にないですからね。

さて、回想が終わりここから本編。
イメージとして、『胎界主』でいえば三章が「生体金庫」で終章が「胎界主ピュア」です。
派手さや戦闘の苛烈さ、死者数では三章。状況の複雑さでは終章という感じ。
「ポイント」という指標が失われてそれぞれの勢力がそれぞれの思惑で動き始める章です。

それぞれの勢力の思惑やら動きやらを整理するのが大変な章でした。
読んでるぶんにはそこまで複雑には感じないかもしれませんが……ここでこいつらが合流して……ここでこいつらがすれ違って……などの調整がいろいろ入ってます。
困ったのは煉獄&羽犬塚と佐武郎が出会ったあとのシーン。
このあとヴァディムが乱入して散り散りになるわけですが、ヴァディムを殺さずに煉獄をその場から離脱(佐武郎と別れさせる)にはどうすればいいかなあとかプロットの段階ではよくわかってませんでした。
よくわからないまま書いてたら羽犬塚が瀕死の重傷を負ったので「ああそうか、羽犬塚を助けるために煉獄は生徒会まで駆け込むのか」とわかりました。
行き当たりばったりです。

最終章だけあってそれぞれのキャラにそれなりの「決着」も必要かなあというのも悩みました。
特になんもなしにスルーされてるキャラも大勢いますが、たとえば佐藤愛子と有沢ミル。
「それなりに活躍したのにフェードアウトでいいんか?」というのがあってわちゃわちゃしました。
有沢が剣持を殺せてなかったというのはポイントの不一致が伏線。
なのに他でポイント関連のミスがあって読者を混乱させてしまう(カルマ-2)

スタート時点では「こんな殺し合い間違ってる!」とかいう展開って時間の無駄だよね、つまんないよね、というところから始まった設定ですが、冷静に考えてこんな殺し合い間違ってるので、最終的にはそんな感じの話になりました。
(別にその展開がわるいってわけではないですが、それを避けたかったら『ゆうえんち』みたいに賞金目当てで集まってるみたいな設定にした方がよかったかな)
有沢が剣持殺せてなくて感情的になったり、ってあたりもその布石。
二章からじょじょに「こんな殺し合い間違ってる」ポイントは積み重なってます。

ただ、本作では常々思っていた「デスゲームのGMキャラつまらん問題」のため「GMキャラの顔を出さない」という隠しルールも適用していいました。
「こんな殺し合い間違ってる!」
展開に移行した際、どう決着をつけたものか……というのも悩んだものです。
そもそも国家政策なのでGMキャラ倒せば終了、ってわけにはいきませんからね。

まだまだあるぞ、最終章で悩んだ問題。
つまりは新キャラです。
終章なんだから新キャラを出してる余裕はない、新キャラ出したところで活躍させる時間はない、かといって新キャラが出てこないのもつまんなくない? 「状況が一変した」ことを示す新キャラ欲しくない?
とか考えて捻り出されたのが坂本タカシです。
「日本側のスパイもいるだろうなあ」と前々から伏線は張ってましたが、満を持して登場。
ただ、ここまで大きな動きもなく潜伏してた以上、顔は出すけど大きな動きは見せずに退場、というのも通るかしら……という目論見のキャラ。
星空煉獄がポイントの桁で「お!」と思わせるキャラなら、坂本タカシは所属組織の方で「お!」と思わせることを意図しました。

新キャラといえば……。
ボツになったというか、やろうと思ったけどちょっと処理しきれないなあと思ったアイデアに、三章における中国軍の生き残りキャラを出す案もありました。
あれだけ大勢いたんだから一人二人生き残りもいてもいいし、市瀬の〈思操〉が解けたあとだと右も左もわからない一般人なので、学園に放り込むと面白いキャラになりそうかな、と。
また、佐武郎と鬼丸が手を繋いで〈始原〉による異能発現が成体にも有効、というのを示すキャラとしてもうってつけだな、と(動物だけだと弱い)。
こいつを放り込むと話がさらに複雑でややこしくなるわけですが……いろいろ面白くはなりそうな気がしたのですが……ううむ……。
なんかねじ込む隙がなかったというか、まあ無理やり広げることもできた気もしますが……いた方がいいけどいなくても成立する……。
完全に終わった話と思っていた残滓が転がっていた、って展開自体は好きなんですけどもね……ぐむむ……。

ちょっと失敗した気がするのが図書館
あんまり長々と尺を割いてもしょうがないけどあんまりあっさりやられても「なんだったんだこいつら?」になりそうとか考えてましたが、もう少し尺を割いたり切り札持たせるべきだった気がしますね!

ちなみに最後のオチですが、第一稿だと二ノ宮がヴァディムを無限に殺し続けるというオチでした。
下読み友人曰く「後味悪すぎるやろ!」というわけで、ヴァディムは〈不死〉を完全に取り込み切れてなかったので狂美が復活した、というさわやか味になりました。
ヴァディムくんが死んでんねんで!


・キャラクター評

全体として気を付けたことはキャラクターの覚えやすさです。
基本は、話の筋を複雑にしすぎず登場させる数を制限すること。

あとは小手先です。
名前や肩書に特徴、外見に特徴、口癖に特徴……。
小説において外見の特徴はそこそこ重要で、たとえば「眼鏡が光った」とか書いておけば「眼鏡キャラ」という印象を持たせられます。
名前は覚えられなくても「あの眼鏡ね」と覚えてもらえれば十分なわけです。

名前も異能と一致させると覚えやすいよね、というわけで、異能を予測して名前をつけている(こともある)という設定をねじ込んだり。
かといってそういう設定にしてしまうと「名前で異能バレるやんけ!」という問題もあったりなので全員に異能モチーフの名前つけるのも……という中途半端さ。
一方、視村研心とかは「覚えやすさ」の究極なんですが、図書館に入ってるやつは「名前で異能バレてしまってるやんけ!」というディスアドを背負ってしまって殺し合いにやる気をなくした連中が多い、ということにしておきます。

口癖はキャラ識別に重要です。
なので、文頭に「あはっ」とか「うむ」とかつけるキャラがちょいちょいいるわけです。話し終わりの語尾よりは話し初めに誰だかわかった方がよい。
これも不自然にならないくらいのギリギリを狙ってますが、まあ別に不自然になってもキャラ識別という代えがたい効果があるのでたぶん重要なやつだと思います。

・桜佐武郎

桜佐武郎

〈始原〉の異能者。実年齢は推定33歳。外見年齢は17歳。日本人のような見た目だが、国籍は不明。169cm。

「こいつ主人公としてはキャラ弱くない?」疑惑がある。
戦闘能力も強いのか弱いのかよくわからんキャラ……こいつを主人公にしたの失敗だったのでは……?(なんてこというの)
と、いうわけにもいかないので「こいつなに考えて生きてんの」「こいつなんのために生きてんの」とあれこれ考えましたが、要は「リッシュの前でかっこつけたいだけ」なんですね。
ただ、もちろん見栄とかではなくて、リッシュを安心させるため。
「なにもかもお見通しで上手いこといってるから心配するな」という態度をとろうとする。実際には行き当たりばったりで状況に流されて生きてます

四六時中リッシュに憑依されてるわけですからそういう嘘がどんどんうまくなっていく……と思いきや、リッシュの方も四六時中見てるので赤の女王めいた状態です。


・リッシュ

リッシュ

〈憑依〉の異能者。
肉体のない生活ってどんな感じ?!
というのがまったくわかんなくて扱いに困ったキャラ。
本作は群像劇っぽいのでいろんなキャラの視点から心情描写がされますが、リッシュ視点の描写は全編を通してなかったはず。
だって生まれながらに肉体を持たない人間の心なんて全然わかんないよ……!

で、佐武郎の解釈としては唯一のコミュニケーション相手である佐武郎の「言葉」にかなり大きく依存してるのではないか、と考えます。
下手に褒めた結果として遠くへ行こうとした(死にかけた?)のが佐武郎にとってはトラウマで扱いにはだいぶ困ってる様子。

佐武郎が強がってるだけのアホなのはぜんぶわかってます。


・二ノ宮綾子

二ノ宮綾子

〈不死〉の異能者。三年(一年留年)。180cm。

学園舞台……生徒会長……なにも起こらないはずがなく……。
「どこが学園ものだよ」という本作ですが、学園モチーフである以上はクソつよ生徒会長を出さずにはいられないというもの。
プロトタイプの時点でこのビジュアル。どこかで会いませんでしたか?

〈不死〉の異能持ってるからそれなりの強キャラと戦ったら噛ませにされるんだろうなあ、だって死んでも死なないから便利だよね~、みたいなメタ読みをしてもらおうかと思ってたけど、ふつうに強すぎて負ける姿が想像できなかったかもしれない。

実は一年留年してたり、かつてロシアに留学した経験があったり、掘れそうなエピソードが多い。


・鬼丸ありす

鬼丸ありす

〈増幅〉の異能者。中学時の転入生。三年。152cm。

ヒロインかもしれない。そうかな……そうかも……。
初登場時くらいに雑魚をサクッと首を捻って殺してたりして佐武郎に引かれてましたが、これは「そろそろだれか殺さんと……」みたいな焦りから来てたもの。
学園に適応しようと自分を偽り続けて、そのために「ためらわずに殺せる」という場面が欲しかったため。

というのは後付けです。
中学から転入してきて感性や倫理観は一般社会寄り、というのは後付けです。
そういうキャラが欲しいなあ、こいつでいいや、となりました。


・片桐雫

片桐雫

〈聴心〉の異能者。三年。166cm。

死なんでもよかった気がするけど結果として死んだほうがよかったキャラ。
本作では佐武郎をはじめ、鬼丸もそうですが、自分を偽っていたりなにかを演じてたりするキャラが多いのでそのメタキャラ。
鬼丸に関してはざっくり剥がされました。
というかこいつの趣味がそういう人の「演じてる」表層を剥がすこと。

演じているといえば二ノ宮綾子も「最強の存在」を演じてたりするわけですが、彼女は心の底からそれを信じ切っているため片桐は二ノ宮会長のことちょっと苦手。


・有沢ミル

有沢ミル

〈跳躍〉の異能者。三年。175cm。

こいつは……なに?!
初期設定だと低身長だったけど「背の高い金髪ツインテいいよね……」と思って背が高くなった。
ぶっちゃけなんも考えずに出したキャラ。
アホの子っぽいけどざきりよりはさすがにマシ。
ざきりと比べられてる時点でダメ。

実は生徒会では最古参の一人。二ノ宮は簒奪者なので二ノ宮より長い。


・西山彰久

西山彰久

〈分身〉の異能者。三年。157cm。

有沢ミルと同じくなんも考えずに出したキャラ。もう少し考えて?
コンセプトとしては控えめながらもややキレ者というか参謀キャラというか。
鬼丸が離脱し、片桐が死亡したので結果としてナンバー2くらいに。

〈分身〉という異能のせいもあってか、あらゆる状況を他人事のように考える癖がある。
有沢と同じく生徒会最古参で剣持にも思い入れがあったはずだが、有沢ほど取り乱してはいない。
学園の卒業式に最も、そして最後まで順応していたキャラかもしれない。


・火熾エイラ

火熾

〈発火〉の異能者。二年。152cm。

「異能ってなにができるの? 火とか熾せるぜ!」というチュートリアルキャラ。
その時点で役割は終わってたので的場と出会ったとき死んでてもおかしくなかった。
その後、〈神性〉で暴走し仲間を殺したり右手を吹き飛ばされたりひどい目に会うが、生き残ってしまったので仕方ない。


・佐藤愛子

佐藤愛子

〈治癒〉の異能者。一年。146cm。

面白いビジュアルの治癒能力が欲しいなあと思って異能ありきで生まれたキャラ。小説なのにビジュアル?
その人格も「怪我人を見ると治さずにはいられない」性分。
平和な世なら医療技術の発展とかにめちゃくちゃ貢献しそうなので、彼女もまた「こんな殺し合い間違ってるぜ!」ポイント要員となっている。


・星空煉獄

星空煉獄a

〈念動〉の異能者。三年。181cm。

「最強キャラ……出したい!」という思いから生まれたキャラ。
もともとは順当に傲岸不遜な感じで考えてたけど、もう一捻り欲しいなあとか考えて可愛い感じの人格に。
前評判でさんざん強い強いと囁かれてたのに登場した直後には「これ負けるのでは?」とかほざいてる。カフェイン中毒者。

ちなみに彼が大量のポイントを持ってるのはだいたい平塚雷獣サンダーのせい。
平塚雷獣がそもそも600Ptくらい持ってたんじゃないかな……。その部下のサンダー構成員もだいぶ持ってた。
それに単身でいきなり挑んだのは煉獄なんですが……。
当時はふつうに傲慢で「楽勝やろ」くらい軽い気持ちで挑んだらめちゃくちゃ苦戦して死にかけて反省したので仲間を集めてチームを組んで、卒業式も序盤は様子見かな……という方針に。

平塚雷獣も回想シーンで名前だけ出てきて死んでるキャラ(『トリコ』でいえばデスゴール)ですが、たびたび言及することで「実はめちゃくちゃ強かったのでは?」みたいなことにしたかったキャラです。


・的場塞

的場塞

〈剛体〉の異能者。三年。191cm。

作品の印象を決定する序盤のボスという大役を任されたキャラ。
「ほとんど無敵」ともいえる異能を持つため大胆な行動に出るが、一方で「一瞬の油断で死ぬこともあるのでは?」という恐れから努めて慎重であろうとしている。
と、傲慢さと慎重であろうとする謙虚さの間で揺れている、というか「俺はこんな異能を持ってても慎重さを忘れてないぜ」というのが慢心の裏づけにもなってたりする(そのプライドの高さは佐武郎にも指摘されている)。

そんなこんなで「生徒会の罠かもしれないな~」と思いつつもそのまま突撃する判断になってしまってああなった。


・羽犬塚明

羽犬塚明

〈探知〉の異能者。三年。172cm。

メテオを動かしやすくするための索敵系異能者、というのがまずありきのキャラ。
索敵系異能でも異例なほど広範囲をカバーできるため、「チャンスはいつでも拾える」という発想のもと動きは消極的で、想定外の事態からはすぐに撤退する。
そういうわけで戦うことは少ないが、〈探知〉の異能は近~中距離でも「死角がない」という強みがあるため、ふつうに戦ってもかなり強い。
たとえば三章で市瀬に会いに行ったとき十数人からAKを向けられていたが、一斉射撃されたとしても問題なく避けてた。
銃口の向きとトリガーにかかる指先が見えれば避けられるとかいう漫画みたいな理屈を異能で実現できるため。

まあでも、二ノ宮綾子あたりとエンカウントしたら死ぬ。


・魅々山迷杜

魅々山迷杜

〈隔世〉の異能者。三年。177cm。

時計塔内にいるときと外に出る時では眼帯の向きが逆だって気づいたかな?!
どっちがどっちだっけ?(本文を読む)
「左目」
の方が異能発動条件ですね! つまり上の絵はおうちスタイル。
異能が誤爆しないようにふだんは左目に眼帯をしてます。

こいつも「軽薄な人格を演じてる」って設定があるわけですが、それというのも片桐に語った「聞いて。私は私の異能に自覚がなかったから、最初の発動は友達と話してるときだったの。手探りで、相手を殺さないと出られないってわかった。悲しい物語なの」というのが、ガチだったから。

軽薄さを装うことでしかこの体験に折り合いがつけられなくなったというわけです。悲しい物語です。


・瀬良兵衛

瀬良兵衛

〈停止〉の異能者。三年。168cm。

「なんでこんなやつがメテオにいるの?」というのもメテオ結成秘話で明かされる通り。たまたまです。
自分の世界にひきこもって自分ルールで生きてるので、あんな有様になりました。
自らの異能の弱点を理解してそれを克服しようという発想まではよかったんですが……。


・長谷川傑

長谷川傑

〈障壁〉の異能者。三年(ただし六年留年)。168cm。

この手の殺し合いゲームだと生存重視でポイント稼がないやつも出てくるだろうな……という発想で生まれたキャラ。
ただ、大人しくしてるだけで生き残れるような温いルールではないはずなので、防御系の異能や情報収集に精を出して状況をコントロールして生き延びてるめんどくさい勢力という位置づけに。

彼自身は9年前(初めての卒業式前)に出会ったアンナといちゃいちゃするからもう外には出なくていいな……となってる。
佐武郎に対して「見えない筋肉」論を語ったのはアンナの受け売りで、外界から隔離せざるをえないアンナと他者との疑似的なコミュニケーションを意図したもの。
「例の見えない筋肉論を佐武郎に話して聞かせてたけど、こんな反応してたよ」という話のタネにしたかった、というわけですね。
その意味で、佐武郎とリッシュの関係に近い
違いとしては、長谷川とアンナは子供も設けているほどすっかり熟年夫婦だということです。


・樋上董哉

樋上

〈契約〉の異能者。三年。185cm。

生存重視の図書館とはいえ、ほとんどの生徒が卒業を目指すのが学園ですので、それだけでは人材不足になりかねません。
そんなわけで客人みたいな立場で「卒業を目的にしているが図書館に籍を置く」生徒がたまにいます。
樋上がその立場です。

最終的に彼は長谷川の後を追うように自死しますが……あれこれ考えて「どうせ殺されるだろう」とか考えた結果の判断だったのか、あるいは長谷川に絆されて「なにか」のために戦いたくなったのか……。


・市瀬拓

市瀬拓

〈思操〉の異能者。三年。転入生。167cm。

かわいそう。
こいつもあれですね、「かっこつけ」キャラですね。対象は妹の立花。
ただ、かっこつけの方向性が致命的にダサい問題がありますが……。
「バベル」とか「プロメテウス」とかなんなんだよ
まあ、「かっこつけ」てた、という点では主人公の佐武郎とも対比になるキャラだと思います。

一人称「私」だったり「うむ」という口癖だったりは、彼にとっての「かっこよさ」のモデルである父親の真似です。
また、「くはははは!」とか笑いだすのは網谷の影響です。
他人から影響されやすい人なんですね。


・市瀬立花

市瀬立花

〈収容〉の異能者。二年。転入生。158cm。

「影薄いけど最後の方に出てきて印象的な爆弾を落とせればいいな」というキャラ。
というのも、彼女を登場させて活躍させるタイミングがいまいちなかったからですね。
だったら、あえて登場回数を減らすことで効果的な演出にならないかなあとか思ってたけど上手くいったかは知らない。

だいたいそうなんですが、「かっこつけ」キャラはその対象となってる人物にそのへん見抜かれてます。
彼女も内心兄のことを「頑張ってるけどダサいな~」って思ってました。


・網谷葵

画像30

〈慧眼〉の異能者。三年(二年留年)。170cm。

ぶっちゃけると魅々山のやられ役につくったキャラ。
それだけだとアレなので、元図書館のメンバーとかエピソードを生やしました。異能も図書館っぽかったし。
ところで、「元○○」って設定を付与するといい感じにエピソードが生えるのでいいですね。

うーむ……こいつはそこまで面白いキャラにならなかった気がする……。
〈聴心〉と同じく、仮面をかぶって「演じてる」キャラに対するメタ能力持ちだったりはするんですけどね。


・大島ざきり

ざきり

〈神性〉の異能者。一年。149cm。

馬鹿だけど災害みたいなキャラ、を出したかった。
異能そのものはめちゃくちゃ強い。うまく使ってたら星空煉獄も倒せてた生徒会も倒せてた。でもざきりはざきりだったのだ……。

洗脳系異能者って扱いが難しいですわね……よりによってこいつに洗脳されたら格が下がるし……洗脳された相手は殺すしかない、とかになると迂闊に洗脳させられない……。
と、最近『ブリーチ』の千年血戦篇読んだら洗脳能力が強いこと強いこと。
日番谷隊長とか、洗脳(正確にはゾンビ化)されても「まあ日番谷隊長だしな……」というほどよい格でありながら敵に回ったらそれなりに厄介、というのは巧い立ち位置ですよね。
それこそ本作だったら有沢ミルあたりは洗脳されてもよかったのでは?!
でもなー、洗脳はなー、処理が長くなるという問題もなー。


・剣持ジェイ

剣持

〈単剣〉の異能者。三年。185cm。

本編中に〈単剣〉という異能の名前は未登場。ダサいから。
なんかかっこいい名前が思いつけば上書きしよう。

さて、彼もまた「演じていた」キャラです。
「守護者」「英雄」を演じ、生徒会を運営し学園に秩序をもたらそうとしました。
なんでそんなことをしてたかって、要は安寧の地位が欲しかったからだったのかもしれません。当時は平塚雷獣とサンダーの暴虐がやばかったので。
ただ、人一倍責任感はあったので一度演じた以上は最後まで演じ切ろうと頑張ります。
ざきり堕ちしてしまったのも「彼女を助けたかった」という優しさのせいです。

ちなみに彼の異能の射程は32m。
これは星空煉獄の射程外からギリギリ戦える長さです。
ので、煉獄に対しても「注意を引く」くらいの立ち振る舞いはできる程度の実力者です。
本編中ではさっくり死んでしまいますが、これはざきりの洗脳によって彼の持つ強みであった「慎重さ」が失われた結果でしょう。
なんもかんもざきりが悪い。


・二ノ宮狂美

二ノ宮狂美

〈不死〉の異能者。二年。175cm。

「ルールとかしらねー!」で暴走するキャラ欲しいよね、というのが根幹の発想だけど、姉に言い聞かされているのでわりとルールは守ってる。セオリーは無視。
あとは「異能が被ることもある」ことを示したキャラでもある。

状況をかき回してぶっ壊すみたいなキャラにしたかったけど、いうほどできてないかな……!
防御を上からぶっ壊す描写は好き。

そういやなんでこいつは生徒会に入ってないの? 姉と遊びたいから?
精神年齢が低いので特性を理解していれば扱いやすいといわれている。
その狂気は人為的に生み出されたものであるという説がある。
よくも悪くも「演じない」ので、姉の綾子はその奔放さにある種の憧れを抱いていたという噂がある。

黙ってれば美人。姉が姉なので。

・イリーナ・イリューヒナ

イリーナ

〈白楔〉の異能者。三年。留学生。181cm。

ラスボス。
なんだけど、キャラの格としてどうだったか……。
冷酷なマシーンみたいなイメージで、必要最低限の言葉しか話さない。
「強い」というよりは「怖い」を目指していましたが……。むずかしいね。

終章では、彼女視点で見るとやることが多すぎてホント大変。
「命は惜しくない」と考えてるので潜入目標は三分の一くらいは達成……?
ヴァディムのことはかなり買っていたので、彼を失ったことは大きな損失だった。

彼女にもそれらしいエピソードは考えていたりしたけど、彼女に感情移入させてもしょうがないのでカット。
佐武郎の推測通り、父親であるミハイルの英才教育でこのような人格に育ったが、決してそこに愛情がなかったわけではなく……とかなんとか。


・ヴァディム・ガーリン

ヴァディム

〈奪食〉の異能者。三年。留学生。192cm。

異能複数持ちのルール違反野郎は異能バトルものならお約束の一つだよね、と思って出しました。
他にもお約束といえば「異能無効化」もそうだけど、こっちは出すタイミングがなかった……。

とにかく、一人で複数の異能を持ってるので扱いが大変。
持ってる異能一覧はこちら。

〈大食〉:いっぱい食べられる(ロシアで最初に食った)
〈睡手〉:手を目の前に翳すことで眠らせる(ロシアで食った)
〈断空〉:手刀の動作で空間を斬り裂く(ロシアで食った)
〈泡沫〉:防御系。高速度に反応し付着する複数の泡を形成し、泡に触れたものは速度を失う(ロシアで食った)
〈縛眼〉:目の合った相手の動きを止める(日本で食った)
〈追憶〉:手で相手の頭部を掴むことで記憶を得る(日本で食った)
〈不死〉:死亡しても48時間後に復活する(日本で食った)

〈大食〉なんてこいつ以外に誰が欲しがるの?! みたいな異能ですが、実のところそういうなんの役に立つかわからない異能というのはゴロゴロいる、という設定です。
本編中には出しづらいのでほとんど出てきませんが……。

また、「〈大食〉なんて都合のいい異能をよく最初に食べられたね?」問題も、ロシア側が工作で支援していた疑いがあります。
異能を複数持てるというヴァディムの異能はかなり有望視されていました。
日本へ留学したのも、「日本で〈不死〉の異能を奪えれば最強じゃね」、という目論見がありました。
また、「結構リスクありそうなのに思い切ったことしたね?」と思うかもしれませんが、留学生は0Ptスタートなので標的になりづらく、ふつうに生きて帰るケースがほとんどです。彼が死んだのは不幸でした。

複数の異能を持っているため「異能は一人一種」に慣れた実力者ほど初見殺しの凶悪さですが、図書館にはぜんぶの異能がバレていたり、食いたての異能に翻弄されて星空煉獄を倒せなかったり、さんざんです。

ちなみに図書館の持つ〈能識〉では、〈奪食〉がわかるだけで、〈奪食〉でどんな異能を奪ってきたかではわかりませんでした。
よって、〈断空〉や〈睡手〉のことを初めて知ったのも狂美に使ったときです。
〈泡沫〉は二ノ宮綾子をけしかけて知りました。
〈縛眼〉と〈追憶〉は彼が食べたと思しき異能者の情報を持ってたので知ってました。


・坂本タカシ

坂本タカシ

突然出てきて死ぬほど胡散臭いキャラが出したかった……。

佐武郎に対して「なんのために戦うのか?」を突きつける重要人物です。
こいつの誘いに乗ってたらロシアでGRUに拾われてたときと二の舞ですからね。
単に生き延びるだけを目的にするなら誘いに乗るのが得策、いろいろ不満はでるだろうけどそれでも……みたいな立場でダラダラできる。
でもそれじゃあかんやろ、とようやく佐武郎は主人公らしい決意をするわけです。

こいつも西山彰久の〈分身〉みたいに「命が軽い」異能を持ってますので、なにごとに対してもよくいえば客観的、悪くいえば他人事みたいな態度で生きてます。


・イワン・ドヴォルグ

勘のいい読者だと出てきた瞬間「こいつ死ぬな……」と分かってしまったかもしれないキャラ。
異能者といえど人格や使い方次第では人を助けるのに使える、ということを佐武郎に刻みつけるためのキャラです。

・遠山殺貴

ランキング

ランキングやらポイントやら書いてて混乱しますので整理のためスプレットシートをつくってたわけですが、そのとき気づいたんです。
6位くらいに空白があるな、と。
そんなわけでそれなりの強キャラをねじ込める隙があると出てきたのがこいつ。

け、決して弱いわけでは……瞬殺されたけど……。
瞬殺はされたけど「運が悪かっただけ」とか「相手が上手だった」とか決して弱くはないんだよ、という印象を持たせられないものか、とか考えましたがまあ難しいですね。
瞬殺なので戦いにどういう思惑があったのかとか書く尺もない。

擁護のためにここで書いておきましょう。
彼女視点では、イリーナはまず肩を撃つ慎重さを見せたので、次は自分の非急所を撃って様子を見るだろう、そのあとは随時〈代傷〉を切り替えて翻弄して倒すか、というプランができてました。
ただ、次の手でイリーナが躊躇せずに頭部を撃ち抜いたので負けました。
ふつうに考えて、イリーナ視点では〈代傷〉の特性を判断するための情報は欠けてました。
いきなり頭を撃ち抜くのはそうそうできることではない……と遠山殺貴は考えていたわけですが……うーむ、この学園においては甘いかもしれませんね……。

ちなみに図書館についてたのは〈代傷〉の能力がぜんぶバレてたので、それを口外しない代わりに防衛戦力として協力するという〈契約〉によるもの。
能力特性が隠されているときに最大の効果を発揮する異能ですからね。
使い方次第では煉獄も倒せる異能です。
学園内では市瀬、二ノ宮のほかに星空煉獄を本気で倒せると考えていた生徒の一人です。
ただ、図書館を通じて市瀬が動くことは聞いていたので様子見してました。

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