探索RPG『Fanastasis』――死と狂気に蝕まれ荒廃した王国を巡り、記憶と心を取り戻せ
https://www.freem.ne.jp/win/game/21044
※2023/10/08追記 製品版が発売されました!
長らくβ版として公開されていた『Fanastasis』ですが、ついに2020年11月10日ver1.00として正式版が公開されました。
どういうゲームなのか?
フリーゲームに詳しい人には「ネフェイスト系」で伝わるでしょう。
荒廃した世界。断片的に残された手記や思念。隠された通路や部屋。繋がっていく快感。
それらの要素の完成度が極限まで高められた、探索重視のRPGです。
死臭にまみれた遺跡。過去に行われた非道な人体実験。魔物と化してしまった人々。悪魔取引の痕跡。
生存者の気配はほとんどなく、ただ残留思念だけが残され、いわば考古学めいた趣があります。
仲間キャラクターは全員が非業の死を遂げ「スピリット」となったものたちです。
主人公もまた死者――すなわちスピリットであり、復活のためには失われた「記憶」を集める必要があると告げられます。
誰も彼もが死んでしまった「カノン王国」――いったいなにがあったのでしょう。
導入――さっそく隠し部屋だ!
ゲームを開始すると、プレイヤーはなにか魔法のような演出で「牢獄の間」に召喚されます。
この時点ですでに操作可能となりますが、これ見よがしに女性が立っています。話しかけましょう。
話の内容はよくわかりませんが、とにかく「冒険に出よう」ということです。
本作はRPG、それも探索要素に重きを置いたRPGです。
さっそく「イシュトールの海岸洞窟」に向かいましょう。
おや? 右になにか怪しい窪みがありませんか?
ありました。隠し部屋です。
本作にはこのような隠し部屋や隠し通路が死ぬほどあります。
なにかある――そう思ったらだいたいあると思ってよいでしょう。
そして、「なにかある」と思わせるレベルデザインが絶妙に巧いのです。
発見する快感の連続、それが本作の魅力の一つです。
残留思念――断片的な情報を繋ぎ合わせて物語を紡げ
本作には至る所に「残留思念」が残されています。
たとえば、ホラー小説やホラーゲームでも「残された手記」という形式で、律儀に悲鳴まで書いてあるようなものに違和感を覚えることはないでしょうか。
本作ではそれらが「残留思念」という形で表現されます。
(「手記」という形式のものも多く残されてはいますが)
よって、口語調でも違和感がなく、いくらでも悲鳴を浴びることができます。
至る所に残された残留思念を辿ることで、王国にはなにか大きな惨劇があったことが窺い知れます。
また、それだけではなく、このようにダンジョンのギミックに苦しむ姿も見られます。
ゲーム的には要するに「攻略のヒント」です。
「残された手記」によってヒントを残す手法はゲームではよく見られるものですが、本作は残留思念という形で多く散りばめらえているため、一人で冒険しているにもかかわらず共に苦しむ仲間がいるかのような錯覚を覚えることすらあります。
阿鼻叫喚の染みつく「カノンの柩」
本作の魅力を紹介するにあたり、『Fanastasis』のテーマパークこと「カノンの柩」というダンジョンを交えましょう。
「カノンの柩」は極めて凶悪なダンジョンです。
「蜘蛛の糸」と呼ばれる移動速度が低下する魔術の罠、火炎を吐き出す装置、徘徊する犬の魔物がプレイヤーを襲います。
ですが、これらはなにもプレイヤーを苦しめるためだけのギミックではありません。
過去にも同様に苦しんでいた囚人がいたのです。
囚人たちには「更生のための訓練である」とか、「カノンの正規兵も同様の訓練を受けている」と説明されています。
ですが、あまりの過酷さに「そんなはずはない」と彼らは確信しています。
いったいなぜこれほど過酷な訓練が囚人たちに施されていたのか。
プレイヤーはその謎を知るためにも奥へ奥へと進むことになります。
ぶっちゃけていえば、フレーバーに交えてダンジョンギミックを説明してくれる「攻略のヒント」でもあります。
ですが、そのフレーバーとギミックが絶妙に噛み合っているのです。
本作ではどのダンジョンでも執拗なまでにフレーバーの補強が整備されています。
「カノンの柩」はその一例です。
あるダンジョンでは「侵略者に対抗するための罠」として侵略者が苦戦を強いられる残留思念があり、
または過去の言い伝えに従い、「蘇る死体を閉じ込めるため」とあえて複雑な構造に設計された地下墓地などがあります。
記憶――明らかになっていく物語
プレイをはじめてからおそらく数時間ほどは、残留思念の断片的な情報を拾い集め物語の全貌を薄らぼんやりと想像しながら冒険を続けることになります。
「巡礼の旅」と呼ばれる過酷な道のりは、過去にも巡礼者たちが教会を求めて辿った道です。
プレイヤーもまたその道を辿り、ついに「マージ大聖堂」へと辿り着きます。
そしてその最奥――なにやら怪しい雰囲気です。
そこでついに、過去の記憶が鮮明に映し出されます。
カノン王国でなにが起きたのか。主人公はいったい何者なのか。
その一端が描き出されるわけです。
集めるべき「記憶のオーブ」は四つ。
これはそのうちの一つです。そしてここまで来たころには、あなたはもう『Fanastasis』の虜となっているでしょう。
ぜひ、すべての記憶を揃え、真実へと辿り着いてみてください。
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