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月刊プレイリストボーイ2024年1月号

【今月のプレイリスト】

1. Suchlike Horses/ブレイク・ミルズ
1月1日の朝、初詣に向かう道中、イヤフォンでブレイク・ミルズの最新アルバムを聴いていた。アンビエントともサイケともつかない浮遊にまかせながら氏神様へ。柏手を打ち、家族や大切な人たちを災いからお守りくださいと祈る。平穏な一年になりますようにと。

2.満月の夕/アン・サリー&
No Nukes Jazz Orchestra

その時間は映画を観たあと、梅田から帰るところだった。御堂筋線が徐行運転をしていて?ってなってたところへ知人からのLINEで地震を知った。帰宅後、テレビ等であらましの状況を知ったところへあの航空機衝突事故のニュース。何という正月か。『満月の夕』はヒート・ウェーブ版の歌詞の方がよりジャーナリスティックな温度感で情景が迫る「それでもひとは汗を流し…」1日も早く安寧が訪れますように。

3.青い魚/金延幸子
映画『PERFECT DAYS』の主人公ヒラヤマが車の中で聴いていた曲のなかで、唯一の邦楽曲がこれ。どことなくエイプリル・フールの『暗い日曜日』っぽいなぁと思ったら細野さんプロデュース。吉田美奈子とかカルメンマキから情念を抜いた感じ。

4. Syntynyt suruun ja puettu pettymyksin/
マウステテュトット

映画『枯れ葉』で、アル中低賃金労働者のホラッパが行くBARで、シンセ&ギターの女性デュオが生演奏してた曲。カウリスマキ映画の登場人物らしく、無表情でドライなブロンド美女が歌う「私のコーヒーカップにはカビが生えている」という歌は、アングラ&シュールを表現しているのだろうが、いやコーヒーカップくらい洗えや。

5.紅/リトル・グリー・モンスター
映画『カラオケ行こ!』のエンドロールで流れるX Japanのcover。劇中、綾野剛扮するヤクザが何故この曲に執拗にこだわるのかは謎だが、クライマックスでの聡実君の激唱には泣きながら溜飲を下げるしかない。からの〜この大団円。合唱コーラスとの見事な融合は、ウェスト・サイド・ストーリーばりにヒップでクレバー。

6.Governance/Neil Cowley Trio
リズムが概ねジャストでスウィングしないのに、畝りはJAZZのそれである。旋律もわかりよいけど決してありきたりではない。クドクド引っ張らず、小気味良いよねーくらいにとどめる潔さに好感が持てる。Governanceという言葉は、スッカリ政治家の道徳ってどうよ!って言葉になってしまったな。

7.After The Garden/ニール・ヤング
イラク戦争下の2006年、反戦メッセージとともに時のジョージ・W・ブッシュ政権を糾弾したアルバム『Living With War』のオープニング曲。いつにも増して重く響く轟音ギターはこれだけでメッセージ性を感じる。当時、若い歌い手が声をあげないことをニールは嘆いていたようだが、今のアメリカの若者はイスラエルに対して沈黙するミュージシャンや著名人を、容赦なく糾弾する。

8. St. Stephen(Live)/グレイトフル・デッド
イントロの一音だけで観客が沸くところで、こちらのテンションも即アガる。あとはガルシアの、ネットリとスワンピーなサイケブルースをとくと。

9.地を這う者に翼はいらぬ/キリンジ
何となく、デッドの後に続けて聴くのにシックリ来た。キリンジにはあまりないタイプの曲。佐野元春がホストをつとめるNHKの番組で、高樹さんがこの歌詞について語っていたことを思い出す。猛禽類に戦慄く地を這うトカゲは、社会的弱者のメタファーで、強者の支配から逃れる意味を込めた…。確かそんなようなことを言っていた。最近、そういう歌に惹かれる。

10.War News Blues/ライトニン・ホプキンス
読んで字の如く、戦争のニュースにゲンナリする歌。最後は爆撃音から逃れるために穴を掘るという。ブーストしそうでしないギターの倦怠グルーヴが、たまらなくBlues。

11.The Harder They Come/ジミー・クリフ
映画『The Harder They Come』の主人公・アイヴァンはどんなに虐げられても、自分の権利を疑わない。「So as sure as the sun will shineI'm gonna get my share now, what's mine」太陽が輝くかぎり、オレはオレの〈取り分〉をいただく。そうあるべきだ。自己肯定感があるとかないとか、どうでもいいし、バカげてる。いつも心にthe harder they comeじゃボケ!。


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