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大規模試験における過去問の再出題

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

今も出勤途中でオフィスに向かっているところです。今日はJLPTが今月あって、それで「過去の問題が使い回しされている」という指摘を結構いろいろなところで見るので、それについてお話ししてみたいと思います。

ただし、最初におことわりしておきたいことがあります。僕は国際交流基金で今給料をいただいてますが、JLPTの開発には一切関わっていません。それから国際交流基金の内部では試験センター以外の人には内部情報は一切共有されていません。僕にもJLPTの内部情報は一切共有されていません。ですから僕はJLPTについて何を言ってもそれは守秘義務に反することにはならないわけです。それと、やっぱり試験センターの人が大規模テストの一般的なことについて話したとしても「それって守秘義務じゃないの?」と言われるリスクがあるので、ちょっと話せないと思うんです。それで僕が一般的な大規模テストについて話をしてみたいと思います。これは本当にあくまでも一般的な大規模試験の話なのであって、JLPTのことではありません。

まず「過去の問題が出題されていた」ということは、これも僕は実際に過去の問題が出題されていたのかどうかは知りません。ですが Twitter など多くの場所でそういう証言は見ました。それが本当かどうかもわからないし誤解かもしれませんが、そういう書き込み投稿がソーシャルメディアにたくさんあるのは皆さんご承知のとおりです。

ただ、これもあくまでも一般的な大規模試験の話なんですが、TOEICなどでも過去の問題は出題されています。これはどうしてかと言うと、その時の試験の難しさと過去の試験の難しさが厳密な意味でいつも必ず同じになることがないからです。厳密な意味ではいつも必ず難しさ(平均点など)は違うはずなんです。それで素点がどのくらい取れたかとか素点だけで合格か不合格を決めてしまうと、それは大規模試験として適正ではないわけで、問題の難しさを比べて、それで今までと同じレベルで合否の違いがでるように調整する必要があるわけです。そのために過去の問題を出しているということは TOEIC では言われています。

「TOEICからの回答としては、「書き込み禁止」はカンニングや試験問題漏洩防止のため、「持ち出し禁止」については、スコアの同一化(イクエイティング)という統計処理を行っているためだそうです。具体的に説明すると、TOEICでは、過去に実施した、ごく一部の問題を新しい問題に織り込むことで、新旧テストを比較し、難易度によってスコアがぶれないように調整しているということです。
この方法でスコアの同一化(イクエイティング)を図っています。
丸ごと同じ問題を使うことはなくても、その時々で過去に出題された問題を使うことがあるので、過去問として公にするわけにはいかないというわけです。」

https://english-innovations.com/3501/

でもそうだとしたら、過去の問題を見た人は得じゃないか、ずるいじゃないかという声があるかもしれません。と言うか、そういうふうに誤解している人もいます。

でもこれも実はそれが必ず採点されているか僕は分かりません。国際交流基金が開発しているJLPTが実際に全ての出題を採点しているのかどうかも公表されていないので、僕も知らないんですが、でも一般的な話としては、こうした大規模試験では採点されない出題というのはよくあります。それは非常によくあることで、例えばこのあいだ見たのは会計の公的試験で、ちょっと名前は忘れちゃいましたがそこの資料を見たら出題されている問題の何と4分の1の部分が採点されていないという統計がありました。ちゃんと試験を実施している団体が公的にその数値を公表しているものです。

追記
「【USCPA】試験概要と知っておくべき出題の仕組み(パニックを回避!)」
https://anneshikaku.com/uscpa-questions/#toc3
(試験の中の一つのカテゴリーで25%が過去に出題されていたということで、試験全体では17%が過去に出題されていた問題でした)

ですので、JLPTに過去の問題が出題されていて、一部の人がその問題を見たことがあって答えを知っているから有利かもしれないとか、少なくとも心理的に有利だとかいう批判に対しては、「それが必ずしも採点されているとは限らない」ということだったらお答えできるんじゃないかと思います。

このように普通の養成講座などで習う評価の話と大規模試験の話はもう本当に全く違う世界なので、JLPT対策の指導などをされる方はこうした一般的な大規模試験の話は一通り勉強しておくといいんじゃないかと思います。

そうでないとやっぱりちょっとした誤解がもとでお互いにストレスが溜まっちゃったりしますよね。そうすると学生さんも可哀想だし、指導するのも大変だと思います。それから文句をつけられる試験を実施してる側の人もですね。だって守秘義務があって反論できないわけですから。それで、もう一度言いますが、JLPT対策に関わっていらっしゃる人はこういう大規模試験のことなどを勉強されるといいんじゃないかなと思っています。

それでは本日の「むらキャス」はここまでとなります。本日もご清聴くださいましてありがとうございました。

そして冒険は続く。


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