我が師・さくらいりょうこさん
なかなか信じてもらえないのですが、私は“女性恐怖症”です。
女性とのコミュニケーションを取るのが苦手で、特に初対面の方だと緊張して頭の中が真っ白になってしまいます。
月にいちどのレッスンでさくらいりょうこ先生にお会いすると、いまでもドキドキ、アタフタしている自分がいるのです。レッスン中、先生の顔を正視できず、上下左右に視線が泳いでいるから不審がられているかも。
オカリナ奏者として第一線で活躍してこられただけあって、オーラがあり、立ち振る舞いが若々しく、発する言葉にも迫力があります。
レッスンの特徴は「笑顔でスパルタ」。弟子を教育するのではないから、基本、レッスンは和やかな雰囲気で行なわれます。オカリナ上達のためのコツや知識などを教えてくださるのですが、右の耳から左の耳へ素通り。
「あづまさん、指の位置が違いますよ」
と指摘されただけでパニックになってしまい、さらに間違いを重ねたりということも。コロナ禍の昨年、レッスンの参加者が私ひとりという日がありました。初めての個人レッスン。
恐怖…じゃない至福の90分でしたが、冷や汗が止まらなかったです。
パワーオカリナって何?
そんな女性恐怖症なのに数あるオカリナ教室の中から、なぜ、リーナ★リーナを選んだのか? 決め手は以下の3つ。
①講師が美人(これ言わないと:汗)
②料金設定がリーズナブルでカリキュラムが柔軟(日時・場所の変更可)
③歩いて行ける近さ(徒歩約10分)
ただ、当時を振り返ると、youtube でいろんな方々の演奏動画を検索するなかで、さくらい先生の演奏は他の人と「なんか違うな」と感じていました。どこが、どう違うのか、そのときはわからなかったのですが。
レッスンを受けるようになって、徐々にわかってきました。
実は、さくらい先生は2018年にクラウドファンディングでアルバム『シルクロード』を制作されているのですが、ここで「オカリナの新ジャンルを創造する」と高らかに宣言されています。
“パワーオカリナ”
と命名された全10曲は、あるときはパワフルに、あるときは切なく、あるときはジャズっぽく、とそれまでのオカリナのイメージを覆すものでした。
オカリナというと、素朴で温かな音、癒やされる音──が世評として定着していますが、それだけではないということです。
素人がいうのもおこがましいのですが、タンギングや息の強弱など奏法に工夫がされており、一つひとつの音に表情があるのです。
ひょっとすると、正統派のオカリナ奏者からは批判があるかもしれません。でも、さくらい先生は“あえてしている”のです。
私にしか出せない音がある
オカリナの前に付けた「パワー」とは、「力強さ」というより「私にしか出せない音」であって、「誰にでも吹けることは、私が吹かなくてもいい。極めるのは『私の音』」という覚悟の表明でした。
「パワーオカリナとは心を音に込める演奏、魂を音に込める演奏である」
聞きようによっては大言壮語に思えますが、こんなことを語るオカリナ奏者は、私の知るかぎりいません。
壮絶な半生を抜きにしてこのユニークな発想は生まれなかったでしょう。
フルート奏者の道をめざしていたさくらい先生は、難病で挫折を味わい、絶望のどん底から奇跡的な復活を遂げたのですが、詳しい経緯については以下の記事を読めばわかります。
私はこの記事を読んで初めてクローン病のことを知りました。物心がついてから病気らしい病気をしたことがない私には想像できません。
それはともかく、さくらい先生は自身の体験を通じて「生きること」を伝える講演活動を始め、47都道府県すべてをまわり、講演をまとめた著書(『あしたを生きることば』)もあります。
つまり、オカリナ奏者とともにもう一つ講演家の顔も持っているのです。
最初はクローン病のことを知ってほしいという活動が、いつしか「生きる幸せ」や「受け継いできたいのち」「自分の中に眠る才能」「夢は生きるエネルギーである」と語り始めた。
運というのは“夢を描く人”のところにやってくるのですね。
全国で「言葉」で伝えてきた「生きる力」を「音」で伝えることはできないか──と、さくらい先生が思うのは必然といえるかもしれません。
さくらい先生の歩みをみて思い出す言葉があります。
宿命に生まれ、運命に挑み、使命に燃える
故・小渕恵三元首相が色紙によく書いた言葉だそうですが、さくらい先生にぴったりではないでしょうか。
最後の「使命」は、「生きる力がからだの中からわき出てくる」ような、いままで聴いたことのないオカリナの世界を表現することになります。
彼女よりうまい演奏をする人はいるでしょう。彼女より多くの生徒やファンを持つ人気の演奏家はいるでしょう。しかし、彼女ほど「魂に刺さる音」を奏でるオカリナ奏者ははいません。
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