パワフルでダンディな“声量おばけ”
北海道へ先月出張したおり、北見市周辺の地図を見ていて湖の多いことに気づきました。阿寒湖、摩周湖、屈斜路湖、網走湖、知床五湖……点在する湖のなかに「サロマ湖」を見つけたとき、苦い記憶がフラッシュバック。
サッカー・ワールドカップの日韓大会が開催された翌年(2003)4 月、私はABC 放送の「パネルクイズ・アタック25」に出場して優勝しました。
ただ、優勝者に与えられる最後の映像クイズで誤答し、ヨーロッパ行きの旅行券を獲得できませんでした。その映像クイズのお題が「サロマ湖」。
北海道の公式観光サイト「HOKKAIDO LOVE!」によれば、サロマ湖は以下のように紹介されています。
サロマ湖は美しい夕日も有名で、四季を通じて多くの人々で賑わいます。
昭和歌謡の名曲「霧の摩周湖」
ところで、北海道全域の湖沼は54もあります。さすがは北海道、デッカイドー(笑)です。旅行サイト「じゃらん」による人気ランキング・トップ10は次のとおり。
1)摩周湖
2)洞爺湖
3)阿寒湖
4)青い池
5)支笏湖
6)ウトナイ湖
7)濤沸湖
8)屈斜路湖
9)然別湖
10)サロマ湖
有名な湖も初めて知る湖もあって、興味をそそられます。広く知られているという点では摩周湖の1位は当然かも。
実は、前述の映像クイズでサロマ湖の名前が全然思い浮かばなくて、半ばやけくそに答えたのが摩周湖でした。
北見市を含む北海道の東部、阿寒国立公園にある摩周湖は、ロシアのバイカル湖に次ぐ、世界で2番目に透明度が高い湖として有名です。私が摩周湖の名前を覚えたのも、中学校の社会科・地理の教科書だったと思います。
当時、昭和歌謡の名曲「霧の摩周湖」(1966年)が発売され大ヒットしていたので、実際のところは歌で摩周湖の名前を覚えたのかも知れません。
作詞・水島哲、作曲・平尾昌晃。歌・布施明。布施さんは1947年、東京・三鷹市の生まれ。高校在学中に渡辺プロダクションにスカウトされ、歌手デビュー。デビューの翌年に出したのが「霧の摩周湖」です。
誕生の秘話について、神戸のタウン誌『KOBECCO』の2022年10月号に布施さんのインタビューが載っています。当時、平尾昌晃さんの住んでいた神奈川県茅ヶ崎へ行き、新曲について相談したさい、
パワフルで伸びやかな歌声、オシャレでダンディな容姿──私の「記憶のなかの布施明」を要約すると、こうなります。圧倒的な歌唱力とスケール感が「霧の摩周湖」でも存分に発揮されていました。
(関稔さんのオカリナ。昭和歌謡といえばここ、です)
霧にだかれて しずかに眠る
星も見えない 湖にひとり
ちぎれた愛の 思い出さえも
映さぬ水に あふれる涙
霧にあなたの 名前を呼べば
こだませつない 摩周湖の夜
あなたかいれば 楽しいはずの
旅路の空も 泣いてる霧に
いつかあなたが 話してくれた
北のさいはて 摩周湖の夜♪
平尾さんの音楽葬で「霧の摩周湖」を歌う
ちなみに、2017年に亡くなった平尾さんの音楽葬で、布施さんはこの「霧の摩周湖」を歌っています。
デビューから57年。いまも第一線のステージに立ち続けている布施さんは、全国ツアーの真っ最中です。『KOBECCO』のインタビューでも、デビュー60周年の2025年まで歌い続けたい意向を示しています。
でも待てよ。シャルル・アズナヴール(フランスを代表する歌手)は94歳まで、トニー・ベネット(米国の人気歌手)は96歳まで現役でしたからね。まだまだ歌えるかな…
今回、改めてyoutube にアップされている布施さんの歌唱動画を検索していると、“声量おばけ”という異名が飛び交っていました。
現在、75歳ですから、言い得て妙かもしれません。数ある動画のなかで私がすごいと思ったのは「マイウェイ」でした。
1969年にフランク・シナトラが歌い世界中で大ヒットした名曲ですが、「ようやく、この歌を歌うにふさわしい年齢になってきたのかなあと、今、コンサートなどで歌っていて、そう実感しています」(『KOBECCO』)。
人生の幾山河を越え、人間的な成熟が歌に加味され、聴くものの心を魅了する一曲です。
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