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【詩】鳥とイチジクと黄色い搭


うだる空気。そよぐ熱風。伸びた影。

爛れたイチジクを頬張り、
極楽鳥の夢を見る。

揺らめくイエローの搭。
陽炎メランコリック。

ああ、私は私ではなく。
あの搭を飛び回る鳥だったかもしれない。

焼け焦げた肌に、一匹の蠅がとまる。
影はどんどん黒く伸びて、やがて逃げる。

逃げた影が、搭に集まり息をひそめる。
私はもはや私でなくなる。

生まれる前に戻ってしまおう。

まだやわらかい、羽毛にくるまれて。






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