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【LAB NAVI vol.1】今話題の「生成AI」とは?その技術の発展とクリエイティブ環境について

1)LAB NAVIでデジタル業界のいろはを学ぼう

今回から始まるLAB NAVI。「他のコンテンツと何が違うの?」と思われる方も多いことでしょう。
月に1回公開予定のこのコンテンツでは、未来デジタルラボで取り上げる話題やキーワード、業界の基本知識などをわかりやすく解説していきます。

今回は、昨今注目を集めている「AI技術」がテーマ
昨年の公開から話題沸騰中の「Chat GPT」をはじめとする「AI技術」の基本知識や、活用のされ方、アドビが手がけるクリエイターのための「AI技術」について紹介していきます。ぜひ最後までお付き合いください。

2)決して特別ではない、仕事や生活の中に取り入れられる「AI技術 」

「AI技術」が再び注目を浴び始めたきっかけとして、昨年11月に公開された自然言語処理AI「Chat GPT」が挙げられます。
OpenAI社によって公開された生成AI「Chat GPT」は、2021年9月までに公になっている大量のテキストデータから学習し、問いかけた質問や知りたいファクトについて情報提供をしてくれる機械学習技術の一つ。
集積された膨大なデータを元に、ゼロから必要なコンテンツを生み出す創造的活動ができるため、文章の要約、翻訳、データ抽出、基本情報の洗い出しやプログラム生成など、その活用方法は幅広く、誰もが業務や学習に役立てることが可能です。
 
また、自然な言語で応答してくれるので生活の中でアイデアが欲しい時にも使いやすいというメリットも。
例えば、冷蔵庫にあるもので料理を作りたいときには、使いたい材料や食べたい料理の種類(和風なのか洋風なのか)を打ち込むことで、具体的な作り方まで出てくるため、何を作るか決めていなくてもレシピ検索が可能!『今日は何を作ろうか・・・』と困ったら「Chat GPT」に聞くと、解決してくれるはずです。
 
簡単な例を出しましたが、「Chat GPT」は、仕事や学びだけでなく、日常生活にまで取り入れることができる「AI技術」。使い方や、問いかけ方の工夫を凝らせば、自分が知りたい情報や知識を手に入れることができ、生活と密着させることもできるのです。

3)今さらだけど、そもそもAIって何?

いまの「AI技術」がすごいのは分かったけれど、『そもそもAIって何なのか、と問われると答えに困る・・・』という方はいませんか?
ここで「AIとは何か」をお伝えしたいと思います。
 
AIは、日本語では「人工知能」と訳される、「Artificial Intelligence」の略称。
「人が作った人間のような考え方や動きをするコンピュータ」をAIと呼んでいます。AIの考え方や動きのベースにあるのは統計学で、これまでの学習結果から「何が自分の知識の中で最も確かな答えなのか」を導き出してくれるのです。
 
例えば身近にあるものだと、掃除ロボットやスマートスピーカー、自動運転システムなどに活用されていますが、これらは使われながら、使う側(人)の傾向や様子を理解し、データベースをアップデートしていくので重宝されます。
 
このようにコンピュータがデータを自動で学習し、パターンやルールを発見する技術を「機械学習」と呼び、発見した情報をもとに、特定分野の予測や分析ができるようになっているのです。
具体的にAIが活用されている分野を挙げると、医療現場での画像診断や、製造業での画像認識による不良品の検知、コールセンターでのチャットボット対応などがありますが、今後はもっと様々な場所で形を変えてAIが役立つことが想像できます。これらは問題解決だけにとどまらず、商品設計やデザインなどゼロから何かを生み出す活動へも大きく影響を与えていくと考えられます。
現に「生成AI」がゼロから作るデータは、テキスト、コード、音声、画像、動画など多岐に渡り、これらはクリエイティブ領域でも活用が広がっているのです。

4)クリエイティブ現場におけるAIの在り方

ここで多くのクリエイターをサポートしてきたアドビの「生成AI」活用への見解をご紹介します。

2022年10月にアメリカ・ロサンゼルスで開かれたAdobe MAX 2022の基調講演に登壇したShantanu Narayen(シャンタヌナラヤン)アドビ会長兼CEOは、このようにスピーチしていました。

「人工知能と機械学習は、人間の創意工夫の力を大きく広げていく。AIは副操縦士(CoPilot)としてあらゆるクリエイティブをサポートする」

 つまり、作品を統括して作る役目と責任を負う主役はクリエイター自身であり、クリエイターがより楽に飛べるようにするのがAIの仕事、という考え方を明らかにしました。

また、同じくアドビのデジタルメディア事業部門幹部のDavid Wadhwani(デイビッドワドワーニ)氏はこのようにも述べています。

「AIは人の創造性を拡張するものであって、置き換えるものであってはならない(AI should enhance human creativity, not replace it)」

 具体的にアドビはどのようなAIツールを世の中に送り出し、クリエイターをサポートしているのでしょうか。まずは遡ること7年ほどの、2016年に発表された「Adobe Sensei」をご紹介します。

日本人に馴染みの深い「Sensei」(センセイ)は「Master/Teacher」という意味を持ち、経験や知識に基づく深い洞察力があり、生徒からも学ぶ相互作用を期待できる存在として名付けられました。

画像診断/処理技術の応用を生かし、クリエイターにとって手間のかかる切り抜き作業の自動化精度を高めることや、画像の背景を自然なイメージで切り替えることなどを実現。それにより面倒な処理をAIに任せて、クリエイターが本当に集中すべきことに時間を割けるようにする意図がありました。

▼「Adobe Sensei」の詳細はこちら


また、2023年3月には新たな生成AI「Adobe Firefly」のプライベートベータ版(正式版をリリースする前にユーザーに試用してもらうためのバージョン)を発表

これは「Adobe Sensei」を使ってきた何億人ものケースで機械学習された内容をベースに開発された生成AI(打ち込まれた文字などからコンテンツやアイデアを創出する次世代AI)で、日常言語を使い、思い描いた通りのコンテンツを、これまで以上に簡単かつスピーディにクリエイティブできるように設計されています。

「Adobe Firefly」で生成された画像の例

将来的にはAdobe Creative Cloud、Adobe Document Cloud、Adobe Experience Cloud、Adobe Expressのワークフローに直接搭載され、コンテンツの作成・修正作業にさらなる精度、パワー、スピード、手軽さをもたらすとも発表されました。

先出のデジタルメディア事業部門幹部のDavid Wadhwani(デイビッドワドワーニ)氏はこの発表にあたり

「アドビはFireflyにより、生成AIを搭載した『クリエイティブの源』をユーザーのワークフローに直接導入し、すべてのクリエイターの生産性とクリエイターの表現力を引き出します」と表明。

より気軽に、そして安全に、多くのクリエイターが生成AIを使いながらクリエイティビティを発揮できる機会創出を期待できるきっかけになりそうです。

▼「Adobe Firefly」の詳細はこちら

つい先日、PhotoshopでもFireflyが使えるようになったこと、ご存じですか?

5月23日に、「Adobe Firefly」の生成AI機能をデザインワークフローに直接統合した「ジェネレーティブ塗りつぶし(英語名:Generative Fill)」を発表しています。

この新機能はクリエイティブとデザインワークフローにおけるアドビ初のクリエイティブなは副操縦士(CoPilot)であり、簡単なテキストプロンプトを使い、画像の追加・拡張・削除できます。

「ジェネレーティブ塗りつぶし」機能で編集した画像の例

アドビは日常で使用する言葉や概念を使い、ほんの数秒で手軽にデジタルコンテンツを生成できる「ジェネレーティブ塗りつぶし」は、クリエイティブな表現と生産性を拡大し、クリエイターの創造性への品質向上をサポートしていきます。

▼Photoshopの「ジェネレーティブ塗りつぶし」の詳細はこちら


5)「生成AI」の活用拡大で生じる課題

すでに「AI技術」は多くのクリエイティブの現場で活用されています。そしてまた、進化し続ける画像生成AIはすでに多くのクリエイターが活用していますが、著作権や、取り扱い方法については数々の議論が繰り広げられています。

また、打ち込まれた文字などからコンテンツやアイデアを創出する次世代AIが進化することにより、クリエイターが手がける活動との棲み分けが曖昧になる懸念なども聞かれます。

こちらについても前述したように、アドビは、AIはクリエイティブな副操縦士という位置付けで、クリエイターの創造性をより解放するためのものと考えています。

今後は進化し続けるAI技術との向き合い方や、クリエイティビティに良い作用を生み出すためのAIの活用方法などを議論する機会も多くなりそうです。

6)まとめ

「Adobe Firefly」などをはじめ、効率化だけでなく、創造領域にも活用できるAIが誕生したことで、創作活動における個性の活かし方など、今後向き合うべく課題も増えることでしょう。人とAIが相互で良い作用を生み出しつつ、より良いクリエイティブを創るための方法や、創作活動をとりまく環境への対応など、今後発信していくコンテンツや活動を通して一緒に考えていければと思います。

これからもアドビ未来デジタルラボでは、進化するテクノロジーやデジタルクリエイティブを追っていきますので、ぜひ他の記事もご覧ください。


アドビ未来デジタルラボとは何?そんな風に、気になった方は、こちらをご覧ください。

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