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[雑記]「ミッドサマー」感想

「ミッドサマー」、観ました。今回はネタバレはあんまりないように書いていますが、結局自分にとってどういう映画だったかの話をしているので、情報ゼロで観たい人は読む前に行ってください。迷ってる人は一回読んでみてもいいと思います。





正直言ってすごい期待してた。広告やポスターはなんだかよくわからなさそうだったし、なんだかよくわからなさそうな映画というのは新しい体験に繋がることが多い。去年初見だった「2001年宇宙の旅」とか、情報ゼロで観た「ビューティフル・マインド」とかがそうだ。とくに「ミッドサマー」は、映画力(ぢから)の強そうな人がみんな観に行っていたし、やりたいこととか夢はどんどん口に出した方がいいですよという言説を信じる時期に入っていたのでTwitterで積極的に言ったりもした。仮面ライダーの春映画とか、そういうお祭りっぽいのじゃない限りは基本的に一人で映画に行くので、言わないと忘れそうというのもあった。そのおかげで公開日を忘れずに済んだので、当日の一番遅い時間の上映の席を取ることに成功した。

ほんで見た。ミッドサマーを。


…よくわからなさそうとはいえ、こういうのが観たいなあという期待が自分の中にはあった。「テーマは難解だが映像のグロテスクさの中に美しさがあるやつ」、もしくは「音や衝撃による驚かしがゼロだけど怖くてゾッとするやつ」。あるいはその両方を期待していた。
そして「ミッドサマー」は、そのどちらでもなかった。美しさよりも先にグロテスクさや不気味さがあり、音や衝撃による驚かしはないが何の前触れもなく断面とかを見せてくる。何かあるシーンでは必ず低音かウォーターフォーンが鳴っていて不安を煽ってくるし、シナリオにはどデカい謎解きもどんでん返しも、ない。
不快感。
「お前をこれから全力で嫌な気持ちにさせます」
という、悪意に満ちた2時間18分だった。


ただこの映画が単なる悪意だけで作られていて、ストーリーに何の意味もないかと考えると、きっとそんなことはない……wikipediaの作品ページにわざわざ「ラストシーンの意味」という項目があるくらいには、観た者の心に残るシーンと、それを伴った解釈がある。自分を取り巻く世界の全てがブッ壊れた先にある光景…。
……だけど、あとはそれにどれだけの人数が共感を持てるかという話だ。


……おれが一番気に入らないのは、この映画を「よくわからないけど傑作」という形のまま提供しようとしている広報のやり方だ。実際よくわからないし、ゴアシーンがあるからホラーだと言い切っていいのかもわからない。良くも悪くも「自分の感情が動いたらいい映画」と割り切って観れる人以外には、おれはこの映画を勧めたくならない。観るべきでない人が観てしまうやり方は、おれは称賛できない。

だけど……それこそがアリ・アスター監督が、この映画を作ったときの悪意そのものに準ずる形なのかもしれないとも思う。
だってもう、あの花と陽射しが、叫び声が、こんなにも忘れられない。


2000円弱払って嫌な気持ちになってもいい人と、本当に生きることに傷ついている人だけが観てもいい。100点

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