ビジネスエコシステムの焦点:テレビタレントとインターネットタレントの違いーなぜ迷惑系YouYuberは生まれるのかー

 一般的に迷惑行為は好まれないし、迷惑行為がビジネス(お金を稼ぐ行為)になるとは考えないだろう。しかし、大々的に迷惑行為を行い、お金を稼ぐ職業として注目を浴びているのがYoutubeに動画を投稿する人たち、および他配信サイトでお金を稼ぐ人たちである。当然、インターネット上での活動者すべての人が迷惑行為でお金を稼いでいる、と主張するのではなく、そういった行為でお金を稼ぎやすい仕組みがテレビとは異なり存在している、と主張するものである。
 また、ビジネスエコシステムの基本概念については、以下の記事にて解説している。一読していただけることを強く願う。


メディアとは何か

 まず、メディアとは何か、ということについて知らなければならない。メディアとは、情報の載せた何か、である。この何かの部分が〇〇媒体/〇〇メディアと呼ばれる〇〇に対応している。紙であれば紙媒体、デジタル(インターネット)であればデジタルメディアといった具合である。
 ではテレビと投稿型のメディアでは何が違うのか。それは管理の強さである。テレビは、様々な規制の中でテレビタレントを選択し起用して番組を作る。一方で投稿型のメディアは、好き勝手にサイト上へアップロードすることが許される。近年は多少厳しくなったようだがサービス提供企業の本国に合わせるため、例えばYouTubeの場合、米国と日本では異なるものがあり、様々な懸念があるだろう。
 ただし、根本的に産業構造が異なっていることに留意しなければならない。基本的な概念図は以下の通り。

テレビ局
視聴プラットフォーム(地上波放送)

番組の作成者(テレビ局のエコシステム)

YouTube
視聴プラットフォーム(YouTube)

動画作成者(個人/制作に関する小規模エコシステム)

 テレビ局は放送や番組作成に関して様々な規制の下で活動している。一方で、YouTubeは基本的にYouTubeの規制のみである。


テレビタレントとインターネットタレント

 テレビタレントはテレビへの出演を主たる活動としているタレント、インターネットタレントとはインターネット上メディアでの活動をしているタレント、を指すものとする。
 テレビタレントの場合、地上波放送に関する規制、テレビ局の放送に係る規制、さらに番組構成の方針、こうしたものを突破して起用される。そして、テレビ局が番組を作る理由は、多くの人が見る番組を作ることで広告を出稿するスポンサーを集め収益を上げることだ。そのため、必然的に視聴者に好感度を与えにくいタレントは起用されにくい。結果、テレビへの出演によって収入を得ようとするテレビタレントは迷惑行為などできない、のである。
 一方、インターネットタレントの場合、テレビと比べれば不自然なほど緩い規制の下で概ね自由に動画を作成し、投稿することができる。そして、収益を得る方法も様々である。広告収入、直接課金、成果型報酬広告と様々である。また、メディアに依存することもない。Aサイトで活動できなくなったら、Bサイトで活動すればいい。つまり、迷惑行為によってメディアに出演できなくなるということもない。こうなると単純に人が見そうな過激なネタに走ることになる。結果、ほとんどのモラルある人間に対する差別化戦略として、迷惑行為。を行うのである。モラルの欠如した迷惑行為を行う、ということは、参入障壁や模倣困難性が高いことから競争優位性があることになる。結果、独占性は強いことになる。


与えられた示唆

 取り上げた両者の違いは、属するエコシステムが所属アプローチなのか構造アプローチなのかの違いにある。
 所属アプローチの場合、リーダー企業の意向を常に観察し、リーダー企業の提供したい価値を提供するための価値を発揮することが必要となる。エコシステムの参加はリーダー企業へ依存しているためである。
 構造アプローチの場合、リーダー企業は存在せず、エコシステムの構築者のルールにさえ従っていれば良い。このパターンは参入コストが低い場合が多く、誰でも気軽に参加し、脱退することができる。そのため、リーダー企業によって参加を許される所属アプローチであれば、取引が前提だが、構造アプローチの場合は取引が前提ではない。気軽である分、厳しい価値評価が行われる。
 これから、IoTが一層存在感を増した世界が訪れることが予見されている。ともすれば、エコシステムの乱立も容易に想像できる。基本的にはデジタルはエコシステムを構築しやすい上に、非デジタル領域がデジタル領域と融合するとなれば、なおさらだ。そのため、自身の所属するエコシステムについて、その構造をしっかりと把握していかなければならない。

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