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おもしろきこともなき世をおもしろく~まるでそうであるかのように振舞ってみる~

幕末の頃、長州藩に奇兵隊をつくった高杉晋作は「男子たるもの、困ったという言葉を口にするべきではない」と言っていたそうだ。

若い頃から高杉晋作に憧れている小生ではあるが、今はそれをがまんすることができない。

だから言おう。
困った。ああ困った。おおいに困った。

では何に困っているのかといえば、なにものにも没頭できない自分に困っている。

何か一つのことに夢中になれない。すぐに飽きてしまい、ついつい他のことに目移りしてしまう。結果として満足感を得ることができず、(すがすがしい疲労感さえともなう)達成感を感じることができない。


これは私にとって実に困ることなのだ。


まだ20代の頃、会社の上司に「私の強みは何だと思いますか?」と尋ねたところ、「おまえの強みは集中力だ」と言われたことがある。得心である。一つのことに没頭できる集中力。それが私の強みだったのだ。

集中力が極限まで高まり、感覚が研ぎ澄まされたように感じる状態を「ゾーンに入る」とか、「フロー状態」と呼ぶ。講演やプレゼンをしている時、あるいはカウンセリングをしている時などに、私はよくこの状態に入る。

大勢の聴衆を前に話をしている時はなおさらそれを感じやすい。なぜなら、自分の話を聞いている人たち(その一人ひとりの様子が)、まるで手に取るように見えるようになるからだ。もっと言ってしまうと、彼らの息遣いまでが聞こえてくるような気がしてきて、空間全体を自分がコントールしているかのような錯覚にさえおちいる。それが私にとってのゾーンであり、フロー状態なのだ。


そんな特別な時だけではなく、ふだんの日常でも、私はしばしばこの能力を発揮できたはずなのだ。ゾーンやフローなどいう言葉を持ち出すまでもなく、何か一つのことに没頭したり夢中になれたりすることが。それは、今やっていることに熱狂し、面白がれる能力なのだ。

例えば読書。例えば映画鑑賞や音楽鑑賞。例えばYouTube、例えばビデオゲーム。例えばアドラー心理学の学び。もちろん仕事でも。私はその瞬間瞬間に没頭し、そこに集中することで人生を(それなりに)充実させてきたと思っている。

それが今、何かに没頭することができなくなっているのだ。
これは一言で言ってしまうと、人生が楽しくないということかもしれない。

困った。これは実に困ることなのだ。
そんなことを考えながら、このブログを書いている。ここから抜け出す方法が何かないだろうかと。


ここまで書いてきたところで、一つのアイディアが頭に浮かんできた。アドラー心理学には、『Acting As If~』という行動療法がある。つまり『まるでそうであるかのように』行動することで、自分をその気にさせてしまうという方法だ。

そう、まるで没頭しているかのように、まるで夢中になっているかのように、今やっていることに取り組んでみるのだ。このブログに。そして次の予定であるオンライン会議に。その後私はどこかで食事をするだろう。そして帰りの電車の中では音楽を聴きながら本を読み、AmazonPrimeで映画を観るかもしれない。

その一つひとつのアクションに、まるで没頭しているかのように、まるで夢中になっているかのように振る舞ってみるのだ。やってみよう。行動あるのみだ。

大好きな高杉晋作も、辞世の句で詠っていたではないか。

『おもしろきこともなき世をおもしろく』と。面白がろうではないか。まるでそうであるかのように。






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