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Vol.3「フランス貴族と白人特権(前編)」補足

「さよならパリジェンヌ」のVol.3「フランス貴族と白人特権(前編)」で紹介した、アメリカの歌手ビリー・アイリッシュ。

2001年生まれで現在18歳のビリーは、両親ともに俳優で、兄フィネアスと一緒に幼い頃から作曲や歌の才能を発揮していました。
2016年よりシングル曲やPVのリリースを開始し、2019年のデビュー・アルバム『WHEN WE ALL FALL ASLEEP, WHERE DO WE GO?』が大ヒット。
史上最年少でグラミー賞主要4部門を受賞した、トップスターです。
インスタグラムのフォロワーは6677万人。
10代に絶大な影響力を持つビリーが、コラムで紹介したテキストを掲載したのは2020年5月30日のことでした。
背景として、5月25日にジョージ・フロイド氏が白人警官によって首を膝で押さえつけられ、死亡した事件があります。
この事件をきっかけに、Black Lives Matter運動が全世界で起こったのですが、同時にこの運動への反発も起こります。
それが主に白人によって発せられる「All Lives Matter」という言説です。
コラムでは「命は平等に大事」と訳しましたが、なぜ一見正論に思えるこの言説が問題なのでしょうか? 
ビリーが「子どもにもわかるように」説明したのがこのテキストです。

原文はこちら

(以下訳)

今週ずっと慎重に考えてたんだけど、これをどうやって伝えればいいかな、って。
自分の影響力の大きさとか、できるだけ失礼のないようにとか、なにをどう言うべきかな、ってめっちゃ考えてた…けど、もうクソむかついたから、いま言う。

もしあと白人がひとりでも「命は平等に大事っしょ(All Lives Matter)」って、あとクソ1回でも言ったら、マジでブチ切れる。
マジで、だーーーーーまーーーーーれーーーー!!! 
誰もアンタの命は大事じゃないなんて言ってないし。誰もアンタの人生は辛くないなんて言ってない。
つーか、誰もアンタの話してないから…全部自分の話に持ってくとか、マジでアンタらバカすぎ。アンタのこと話してない。なんでも自分と結びつけるのやめなよ。アンタは困ってないし。アンタに危険が迫ってるわけじゃない。
(これからお子ちゃまでも分かるように説明するねー。アンタらアホどもにも理解できるようにな!)
もしアンタの友達が腕を怪我したら、クラス全員にバンドエイドが配られるまで待つの? 
「みんなの腕も平等に大事だから」って? 
違うよね? 
友達をまず助けるでしょ? 
彼らは痛がっているし、彼らは困ってる。なぜなら血を流しているんだから! 
もし誰かの家が火事になって、家の中に閉じ込められている人がいたら、アンタは消防署にご近所の家をまず確認させんの? 
「みんなの家も平等に大事だから」? 
違うだろ! 
そいつら別に困ってないっつーの。
気づいてないかもしんないけど、アンタには特権があるんだよ。
この社会では、白人ってだけで特権なんだよ。
アンタは貧乏かもしれないし、苦しんでいるかもしれないけど…それでもアンタの白い肌は思ってる以上に特権だから。
で、それはアンタが他の人より優れてるってことじゃないから。
ただ、アンタは「殺されるかも」と心配することなく生きていられる。
なぜなら白人だから! 
アンタには特権がある! 
「命が平等に大切」なら、なんで黒人は「黒人だから」という理由で殺されるわけ? 
なんで移民たちはこの国から追い出されるの? 
なんで白人には、他の人種には与えられないチャンスが与えられると思う? 
なんでロックダウンに抗議する白人は武装していても、警察に「ステイホームしてくださいねー」と言われるだけなの? 
黒人が、無実の罪で殺された人たちのために抗議活動をしたら暴漢呼ばわりされるのに? 
ねえ、なんで???? 
白人の、クソ、特権。
白人特権は、ヒスパニックの人たちも侵害している? 
ネイティブアメリカンたちは? 
アジア系の人たちは? 
そうだよ、もちろんクソ侵害してる。100000000000000%。
だけど、まずはいますぐ、この瞬間にも…何百年にも渡る黒人への抑圧を認めなきゃいけない。
「Black Lives Matter」というスローガンは、他の命は大事じゃない、という意味じゃない。
このスローガンが言いたいのは、この社会が間違いなく、黒人の命をクソみたいに軽視してきたってことなんだよ! 
黒人の命は大事なんだよ! 
黒人の、命は、めっちゃ、大事なの。
黒人の命は大事。
黒人の命は大事。
黒人の命は大事。
はい、もっかい。

#ジョージ・フロイドに正義を  

(訳ここまで)

Aに対する差別について語るとき、「Bだって差別されている」「(Aを差別している側の)Cにも事情がある」「みんなそれぞれ大変なんだよ」という言説が必ず出てきますが、「いま」差別で苦しんでいるのはAなので、まずはAについて語りましょう。BやCやみんなの問題とは分けましょう、というのがビリーの主張です。なぜなら、BやCやみんなの問題を持ち出すことは、Aの問題を解決することにはならないからです。

では、どうしたらAの問題は解決できるのでしょうか? ということについて、もう少しコラムで考察してゆきたいと思います。

引き続き「さよならパリジェンヌ」をよろしくお願いします!

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