メモ-論文(海外)ADHDにおける作業記憶訓練のRCT:長期的な近接転移効果
"RCT of Working Memory Training in ADHD: Long-Term Near-Transfer Effects"
https://pdfs.semanticscholar.org/6152/1eaabe1230a7628524b00de8e92de37a2d26.pdf
著者
Kjell Tore Hovik
Brit-Kari Saunes
Anne Kristine Aarlien
Jens Egeland
出版年
2013年
出版誌
PLOS ONE
DOI
研究の背景と目的
背景
ADHDの子供たちは作業記憶(Working Memory: WM)の機能が低下しており、これが学業成績や適応行動に悪影響を与えています。コンピュータを用いた作業記憶訓練が、ADHDの子供たちにとって有効な介入方法となり得るかどうかを検証することが求められています。
目的
この研究の目的は、コンピュータベースの作業記憶訓練がADHDの子供たちの標準作業記憶タスクにおいて、長期的な近接転移効果をもたらすかどうかを評価することです。
研究方法
参加者
対象: 67名のADHD診断を受けた10〜12歳の子供
場所: ノルウェーのVestfoldおよびTelemark郡
診断基準: ICD-10のF90.0多動性障害(DSM-IVのADHD併存型に相当)
訓練プログラム
訓練グループ: 学校で25日間の訓練プログラムに参加
制御グループ: 通常の治療を受ける
プログラム内容: 13種類のPCベースのエクササイズ(CogMed)を実施。これには視覚的および聴覚的な作業記憶タスクが含まれます。
評価方法
作業記憶タスク: 視覚、聴覚、および操作作業記憶を測定する6つのタスク
評価タイミング: 訓練前、訓練直後、および8ヶ月後
統計分析: 主成分分析(PCA)を用いて6つの測定値を統合し、視覚的、聴覚的、操作的作業記憶の複合スコアを作成
結果
訓練効果の概要
視覚的作業記憶: 訓練グループは、視覚的作業記憶タスクで有意に高いパフォーマンスを示しました。訓練直後および8ヶ月後のフォローアップで効果が持続。
聴覚的作業記憶: 聴覚的作業記憶タスクでも訓練グループのパフォーマンスが向上しましたが、視覚的作業記憶ほどの改善は見られませんでした。
操作的作業記憶: 操作的作業記憶でも訓練グループが有意な改善を示しました。これは、単純な記憶容量の増加によるものではなく、実行機能の向上を示唆しています。
長期的な効果
持続性: 訓練によるパフォーマンスの向上は8ヶ月後のフォローアップでも持続。特に視覚的作業記憶と操作的作業記憶において顕著な効果が確認されました。
総合的な改善: 訓練グループは、すべての作業記憶複合スコアにおいて制御グループよりも有意に高い改善を示しました。
結論と示唆
訓練の効果と持続性
効果: コンピュータベースの作業記憶訓練は、ADHDの子供たちの作業記憶機能を有意に改善することが示されました。この改善は視覚的作業記憶と操作的作業記憶において特に顕著でした。
持続性: 訓練の効果は短期的なものではなく、8ヶ月後のフォローアップでも持続していることが確認されました。
臨床的意義
非薬物療法: この研究は、作業記憶訓練がADHDの非薬物療法として有望であることを示唆しています。特に実行機能の改善に有効であり、日常生活での自己調整能力の向上が期待されます。
将来の研究
さらなる検証: ランダム化比較試験(RCT)を実施し、より大規模なサンプルを用いた研究が推奨されます。また、fMRIなどの脳画像技術を用いて、作業記憶訓練の神経生物学的メカニズムを解明することが重要です。
参考文献
Hovik KT, Saunes B-K, Aarlien AK, Egeland J (2013). RCT of Working Memory Training in ADHD: Long-Term Near-Transfer Effects. PLOS ONE 8(12): e80561. DOI: 10.1371/journal.pone.0080561
具体的な訓練内容
コンピュータベースの作業記憶訓練(CogMed)
訓練プログラムの概要:
プログラム名: CogMed
期間: 25日間
場所: 学校
形式: 個別訓練
訓練の内容
参加者は、次のような13種類のPCベースのエクササイズを実施しました。これらのエクササイズは視覚的および聴覚的な作業記憶タスクを含んでいます。
視覚的作業記憶タスク
例1: 短時間表示された一連の図形や色を記憶し、順番に再現するタスク。
例2: 特定のパターンや配置を記憶し、数秒後に再現するタスク。
目的: 視覚情報を一時的に保持し、必要なときに正確に取り出す能力を強化。
聴覚的作業記憶タスク
例1: 音声で提示された数字や単語を記憶し、指定された順序で再現するタスク。
例2: 一連の音を記憶し、それを逆順で再現するタスク。
目的: 聴覚情報を一時的に保持し、必要なときに正確に取り出す能力を強化。
操作的作業記憶タスク
例1: 数字や図形を記憶し、それに特定の操作(例えば、+1や-1)を加えて再現するタスク。
例2: 記憶した一連の情報を、与えられたルールに従って並べ替えるタスク。
目的: 記憶情報に対して即座に操作を行い、変換する能力を強化。
訓練の流れ
初期評価: 訓練開始前に、全参加者の作業記憶能力を測定。
訓練期間中: 毎日のエクササイズは個別に実施。訓練プログラムは、各参加者のパフォーマンスに応じて調整されるため、個々の進捗に合わせたカスタマイズが可能。
中間評価: 訓練終了直後に、再度作業記憶能力を測定。
フォローアップ評価: 訓練終了から8ヶ月後に再度作業記憶能力を測定し、長期的な効果を評価。
具体的なタスクの例
スペースリコール(Space Recall)
内容: 画面上にランダムに現れる一連の星の位置を記憶し、その後の画面で同じ位置に星をクリックして再現する。
目的: 視覚的空間記憶を強化。
シークエンスリコール(Sequence Recall)
内容: 画面上に一連の数字が一定の順序で表示される。参加者はその順序を記憶し、表示された順にクリックして再現する。
目的: 順序記憶と視覚的注意を強化。
オーディトリーリコール(Auditory Recall)
内容: 音声で数字や単語が提示され、その順序を記憶し、提示された順序で再現する。
目的: 聴覚的作業記憶を強化。
訓練の効果
短期効果: 訓練直後の評価で、視覚的および操作的作業記憶の有意な改善が確認されました。
長期効果: 8ヶ月後のフォローアップ評価でも、視覚的および操作的作業記憶の改善が持続していることが確認されました。
まとめ
この研究は、コンピュータベースの作業記憶訓練がADHDの子供たちに対して有意な改善効果をもたらすことを示しています。特に、視覚的および操作的作業記憶の強化に寄与し、その効果は長期的にも持続することが確認されました。
研究結果と結論
タイトル
英語: "RCT of Working Memory Training in ADHD: Long-Term Near-Transfer Effects"
日本語: 「ADHDにおける作業記憶訓練のRCT:長期的な近接転移効果」
訓練の効果
全体的な効果: コンピュータベースの作業記憶訓練は、ADHDの子供たちの作業記憶機能を有意に改善しました。特に、視覚的作業記憶と操作的作業記憶において顕著な改善が見られました。
持続性: 訓練の効果は短期的なものではなく、8ヶ月後のフォローアップでも持続していることが確認されました。これは、訓練の効果が一過性ではないことを示しています。
臨床的意義
非薬物療法の有効性: この研究は、作業記憶訓練がADHDの非薬物療法として有望であることを示唆しています。薬物療法と併用することで、さらなる改善が期待されます。
実行機能の改善: 訓練によって実行機能が向上し、これが学業成績や日常生活での自己調整能力の向上に寄与する可能性があります。
将来の研究の方向性
さらなる検証: ランダム化比較試験(RCT)を実施し、より大規模なサンプルを用いた研究が推奨されます。これにより、訓練の効果をさらに確証することができます。
神経生物学的メカニズムの解明: fMRIなどの脳画像技術を用いて、作業記憶訓練の神経生物学的メカニズムを解明することが重要です。これにより、訓練が脳のどの部分にどのように影響を与えるかを理解することができます。
まとめ
この研究は、ADHDの子供たちに対するコンピュータベースの作業記憶訓練が有効であり、特に視覚的および操作的作業記憶において顕著な改善をもたらすことを示しています。訓練の効果は短期的ではなく、長期的に持続することが確認されました。これにより、ADHDの治療において非薬物療法としての作業記憶訓練の重要性が示されました。
この研究は、ADHDの子供たちに対してコンピュータベースの作業記憶訓練が有効であることを示しています。具体的には、以下のような訓練や活動がADHDの子供たちに役立つとされています。
具体例
コンピュータベースの作業記憶訓練
例: CogMedのようなPCプログラムを使用する。
内容: 視覚的および聴覚的な作業記憶タスクを実施し、記憶力と集中力を向上させる。
効果: 記憶した情報を正確に保持し、必要なときに取り出す能力が向上。特に視覚的作業記憶と操作的作業記憶の改善が顕著。
視覚的記憶タスク
例: 一連の図形や色のパターンを記憶して再現するゲーム。
内容: 短時間表示された図形や色を記憶し、その後の画面で同じ位置やパターンをクリックして再現する。
効果: 視覚情報を短期的に保持し、集中力を高める。
聴覚的記憶タスク
例: 数字や単語を音声で提示し、その順序を記憶して再現するゲーム。
内容: 音声で提示された数字や単語を記憶し、提示された順序で再現する。
効果: 聴覚情報の保持力を強化し、注意力を向上させる。
操作的作業記憶タスク
例: 記憶した数字や図形に対して特定の操作を加えて再現するゲーム。
内容: 数字や図形を記憶し、それに特定の操作(例:+1や-1)を加えて再現する。
効果: 記憶情報に対して即座に操作を行い、変換する能力を強化する。
実際の活動例
記憶パズルゲーム
内容: 子供が短時間で表示された一連の図形や色を記憶し、再現するオンラインゲーム。
効果: 視覚的作業記憶を強化し、集中力と注意力を高める。
数字シークエンスゲーム
内容: 音声で提示された数字を記憶し、提示された順序でクリックするゲーム。
効果: 聴覚的作業記憶を強化し、音声情報の処理能力を向上させる。
操作的記憶ゲーム
内容: 数字を記憶し、その数字に特定のルール(例:+1)を適用して再現するゲーム。
効果: 操作的作業記憶を強化し、記憶操作の柔軟性を向上させる。
結論
この研究は、ADHDの子供たちに対してコンピュータベースの作業記憶訓練が効果的であることを示しています。特に、視覚的および操作的作業記憶の強化に寄与し、これが長期的にも持続することが確認されています。これにより、ADHDの治療において非薬物療法としての作業記憶訓練が有望であることが示されています。
ADHDの子供たちに役立つ具体的なコンピュータゲームとして、以下のような記憶パズルゲームや数字シークエンスゲームが挙げられます。
記憶パズルゲーム
例: Memory Match Games
内容: プレイヤーは一対のカードをひっくり返してマッチングするゲームです。異なるテーマ(動物、食べ物、国旗など)で、視覚的なパターンを記憶して正しいペアを見つけます。
効果: このゲームは視覚的作業記憶を強化し、集中力と注意力を高める効果があります。毎日異なるボードサイズやテーマでプレイすることで、持続的な脳のトレーニングが可能です【96†source】【97†source】。
数字シークエンスゲーム
例: Simon Says
内容: プレイヤーは、光るボタンの順番を記憶し、その順序通りにボタンを押すゲームです。光る順序がランダムに提示され、レベルが上がるごとに複雑になります。
効果: このゲームは操作的作業記憶を強化し、記憶操作の柔軟性を向上させます。短期的な記憶保持と順序の記憶をトレーニングするのに役立ちます【97†source】。
その他の有名なゲーム
Pattern Memory II
内容: パターンを記憶して再現するゲーム。複数のレベルがあり、難易度が徐々に上がります。
効果: 視覚的な記憶力と集中力を高める【95†source】。
Longest Number
内容: 可能な限り長い数字のシーケンスを記憶して再現するゲーム。
効果: 数字の記憶力と短期的な記憶保持を強化する【96†source】。
これらのゲームは、ADHDの子供たちが楽しみながら視覚的および操作的作業記憶を鍛えるのに効果的です。また、定期的にこれらのゲームをプレイすることで、学業成績や日常生活での自己調整能力の向上が期待されます。
感想・視覚的作業記憶が刺激されるような、イメージ記憶訓練的なゲームや
数学の速さやパターンのゲームが脳に良い影響を与えるかもしれないと考えた
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