メモ-論文(日本) 若年成人における遅延割引と先延ばし行動の関係に対する注意欠陥多動性障害傾向の調整効果

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405844023020418#:~:text=Temporal%20discounting%20(TD)%2C%20often,rewards%20relative%20to%20immediate%20rewards.
著者
:

  • Mana Oguchi (早稲田大学 人間科学研究科, 日本学術振興会)

  • Toru Takahashi (早稲田大学 人間科学部)

  • Yusuke Nitta (千葉大学 子ども心の発達研究センター)

  • Hiroaki Kumano (早稲田大学 人間科学部)

研究機関:

  • 早稲田大学 人間科学研究科

  • 千葉大学 子ども心の発達研究センター

  • 日本学術振興会

研究の背景

**ADHD(注意欠陥多動性障害)**は、成人においても注意問題や意思決定の問題を引き起こします。成人のADHD患者は、リスクを避けようとするのではなく、即時の報酬を最大化する傾向があります。**遅延割引(TD: Temporal Discounting)**は、未来の報酬の価値をどれだけ減少させるかを評価する方法であり、ADHDのある人々は未来の報酬の価値を非臨床の人々よりも低く見積もる傾向があります。

研究の目的

この研究の目的は、ADHDの症状が遅延割引と先延ばし行動の関係を強化するかどうかを調査することです。以下の3つの仮説を検証しました:

  1. 仮説1: ADHD症状が高いグループは、報酬および損失条件の両方でより高い遅延割引率を示す。

  2. 仮説2: 両方の条件で、先延ばし行動と高い遅延割引率との間に正の相関が見られる。

  3. 仮説3: ADHD症状は、報酬および損失条件における先延ばし行動と遅延割引率の正の関連を強化する。

研究方法

参加者

  • 対象は、58人の大学生(18歳から29歳)。対象者は全員が過去または現在に頭部外傷、神経疾患、または精神病を患っていないこと、およびこれらの状態に対する薬物を使用していないことが条件でした。

測定方法

  1. ADHD症状:成人用ADHD自己報告尺度(ASRS)を使用。18項目から成り、パートA(6項目)は簡易スクリーニング用、パートB(12項目)は全体的な症状を評価します。

  2. 先延ばし行動:一般的な先延ばし尺度(GPS)を使用。日本語版GPS(J-GPS)は、13項目から成り、5段階リッカート尺度で評価します。

  3. 抑うつ症状:患者健康質問票(PHQ)を使用。9項目から成り、0(全くなし)から3(ほぼ毎日)の4段階で評価します。

  4. 不安症状:状態・特性不安質問票(STAI)を使用。20項目から成り、4段階で評価します。

  5. 強化感受性:行動抑制系(BIS)/行動活性化系(BAS)スケールを使用。

実験課題

  • 反復的な時間選択課題を使用し、報酬および罰の条件で遅延割引率を測定。参加者は、報酬条件で取得金額を最大化し、損失条件で減少金額を最小化するための選択を行いました。

結果

  1. 報酬条件での結果

    • ADHD症状が高いグループは、低いグループと比較して、報酬条件で遅延割引率と先延ばし行動の関連が強化されました。これは、即時報酬を求める動機が先延ばし行動を引き起こしやすくなることを示しています。

    • 高いADHD症状の参加者は、将来の報酬の価値をより小さく見積もり、それが先延ばし行動を増加させる傾向がありました。

  2. 損失条件での結果

    • 損失条件では、ADHD症状と遅延割引率の関連は見られませんでした。これは、未来の損失の価値をあまり低く見積もらないため、先延ばし行動に影響を与えにくいことを示唆しています。

結論と示唆

この研究は、ADHD症状が高い人々が即時報酬を求める動機から先延ばし行動を取りやすいことを明らかにしました。これは、報酬の処理方法がADHD患者の先延ばし行動に強く影響する可能性を示しています。ADHDの成人に対する先延ばし行動の介入には、報酬の取り扱いに特に注意を払う必要があります。例えば、より頻繁に報酬を与えることや、長期的な報酬の価値を事前に明確にすることが効果的かもしれません。

この内容は論文「Moderating effect of attention deficit hyperactivity disorder tendency on the relationship between delay discounting and procrastination in young adulthood」に基づいています【14†source】。


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メモ-短期的な報酬に対してはADHDは効果を発揮するが、長期的な報酬の価値に対しては反応しにくい為。どう対策に繋げられるのかが問題だと考えた。

より頻繁に報酬を与えることや、長期的な報酬の価値を事前に明確にすることが効果的

とあるが、実際にやられているADHDに対しての長期的な報酬の価値に対して行動しやすいパターンをきちんと研究している論文を探したいと考えた。


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