メモ-ADHD研究 海外 ADHDの個人において運動中に注意力が向上する


"Attention Improves During Physical Exercise in Individuals With ADHD"


"ADHDの個人において運動中に注意力が向上する"

著者:
Yuri Rassovsky, Tali Alfassi


https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2018.02747/full

ADHDと運動による集中力の持続に関する研究結果の詳細なまとめ

研究目的

この研究は、身体運動が注意欠如・多動症(ADHD)を持つ個人の注意力に与える影響を調査することを目的としています。特に、運動中に注意力タスクを実行する際の影響を評価しました。従来の研究は主に運動前後の注意力の変化を評価していましたが、本研究では運動中の注意力の変化を直接評価することに焦点を当てました。

参加者

  • 総参加者数: 31名

    • ADHDグループ: 14名(71%女性、平均年齢24.8歳)

    • 対照グループ: 17名(76%女性、平均年齢22.6歳)

  • 診断基準: ADHDグループの参加者は、神経科医または精神科医による公式な診断を受けており、対照グループには精神科または神経科の診断歴がない者を含む。

  • その他の特徴: ADHDグループの参加者の大半(71%)は、リタリン、コンサータ、アデロールなどの刺激薬を処方されていましたが、実験当日は服用を控えるよう指示されました。また、全参加者は実験当日にコーヒーや高ナトリウム飲料の摂取を控えるよう指示されました。

方法

  • テスト: Conners Continuous Auditory Test of Attention (CATA)

  • 実験条件:

    • 座位条件: 座った状態でCATAを実施

    • 運動条件: トレッドミルで時速5kmで歩いている状態でCATAを実施

  • テスト順序: 各条件の順序はカウンターバランスで設定され、各参加者は両方の条件でテストを受けました。

  • 測定項目:

    • Detectability (DPR): 目標と非目標を識別する能力。高いスコアは識別能力の低さを示す。

    • Hit Reaction Time (HRT): 全ターゲット反応の平均反応速度(ミリ秒単位)。

    • Omissions (OMI): ターゲットを見逃した回数の割合。

    • Commissions (COM): 非ターゲットに対する誤った反応の割合。

    • C: 信号検出統計で、個人の反応スタイルを測定する。高いスコアは保守的な反応スタイルを示す。

    • 運動時間

      • 参加者は、トレッドミルで時速5kmで14分間歩きながらCATAを実施しました​

結果

  • 反応時間(HRT):

    • ADHDグループ: 運動中の反応時間が平均25.4ミリ秒短縮。

    • 対照グループ: 運動中の反応時間が平均15.9ミリ秒延長。

  • 見逃しエラー(OMI):

    • ADHDグループ: 運動中の見逃しエラーが1.5%減少。

    • 対照グループ: 運動中の見逃しエラーが0.88%増加。

  • DPRとCOM:

    • 両グループ共に、運動中にDPRが低下し(目標と非目標の識別能力が低下)、誤反応(COM)が増加。

統計的分析

  • 2 × 2 ANOVA(繰り返し測定を含む):

    • DPR: 運動中に両グループで識別能力が低下(p = 0.007)。

    • COM: 運動中に両グループで誤反応が増加(p = 0.001)。

    • HRT: ADHDグループで反応時間が短縮し、対照グループで延長(p = 0.02)。

    • OMI: ADHDグループで見逃しエラーが減少し、対照グループで増加(p = 0.03)。

考察

  • ADHDグループの改善: ADHDグループは運動中に注意力が向上し、反応時間が短縮され、見逃しエラーが減少することが確認されました。これは、ADHDの注意系の仮説的な低活動状態が運動による覚醒によって改善される可能性を示唆しています。

  • 対照グループの結果: 対照グループでは、運動中に反応時間が延長し、見逃しエラーが増加しました。これは、通常の注意系が運動によって過剰に刺激され、二重課題のコストが生じた可能性を示しています。

結論

この研究結果は、ADHDの注意力改善に運動が有益である可能性を示しています。運動プログラムの導入がADHDの症状管理に役立つことが期待され、特に注意力の改善に有効であることが示唆されます。今後の研究では、より大規模なサンプルを用いた検証が必要であり、運動の強度や持続時間、個別の生理学的パラメータ(有酸素フィットネス、心拍数、BMIなど)を考慮する必要があります。

参考文献

この詳細なまとめが、ADHDと運動の関係についての理解を深める一助となることを期待しています。

感想-そこそこ対象の人数が多い。他の論文にもあったが、即効性がADHDに対しては運動があって面白い。面白いのは定型の人はちょっとの運動では別に効果がないってこと。ADHDはちょっとの運動でも効果がある。


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