『マイクロスパイ・アンサンブル』

伊坂幸太郎さんの作品。

失恋した男が暮らす「こっちの世界」と、スパイの少年が暮らす「あっちの世界」。それぞれの世界が微妙な影響を与えていく。

あとがきを読んで、猪苗代湖の音楽フェスで配布された短編だと知った。毎年訪れるファンにとっては、続きが待ち遠しくなるだろう。

登場人物に好感を持った。ふくよかな体型をしている女性は人としての器がとても大きいと感じた。謝り上手の門倉課長が印象に残っている。宝くじに当たってお金を全額寄付するという門倉課長の行動は、自分にはできないと感じた。


印象に残っている文

一人になるとその時のことが思い出され、自己嫌悪に襲われる。軽蔑する人間とは付き合わなければいいが、自分とは疎遠になることはできない。

屋内の場所ならまだしも、浜辺に落ちたものなど見つかるとも思いにくい。無謀な行為を喩えることわざとして、「猪苗代湖でアクセサリーを捜す」なる言葉があってもいいほどだろう。

いつ見ても、謝っている。動物園でいつ見てもパンダは寝ており、いつ見てもハシビロコウは微動だにせず、いつ見ても門倉課長は、ぺこぺこしている。


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