『水底のスピカ』

乾ルカさんの作品。


学校生活での女子の人間関係というのは、難しいと思う。特に転校生でなおかつ人目を引く容姿をしていたらなおさらだ。

自分は高校生のとき、清太のように能天気な性格のクラスメイトだった。自分が気がついていないだけで、クラス内の人間関係の問題はたくさんあったのだと思う。

和奈は更紗や美令に対して劣等感を抱いており、それを読むと心が痛くなった。

和奈の祖母が作っていた匂い袋というものが気になった。人それぞれで匂いが違うというのがいいなと感じた。

美令は毎週木曜日に海まで自転車で通っていて、根性があると感じた。和奈が2回チャレンジしてもたどり着けなかったから、相当な思いがあったのだと思う。


印象に残っている文

噴水を見下ろしながら、少し歩調を緩めた。噴水はまるで敗北者だった。敗れ去って荒野に転がる骸に見えた。

人は自分が期待している何かを他人が得ている状況が気に入らないものだ。

男子の多少の幼さを許容する女子のほとんどが、女子が同じことをすれば冷徹な顔で突き放す。

連れがいる生徒たちは、ことさら楽しそうに振る舞っている。まるで自分には友達がいるのだと周囲に拡声器で触れ回っているみたいだ。学校祭はそんな生徒たちのアピールの場なのだ。

いじめでもいじりでもない笑いは、笑う側と笑われる対象が同じベクトルで笑いを求めているからこそ生まれる。それには笑われる側の強さと圧倒的な好感度が必要なのだ。

「気にはしないけど、普通はクラスに友達というか、つるむ相手がいた方がいいでしょ。学校ってチーム戦仕様だもの。一人きりで戦うのは戦略上不利にできてる」

←確かにそう感じる。

「和奈。人の秘密は借金みたいなものだよ。連帯保証人になる覚悟はある?」夏月は前を向いたままで言った。「ないなら、知る資格もないんだよ」

←この言葉がとても印象に残っている。

「友達以上恋人未満って言葉あるよね。友達から始めようとか。私、この言葉が嫌いなんだ。なんで当たり前に恋人と友達を並べて、しかも当たり前に友達を下にするのかなって思うから。きっとそう言う人の一番は恋人なんだろうな。崖に恋人と友達ぶら下がってたら、迷わず恋人助けるんだろうな。私は恋人は一番にはならないな。恋人と友達だったら、友達を優先したい。私、恋人は裏切れても和奈と更紗だけは裏切れない。本当に大事な友達って、作ろうと思って作れるものじゃない。二人と友達になれなかったら、今ここを歩いていない」

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